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タクシーを潰して、Uberだけにすべきか

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国土交通省の認可により、今年10月からタクシー運賃が乗車前に確定するサービスが始まる。経営コンサルタントの鈴木貴博氏は「タクシー業界にイノベーションが起きたのは、Uber(ウーバー)の影響だろう。国交省はウーバーの上陸に待ったをかけたが、その判断はあながち間違いともいえない」という――。

ウーバーの試験用自動運転車=2016年9月13日、アメリカ・ピッツバーグ(写真=AFP/時事通信フォト)

タクシーの未来は結構よくなるかも

今まで私は、「なぜ日本の行政はウーバーという黒船をもっと歓迎しないのか」という意見を強くもっていました。それが最近になって「ウーバーを規制してきた結果、タクシーの未来は結構よくなるかも」と思い始めています。

ウーバーは2009年にアメリカで設立された配車サービスのベンチャーです。設立の出発点はアメリカのタクシー業界のマイナス面を解消しようというものでした。

マイナス面は主に3つ。運賃が高いこと、台数が少ないこと、そして遠回りをする車両があるなど運賃が不明朗であることです。

そこでウーバーは、タクシーではなく自家用車のドライバーを参加させて、スマホで呼び出してくれたユーザーをピックアップし、乗る前に決めた料金で行きたい場所まで届けるというサービスを開始しました。しかもその料金が通常の場合はタクシーよりも安い。この便利さと安さがウケて、この数年であっという間に全米に広がったのです。

ウーバー出現で車移動の人数が5倍に

私が初めてウーバーを体験したのは2011年ごろです。西海岸の出張の際に打ち合わせを終えてビルから出て「さあ、これからタクシーを呼び出さなきゃ」と思ったそのときに、一緒に行動していた現地スタッフがスマホをタップしながら「あと2分で車が来ます」とウーバーの画面を見せてくれたのです。

すると間もなく黒塗りのバンが近づいてきて6人いた取材スタッフ全員を乗せて次の目的地まで連れて行ってくれました。「これはタクシーよりもずっと便利だな」と、その後のウーバーの発展を直感したものです。

ウーバー出現後、特にアメリカ西海岸での仕事は便利になりました。タクシーだけでなく、レンタカーの利用頻度も減るぐらい、私の移動のスタイルは大きく変わりました。現地での変化はさらに大きかったようです。2016年ごろに西海岸のハイテク企業でのインタビューで聞いた話では、ウーバー出現後にウーバーとタクシーを合わせた利用客数がそれまでの5倍になったそうです。

つまり本当はマイナス要素がなければ車で移動したかったけれど、別の交通手段を我慢して使っていた人がタクシー利用者の5倍もいて、その潜在需要がウーバーの出現で一気に顕在化したわけです。これをベンチャー精神による市場創造と呼ばずして何というのだろう。そんな考え方から当時の私は一気にウーバー信仰を強めてしまったわけです。

Airbnbの浸透で一日一軒ホテルが廃業

2013年、そのウーバーが日本に上陸するのですが、国土交通省はアメリカ同様のサービス展開に待ったをかけました。ウーバージャパンの試行サービスのうち、自家用車による運送行為について「白タク行為に当たる」と中止を求めました。

今から考えればとても正当な行政指導にも思えます。しかし、このときの国土交通省のウーバーへの対応は、その後のAirbnb(エアビーアンドビー)への対応と比較するとかなり強腰だったと思います。当時のAirbnbを使った民泊は、ホテルや旅館に義務付けられていたさまざまなルールを無視したサービスで、法律を厳格に適用すれば即座にアウトと言えるものでした。その民泊が事実上容認されて、ウーバーのサービスは禁止されるというのが、私にはちぐはぐな判断に見えたわけです。

ウーバーがアメリカのように浸透すれば、日本のタクシー業界は大打撃を受けます。民泊も同様で、たとえばパリでは民泊が広がったことで毎日一軒のペースでホテルが廃業しているそうです。経営学者などは、「ウーバーなどのライドシェアや民泊といった新しいサービスの誕生で経済全体が発展する。これこそが資本主義社会におけるイノベーションの効果である」と主張しています。これは私も同じ意見です。

簡単に言えば、日本の行政はウーバーの白タクサービスを規制することで、イノベーションを促進することよりも、既存のタクシー業界の利益を守ることを優先したということです。

日本の配車インフラが「ウーバーだけ」になる恐れ

ところが、冒頭に申し上げたとおり、私は現在では「国土交通省の判断は、結構いい判断だったかもしれない」と考えを変えています。

当然のことながら、タクシー業界もウーバーの状況をただ眺めていたわけではありません。独自にアプリによるサービスを開発したり、他社のタクシー配車アプリに名を連ねたりすることで、業界サービスを変えていこうという試みを始めました。

ウーバー的な配車サービスを開始するためにはある程度の大きな資本が必要です。一方で日本のタクシー会社は零細企業が多い。それほど儲かる業界ではないのです。

それだけにウーバーが日本全体のタクシーの配車インフラに育ってしまう可能性もありましたが、その道をたどらなかった。大手のタクシー会社の独自開発したアプリと、大手IT会社が開発を開始したアプリが発展して、複数のタクシー配車アプリが林立する状況が広がっていったのです。

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