- 2019年05月13日 09:15
アイドルと「アイドル声優」の決定的違い
2/2■声優としての能力がなければ「誰の記憶にも残らない」
しかしそれ以上に考えなければならないのは、先述したとおり、やはり声優として一人前になることです。
そもそも現在アイドル声優として活躍している人たちも、そのきっかけとなるアニメやゲームのタイトルの役を勝ち取り、声優としての実力を認められた上でステージに立っている。そのことを忘れてはなりません。ルックス、歌唱力、ダンス。それらを熱心に磨いたところで、アイドル声優にはなれません。むしろ「アイドル」を志していることになってしまいます。
ここで一度立ち止まって考えてみましょう。本来求められる声優としての能力を磨くことを怠れば、一体どんなことが起こるでしょうか?
もしかすると、持ち前の華やかさや天賦の才で、一瞬の輝きは手に入るかもしれません。しかし声優としてのあなたの「声」は、はかなく消えて、誰の記憶にも残らないはずです。
■ファンの多くは「キャラクター」に愛情がある
このことは、声優を応援してくれるファンの心理を考えてみると分かりやすいかもしれません。
声優のファンの多くは、そもそも作品の「役」「キャラクター」に対しての愛情があり、その声を担当する声優へ愛情を投影している場合がほとんどです。だから、声優がその作品のキャラクターに言霊を込めて演じない限り、誰も魅了することはできず、応援もしてくれないでしょう。
さらに言えば、もしファンを獲得できたとしても、キャラクターがあってのあなたの「声」であり、多くの場合、その人気はあなたという存在だけに向けられたものではないはずです。しかし、昨今の声優人気の高まりの中で注目を浴びる機会も増えているからか、そうした事実を理解するチャンスが少なくなってしまいました。
しかも声優のファンは、多くのコンテンツに触れ、非常に感覚が研ぎ澄まされているので、中途半端な演技や覚悟はすぐに見透かされてしまいます。何とか人気を得たとしても、一度失敗をしてその期待を裏切れば、なかなか同じステージに戻るのが難しい時代になっているのは、芸能人と同様で、よくお分かりのことと思います。
■「一生自分の声で食っていきたい」人がやるべきこと
だからこそ、「一生自分の声で食っていきたい」と考えているのならば、やるべきことは、たった一つ。華やかなステージに立つために向ける努力以上に、声優として認められる道を着実に進むことしかありません。

それは「職業・声優」としての技術を高めることであり、覚悟を持つということです。職人としての声優の立場を理解し、その上で何をすべきか、自分の頭で考え、行動するということ。
第一線で活躍している本当の「アイドル」たちは、天分に恵まれた上で、それこそ小学生のときから競争にもまれ、トレーニングを重ねています。そんな彼、彼女たちと学校に通ったくらいで「ライバル」というのは、あまりにおこがましくはないでしょうか。
今活躍し、人気を博しているアイドル声優になりたいのなら、一番の近道は声優としての実力を磨くことしかありません。著書『声優道』に詳しく記しましたが、大前提として、声優として求められる演技ができるようになり、アニメなどのオーディションを勝ち抜けるスキルを身に付けましょう。
自らの力でチャンスを掴み取らない限り、すでに原石だらけの中、あなたは輝かない石のままで終わってしまうはずです。
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岩田光央(いわた・みつお)声優
1967年、埼玉県生まれ。出演作に「AKIRA(金田役)」「頭文字D(武内樹役)」「トリコ(サニー役)」「ドラゴンボール超(シャンパ役)、「斉木楠雄のΨ難(斉木國春役)」など多数。子役から芸能界入りした、芸歴30年以上のベテラン。2013年、第7回声優アワード「パーソナリティ賞」受賞。ラジオ大阪「岩田光央・鈴村健一スウィートイグニッション」などにレギュラー出演中。ラジオ大阪声優&アナウンススクールなどで講師を務める。通称『兄貴』と呼ばれ、後輩やファンに慕われている。
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(声優 岩田 光央 写真=iStock.com)
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