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櫻井よしこ氏「憲法改正をみんな一緒に考えましょう」

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質問:フリーランスの島田と申します。憲法というと西洋文明においては国民ではなく国を縛るものという考え方があります。これは日本の考え方には合わないとお考えでしょうか?

櫻井氏:とっても良い質問だと思います。アメリカが初めて憲法を作ります。アメリカというのはイギリスと戦って、それで生まれた国ですよね。その4年後くらいにフランスが憲法を作りましたね。フランスも革命の中で生まれました。ですから非常に厳しく政治を規制すると言いますか、今仰ったように国を規制する。国民の側から国を縛る。国家が国民を騙せないように、搾取しないよう、にという価値観がそこにあります。

実は日本は、憲法に関してはそれこそ聖徳太子の「十七条の憲法」以来、長い文明の歴史があります。「十七条の憲法」の中に書かれているのは、"上も下も結びて、身分を超えてよくよく話し合って決めなさい"、"裁判をする時はちゃんと公正な裁判をしなさい"とか、今読んでみても、民主主義的な価値観というものがそこに盛り込まれています。ですからそこに対立する概念として国家と国民があるのではなくて、相結び合う存在として国家と国民があるというところから始まっています。私は日本のあり方というのは、ものすごく穏やかなのだと思います。そのような日本の歴史を反映した憲法であって良いのではと思っています。

質問:東京大学大学院情報学環の津田と申します。現在96条や59条に絞って憲法改正を進めていこうという動きがあると思います。櫻井さんが考えているような、憲法改正を具体的に進めるにはどのようなアクションが必要か、ロードマップがございましたら教えてください。

櫻井氏:今96条と59条のお話が出ました。私が申し上げたのは概念的なことでありました。けれども現実に、どういうふうにそれを実現していくのですかということになると、96条の改正から始めるのが良いのではないかと思います。96条というのは改正の規定を定めたものです。衆議院と参議院、三分の二の賛成をもって、国民投票にかけて半分以上の賛成を経てようやく改正が出来る。

でも日本の政治史を振り返ってみるとわかるのですが、一つの政党が両院で三分の二をとったことは無い。おそらくこれからもないと思います。となると、三分の二を取れない限りは未来永劫、アメリカ人の作った憲法を我々が使うという非常に変なことが続きます。まずは改正の規定を変えましょう。三分の二の賛成が無ければ変えられないということは、三分の一の反対で阻止出来るわけです。これは民主主義じゃない。民主主義的に憲法改正を可能にするために、三分の二を二分の一、もしくは半分以上というふうに変えるのが良いんじゃないか。まずは96条の一点に絞って改正しましょう。これは96条改正理念として既に出来ています。

一昨年の6月でしたか。超党派で議連が立ち上がりました。自民、民主、その他いろんな政党がここに参加していますね。既に260名の議員の方々が署名をしています。ただ、衆参合わせて約750名弱ですね。96条を変えるのにも三分の二が必要ですからざっと見てあと240名ほど賛成の人たちを増やさないといけない。

私はこれを突破口にしてその後具体的にどこを変えますか?9条からですか?それとも家族のところですか?それとも教育からですか?と逐条的に議論をしていけばいいだろうと思います。

質問:ニコニコ動画の七尾と申します。冒頭のお話の中で、国家が国民と国土を守るのは当たり前とありました。国土ということで言いますと、石原都知事が尖閣諸島の購入を計画しています。一方政府は現状は何も問題はない。つまり、尖閣諸島は日本の領土だから何も問題が無い。ということで政府は表立って動いてはおりません。こうした都知事の動きや政府の発言、あるいはこれを取り巻く報道などについてはどう見ていらっしゃいますか?

櫻井氏:石原慎太郎さんは時々乱暴なことをおっしゃいますけれど(笑)、すごく良いことをおっしゃった。今回の発言には全面的に支持します。

国家基本問題研究所では毎週、ホットな問題に対してどのように考えるか、「直言」というものを出しています。今週は遠藤浩一さんという拓殖大学の教授が、尖閣諸島をふるさと納税でみんなで買いましょう、というのを出しました。石原都知事がおっしゃったことは国民の賛同を得ていると思います。賛同を得ている理由は、政府が今まであまりにも何もしてこなかったからですね。政府の責任は国民を守ることですよね。拉致をちゃんと防いでくれることですよね。国土を守ることでしょ。でも何にもしてくれないという実感が私たちの側にありますね。

最初は野田さんも政府の側からきちんと考えても良いとおっしゃっていましたが、日中の首脳会談が行われる予定があるからと、後退しております。そんな目先の都合で左右されるようでは領土問題ではいけません。ですから、私はふるさと納税で国民みんなで買うのもいいでしょうし、私はそれでも国民の献金は十分集まると思います。もしそうでない場合は日本の首都としての東京が買っても私は何の問題もないと思います。個人的には頑張れと応援したいと思っています。

質問:元ジャーナリストの上杉隆です。憲法から外れますが、日本の言論空間についてちょっとお尋ねします。

櫻井さんは、以前海外のメディアに属しておられました。こうやって自由報道協会で記者会見を開くのは、記者クラブがあるからだと私自身は思っています。櫻井さんご自身が、海外のジャーナリズムと接した経験から、日本のメディアシステムにどのような印象を持っているのか教えてください。


櫻井氏:上杉さんが日本の記者クラブ制度を批判されている記事や報道をいつも拝見しておりました。こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、実はこのテーマは、私もアジア新聞財団のメンバーとなって記事を書き始めたごく最初の頃に、何回も何回も取り上げて、日本の記者クラブ制度はおかしいと言っていました。それは古い本の中に収まっています。どの国に行っても日本の記者クラブのような制度というのはあまり無い。

各国にもちろん記者クラブはありますが、誰が行ってもオープンになっていて、記者クラブの会員でないと入れないというような排他的なものはない。だからこの閉鎖性というものもよくないと思います。それから記者クラブに属していることで、ニュースを与えてもらうといいますか。記者クラブのメンバーになっていれば、その日書くニュースというのが自動的に、回転寿司のようにグルグル回ってきます。ひどい時には総理や外務大臣、囲みの記事まで似たようなものが出てきますね。「こういうネタがありますよ」と、与えられて書いたと思わざるを得ない。

そういうふうに思われること自体、メディアの一員として恥ずかしいと思います。日本のメディアと海外のメディアの報道の違い。これは私自身の感覚、諸外国の特派員の感覚でもありますが、日本はものすごく広くカバーするけれど、深さが無い、つっこんで書いたものがないとよく言われます。その日その日、流れていくニュースはかなり網羅されていますが、一緒にとどまって過去の経緯をみたり、鳥の目で全体像を俯瞰して眺めるという掘り下げた記事というのは無いとは言いませんが、極めて少ない。

ですからモノの見方が表層的になってしまう。そのような情報しか読者もしくは視聴者が与えられないとしたら、日本人は情報が足りない。考える能力もそこで育たなくなってしまうのではと私は心配します。ですからメディアの果たす役割というのは非常に大きい。これは考えてみてください。こういう情報があります。たどってみるとこういうことに突き当たりました。私たちはその価値観の是非を論ずる立場ではありませんが、情報を提供しますから皆さん考えてください。というのがメディアの役割だと思うのです。

考える材料としての深い情報、幅広い情報というのを自由に与えているとは、日本のメディアに関しては思えません。

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