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イタリア人が日本で必ずイタ飯を食べる訳

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役割がしっかりと決まっているのがイタリアの食べ物

――イタリア人が特にこだわる食べ物はありますか。

トマトについては、地域によって「あそこのは使わない」ということはあります。やっぱり、使うトマトが皆さん決まっているんですよね。自分の家でずっと使っているトマトがあったり、サラダやトマトソースに使う品種も全部違う。

彼らは、基本的に用途や素性のはっきりしているもの(味)しか食べません。トマトの品種は用途によって歴然と分かれていて、例えば、細長いサン・マルツァーノトマトという品種は水煮にしか使わないとか。私はトマトが苦手なのであまり積極的には食べないけど、イタリア人と暮らしていると自然とトマトに詳しくなりますね。

――日本のように、その年によって流行する食べ物は。

イタリア国内において、イタリア料理ではやる食材はそんなにないかな。飲み物ではありますけどね、最近ではヴェネチアで生まれた「スプリッツ」がシチリアでも飲めるようになりました。何年か前から、健康志向が強くなって中華料理屋がどんどん和食風に看板替えしていますし、最近ではラーメンがそういった店で振る舞われるようになってきていますが、それも一部の人にとってのはやりです。

ラーメンも、日本で食べるようなのを出してくれる店はほとんどありません。イタリアでは何せ日本のように流行語すら発生することもめったにないですから、基本的に長いものには巻かれない人種なんですよ。

撮影=遠藤素子

日本人は「情報」も含めて食べている

日本は鎖国の経験も長かったし、島国という地理的条件もあって、海外からの色んな情報を常に強く欲している傾向があるように思えます。だから情報文化が発達するのと同じで、食べ物も情報文化がつないで生まれた一つの多様性なんじゃないですか。「世界の各地を訪れることは難しいけど、向こうから入って来るものはいただくよ」みたいな感覚はあるんじゃないですかね。

――日本人は料理より、情報そのものを味わっているように見えます。

確かに、「みんながおいしい」と言っている時点で、実際に食べる前から自分の中の「おいしい」が2割ぐらい増していると思いますね。あとの8割は周りの雰囲気だったり、一緒に食べている仲間だったり、そして実際の味覚、という配分になるんでしょうかね。

ヤマザキマリ『パスタぎらい』(新潮社)

――他人の味覚を信用する傾向があるのかもしれません。

そこはすごく日本人らしいなと。イタリア人はそれがないですね。他者が言っていることを単純に信じたり、比較したりする傾向が日本人ほど強くないですから。「うちはうち」というのがあって、その考え方はもちろん彼らの生き方全てに反映されている。

シャンパンなんかも「世界では極上の酒って言われるけど、正直そんなにうまいとは思えないよな、うちの地域の発泡酒のほうがうまいよな」などと言う人が普通にゴロゴロいる。そこが、長いものに巻かれがちな日本との分かりやすい違いかもしれません。

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ヤマザキマリ
マンガ家
1967年生まれ。17歳でフィレンツェに留学。97年、マンガ家デビュー。2010年、『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞などを受賞。17年、イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。著書は『プリニウス』(とり・みきと共著、新潮社)、『ヴィオラ母さん』(文藝春秋)など。

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(マンガ家 ヤマザキ マリ 撮影=遠藤素子)

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