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櫻井よしこ氏「憲法改正をみんな一緒に考えましょう」

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質問:フリーの日隅一雄です。将来的に国家間の対立構造がずっと維持されるのか?維持された状態で安全保障を考えるのは難しい。どこかの段階で平和的な状況が生まれてくると思うのですが、そういうことは現実的に可能なのか。日本人には何が出来るのか。そういう長期的なお考えをお聞かせ願えればと思います。

櫻井氏:"平和的な状況が生まれてくると思います"という前提でのご質問だったと思います。平和的状況は自然と生まれてくるのではない。平和的状況は私たちが作っていかなければならない。平和的状況を作る力とは何か。これは一つは価値観です。人類は民主主義を目指すべきだという価値観ですね。価値観と言っていたものが全部の国でそうかというと、そんな保証はどこにもありません。

この価値観を担保する力が必要ですね。経済の力でも軍事の力でもあります。経済と軍事に密接した外交力、ということにもなると思います。どの国を見ても、自分の国の国土と国民を守るために一生懸命やる。これを国益と言います。国益を守るためにどの国も一生懸命やる。各国が国益を守るために戦いをしなければならない。日本国にその国益を守るための戦いの手段としての軍事力。憲法の上からも法律の上からも、物理的にも不足しているというのが私の認識です。

日本はアジアの大国です。アジアの国々に行くとよくわかります。なんと言ってもGDPは第三位。これからインドに抜かれることもあるでしょうが。第四位になるとしても、1億2,500万人がこの小さな国で技術を磨いてこれだけのGDPを長年維持してきました。そして、多くの国々に日本は極めて平和的な意味で貢献してきましたね。アジアの国に行くと日本に対する期待感ってものすごく強い。このアジアの大国である日本が、アジアでのポジションを意識しないかのように、あちらの国の顔色を見て、こちらの国の顔色を見て、自主的な判断も政策も出来ないのが今、日本の弱点に留まらずアジアのウイークスポットになっている。安全保障のこの空白地帯がある時に秩序というのは乱れがちなんですね。ですから日本がアジアの混乱を招く一つの要因になりつつある。

そういったことは他国のためにしてはならない。平和な状態が自ずとやってきてくれるのではなく、平和な状態を作る責任が日本にあると思います。そのためには日本はまともな普通の民主主義の国になる。

まともな国というのは経済力があって軍事力があって、その上で政治力があるというのがまとまな国です。その意味でも憲法改正はほんとうに必要だと思っています。

質問:BLOGOS編集部の大谷と申します。憲法改正について言うと、国民投票では、有権者が18歳にまで引き下げられる可能性もあります。つまりより若い人に対して、国のあり方という重要なアジェンダについての判断を委ねることになってきます。若い人たちのそういった判断力を養うための政治教育や憲法教育はどうあるべきだと思いますか?

櫻井氏:まずは私は自分の国を知ることだと思います。歴史を学ぶことです。日本の歴史、特に憲法に関しては今の憲法がどのような経緯で出来たか、そこにどのような思惑が込められていたか。それに対して当時、どのように戦ったのか。当時の成人たちもほんとに苦労したと思いますよ。彼らの苦労や思いを学ぶことが大事だと思います。よく"吉田ドクトリン"と言われます。吉田茂首相が憲法改正や軍事力の整備をするよりは、経済を発展させるのが良い、という考え方ですね。

でも実は"吉田ドクトリン"などというものは、まったく無かったわけです。この吉田茂が総理大臣をお辞めになった時に、世界の国々を回ってみて軍事力をきちんと持っていない国はこんなに軽んじられると実感して、自分が生きておられたころに、軍事力再建をしなかったのは最大の悔やみであると言っている。当時の当事者たちの残した記録や思いを知っておく必要があると思います。そうした現代史を、若い18歳や20歳くらいの人たちに知ってほしいと思います。

質問:フリーライターの桜井と申します。私は不勉強なもので教えて頂くことになるかもしれませんが、「人間宣言」したならば、天皇も戸籍を持ったほうが良いのではないかというような疑問があります。「象徴天皇」との"人間"天皇の解釈についてお聞きしたいと思います。

櫻井氏:深い意味のご質問だと思います。我が国の皇室の歴史と、皇室を中心として一種の文明の求心力として働いた我が国の国柄。そうしたものをきちんとみんなで考えて捉えていくことが大事だと思います。神話の時代から、2,670年あまりの歴史が皇室にはあります。祭主、国民のために祈る存在でありました。もちろん歴史を見るとほんの一時期政治の権力に近づいた時期があります。ほとんどの歴史の間、皇室は権力から遠ざかっていて権威としての存在でありました。つまり、祈ってくださる存在としての皇室です。この皇室の祈りがあって、その周りに皇室を慕う国民があって、我が国が成り立ってきたのが歴史的な基本的な形だろうと思います。

ところが戦後になったら、占領軍の考え方で、祈りというものと皇室を別々にしましたよね。祈りというのは皇室のプライベートな行事で、護国でもなんでもない。でも一番大事な皇室の役割は国民のために祈ってくださることですよね。

それともう一つは象徴であると言いましたが、象徴というのは極めてわかりにくい。日本人にとっても、天皇は象徴であるというのはわかりにくい。だから憲法改正の時に、国民統合という形に書き換えるべきだと思います。考えてみればみるほど、天皇というのは皇室より元首の位置にあるべきだと思います。どの国にも元首はいらっしゃるわけです。それは対外的に国を代表する人々です。その元首の立場に今の皇室は定義付けられていませんが、元首ということにする。

"人間"天皇はどうする?ということですが、昔から日本人は皇室を遠い存在において敬ってきて、それを私たちと同じレベルにする。国民と同じように戸籍を持って、姓を持って、というのはどうですか?とおっしゃったのですが、そうではないだろうと思います。一つは祭主としての天皇というものがいる。その方が精神的な支柱となって日本国を作っていけばいい。実際の権力というのは、政治家が政治権力を握り、政治家が国民に変わって行政や立法を行なっていくので良いんじゃないかと思います。

難しいところですよね。憲法学的に言うと、専門家の方はいろんな議論をなさるのでしょうが、今私が述べたのは一つの国民としての感覚を申し上げたのみです。

質問:平等党の田中と申します。先ほどから隔靴掻痒の思いと言いますか。憲法改正と言えば、憲法9条に触れざるを得ないだろうと。憲法9条と言いますと、国家を武装するのかしないのか。これに尽きると思います。武装というのはゼロか100かの問題で、もし1武装すれば2になり、3になる。結局100までいかざるを得ないというのが武装だと思います。中南米にはコスタリカがあるように非武装中立の国もあります。そういうことも踏まえて、どのように考えておられるのか。

櫻井氏:憲法9条を改正して、自衛隊をまっとうな国軍にすべきだと私は考えています。南米のコスタリカのような国に日本はなってはならないと思います。その理由はいくつかあって、我が国の隣国に中国があります。

中国はすでに尖閣諸島は確信的利益だと既に人民日報で書き始めています。確信的利益というのは大雑把に言って三つの意味があると思います。1つはその島は中国の領土領海であり分離独立は許さない。2つ目、分離独立を言い始めた時には武力をもってこれを阻止する。3つ目、第三国の干渉は許さない。第三国というのはおそらくアメリカと考えていいと思います。つまり中国は台湾やチベットと同じように、尖閣諸島を最終的には武力行使してという意味が、人民日報の言葉に込めているのだと思います。そうなった時に、私たちはそのようなことから我が国を守らないといけない。そのためには、コスタリカのように非武装中立では出来ないわけです。十分な軍事力を持つことによって、中国に対して抑止力を働かせる。

手を出してはいけませんよ、手を出したら大変なことになりますよ。ということを示すためにきちんとした軍事力を持つ。そして今の自衛隊は憲法および自衛隊法に縛られているため、普通の軍隊のように振る舞うことは出来ません。きちんとしたまともな軍隊にするということが大事だと思います。その点について憲法9条の改正も、私は今申し上げたような方向で行うべきだと思っています。

プロフィール

櫻井よしこ
ジャーナリスト。国家基本問題研究所理事長。1945年、ベトナム生まれ、ハワイ大学歴史学部卒業。クリスチャンサイエンスモニター紙東京支局、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」東京支局長などを経て、1980〜96年の16年間にわたって、日本テレビ「NNNきょうの出来事」のメインキャスターを務める。
著書に、 「日本の試練」、「異形の大国 中国-彼らに心を許してはならない (新潮文庫)」、「日本よ、「歴史力」を磨け-「現代史」の呪縛を解く」など多数。

櫻井よしこ公益財団法人 国家基本問題研究所


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