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心のケアとは何なのか

当ブログのカテゴリー「東日本大震災」において、「福島県から戻って、思った。」と題し、福島県に住む知人を訪ねた話を数回に渡り書いてきました。

福島県から戻って、思った。(3)」では、
〈これらの人々を前にして、机上の空論、議論のための議論、批難と批難の応酬は無意味であるだけでなく、不安を増幅するノイズという害さえもたらします。いま早急に必要なのは医師やカウンセラーによる専門的な対応であり、長期的な視野のもと取り組まなければならない課題となっていると痛切に感じます。〉
と指摘しました。

先日、この福島県の知人から電話があった際に、「被災者に対して、心のケアを」と言う人は多いけれど、では実際に「心のケア」とは何なのだろうと話題を振られました。ちなみに、この話題の前段は「心のケア」と称して被災地であやしげな宗教団体が勧誘を行っていたというものでした。

被災直後に現地に入った精神科医や看護師、精神保健福祉士などが、「心のケア」をしようとして、現実の壮絶さに無力感を覚えたと何人かの関係者から聞いています。専門家でさえ、戸惑い、苦悩したところに、精神的ケアの経験も、カウンセリングの技術もないボランティアが「心のケア」をすると乗り込んできて、一部の被災者から顰蹙をかった話も聞きました。この中には前述の宗教の勧誘も含まれています。

「心のケア」なる言葉は響きがよく、とてもためになるもののように思われがちですが、「心のケア」とは何であるか定義できる人はすくないのではないでしょうか。また、それゆえに手前勝手に理解されている節がないとは言い切れないように思います。

他人の心をケアすることで自分自身を満足させようとする人や、他人を誘導し操ることに狙いを定めている人など、目的が他者ではなく自己の欲求のためにある例がしばしば見受けられます。

さらに、心理学や医学の裏付けがないことや、カウンセリングの技術がないことで、相手の心の傷を深く取り除きがたくする可能性もあります。

これまでてんかんやホメオパシーなどに関する相談ごとが当ブログにありましたが、医療やカウンセリングに関する資格がない私が常に気をつけていたのが上記したことでした。はっきりと意識したのは、数件の複雑な相談ごとに深く関わった後です。

詳細は伏せますが現在もてんかんに関する相談ごとが舞い込み、ここ何日かのてんかんへの誤解や偏見に基づく学校での子供へのイジメ問題はなかなか解決をみず、イジメられた本人はもとより親御さんの恐怖心はかなりのものです。

このようになると学校や公的機関への対処や家庭生活へのアドバイスだけでなく、恐怖心を抱えている相手の心に触れざるを得なくなります。

他人の心に触れるのは恐ろしいことです。

心は、その人が生きてきた過程そのものです。そして、これから生きて行くための根幹です。心は、もしかしたら肉体よりもろいのではないかと感じます。心の死は、肉体の死をも意味します。しかも、他人の心に触れるための、いつでも有効なセオリーのごときものは存在しないように思われます。

それでありながら、あまりに日常的に「心のケア」という言葉は使われます。

以上のようなことを私と福島県の知人は話しました。

「ワイドショーなどを見ていると、心のケアが必要でしょう、と〆の決まり文句として使われているけど、あれは何を言っているか自分たちもわかってないだろうな」
と知人は言いました。
「でも、〆の言葉で言うわけだから、彼らなりの結論なのかもしれないよ」
「しかしあれでは、誰に向かって、誰がどんな心のケアをすべきだと言っているのかまったくわからない。言っている人たちも何を言っているかわかっていないのだから、聞いている側もまたかとしか感じないか、右の耳から左の耳へ通り抜けるだけでしょ」
「それは、てんかん患者に偏見を持たないようにしましょうと〆るのと同じかもね」

このようなところに、民主・自民両党が心のケアに必要な資格を「国家資格〈心理師(仮称)〉に一本化」するよう調整に入ったとニュースが入ってきました。実現すれば、「認定カウンセラー」や「学校心理士」など民間資格がばらばらに存在していたものが統一されます。

このニュースを朗報として、ぜひ資格を取りたいとする人も多いみたいです。

しかし、統一することの意味はある程度見いだせますが、まだ詳細がわかりません。
認定心理士に臨床の能力が欠ける例がこれまでみられ、経験を積んだ精神科の医師さえ無力感を覚える状況があることは忘れてはならないと思います。「ぜひ、資格を取りたい。人のために仕事をしたい」と願う人の気持ちをくじくつもりはありませんが、他人の心に触れる恐ろしさは忘れていただきたくないと考えます。

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