- 2019年05月13日 10:26
読売テレビ『ten.』の”不適切取材” TBS「ビビット」の悪のりホームレス取材との類似点と相違点
2/2【共通点】
●その1報道番組と情報番組の区別がなくなっている
昨今、夕方の報道番組とりわけニュース番組を見ていると、限りなく両者の境界が不明確になっている。どちらも北朝鮮のミサイル問題、改元、事件事故、芸能ニュース、生活ネタなどが混在とした作り方になっている。これは全国放送とローカル放送を問わず、全国各地で生じている問題である、
●その2厳しい視聴率競争
それゆえに報道すべきものを伝える、という報道の使命よりも、「視聴率」に意識が向きがち。このことは取材して映像をまとめる番組スタッフだけでなく、番組を統括するデスクやプロデューサーも同じ傾向がある。
●その3忙しすぎるスタッフ
細かい「見せ方」ばかりが評価の対象になりがちなため、一本のVTRを念入りに面白く作るための「作り込み」に時間とエネルギーを割く傾向がますます強まっている。
●その4番組内での「優秀なスタッフ」が担当
TBSの『ビビット』で担当したディレクターは番組関係者や上司によると「優秀なスタッフ」だという評価だった。同じようなテーマで他の人よりも熱心に「突っ込んだ取材」をしてきてわかりやすいVTRを作るという。
「多摩川河川敷のホームレス問題」を一手に担当していたという。河川敷に住むホームレスの人たちを「多摩川リバーサイドヒルズ族」などと揶揄して悪ノリしていた。それゆえにそのコーナーをそのディレクターに「おまかせ状態」にしてしまっていてチェックが効かなかったという。
読売テレビの『ten.』はどうなっていたのかわからないが、伝えられる「悪ノリ」ぶりかた想像する限り、そうした悪ノリが番組内で評価されていたのではないかと想像できる。
●その5細切れされたチェック体制
直前までスタッフが編集室にこもって作業するなど、作業が非常に細切れになってしまっているため、上司であるデスクやプロデューサーも事前にチェックすることが困難になっている。放送を見て初めて、こういう内容だったのかとトップが理解するような現状がある。
●その6番組として「やってはいけないこと」と「やるべきこと」への意識が希薄になる
一つひとつのテーマを「ネタ」として扱う意識になってしまう。その結果として、やってはいけないこと、放送人としてやるべきことなど、放送人としての使命感や役割意識が希薄になる。
●その7”社会問題”がどんどんデリケート化。勉強してないと最新の感覚がわからない
今回の読売テレビの問題は日頃のLGBTをめぐる「マウンティング」やそれに伴う自殺事件などに目配りしていれば防げる問題。だが、そうしたデリケートな社会問題がこのところ増加する傾向があるため、関係者の意識がそちらに向いていない可能性がある。
【相違点】
TBSと読売テレビとの間には相違点もある。
〇その1健全な感覚を示した出演者
TBS『ビビット』の場合には司会していたキャスターも含めて、仮に違和感をもったとしても放送中に特にコメントすることなく、スルーした。しかし読売テレビ『ten,』ではコメンテーターの一人が問題視して番組中に「報道番組がこんなことやっていいのか?」などと発言した・
このことは、コメンテーターに本来求められる役割を果たしたケースだと言える。
番組側も、番組の流れをただ先読みしてそれに同調するようなコメントをする人物だけではなく、場合によっては番組内容に対しても批判的なコメントをする人物をコメンテーターとして配置するべき。今回の読売テレビのケースではコメンテーターに結果として救われたと言っていい。
〇その2すばやく謝罪
読売テレビが、会社として早い段階で「謝罪」したこと。これは組織の危機管理として適切な対応だと評価していい。放送での謝罪まで1ヶ月以上かかったTBSと比べると、今は大きな問題になっても長い目で見れば沈静化する方向に進んでいくはずだ。そのあたりは組織としての迅速な対応は評価できる。
【今後の展開】
では、今後の課題はどうなっていくのだろうか。以下、指摘しておきたい。
◇その1BPOできちんとけじめを
現時点においては人権侵害の訴えが具体的な形で起きているわけでないが、放送倫理上の問題としてBPO(放送倫理・番組向上機構)で審議すべき事案だろう。これについては、読売テレビが自らBPOの「放送倫理検証委員会」に対して報告すべきだろう。考えられる先手を打っていくことが肝心だ。
そうすれば結果的に「放送倫理違反」にはなっても、BPOから指摘される前に、「自社ですでに対応している」というふうに対応できるはず。
◇その2当事者を呼んで再発防止のための記者やスタッフ勉強会を
TBSでは『ビビット』の事件の後で、ホームレス問題に詳しい支援団体の関係者やホームレスのドキュメンタリー取材をしたことがある他社の制作者などをたびたび呼んで「再発防止」のための勉強会、研修会を社内で開いている。TBSはそのことをおおっぴらに表明しない形で地道に続けているが、評価できると思う。
今回の読売テレビの場合、性的なマイノリティーの関係者を講師に呼ぶべきだろう。放送したような「性別」に関する質問などがそうした悩みを抱える当事者に対して、傷つける放送になるのかなどを「当事者の生の声」を知るような機会をつくってほしい。
以上、今回の読売テレビの問題にあたって思いつく内容を列記した。報道現場では多忙になればなるほど、こうしたデリケートな問題が自覚しないうちに「ネタ」として、時には「悪ノリ」の対象になってしまうことがある。今回のことはそうした構図があることを改めて知らせてくれた。
テレビへの信頼、なかでもテレビの報道(番組)に対する信頼感が揺らぎ始めている現在、単に一つの局や一つの番組だけの問題とは考えず、テレビ業界やBPOなどテレビ関係者は肝に銘じて、信頼できる対応に努めてほしい。
※Yahoo!ニュースからの転載



