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共通点は「失敗」 “平成経済ふりかえり本”はなぜ売れる? - 森岡 英樹

「平成」から「令和」へと変わるのと重なるように、『平成経済 衰退の本質』(岩波新書、金子勝著)など平成経済を回顧する新刊が相次いで発売され、軒並み好調な売れ行きを見せている。


『バブル経済事件の深層』は4月20日の発売

 著者の多くは第一線で活躍するジャーナリストや学者。自身が肌身で味わった昭和、平成の経済を独自の視点で分析している。『平成金融史』(中公新書、西野智彦著)は昭和バブルを崩壊させた日銀の三重野康元総裁の後悔から紐解き、『バブル経済事件の深層』(岩波新書、奥山俊宏・村山治著)は、新証言や新事実から尾上縫や高橋治則の事件などの深層に迫った。

「バブル時代は登場人物の個性が豊かで、物語としても面白い。反面、第一勧銀の元頭取や山一證券の副社長らが自殺に追い込まれる事件もあった。ただ、当事者たちも80歳、90歳になり、もう時効で話してもいいと考える人も増えてきた」(著者の1人)

 その当事者自らが長年の沈黙を破った作品もある。『最後の頭取 北海道拓殖銀行破綻20年後の真実』(ダイヤモンド社、河谷禎昌著)だ。大手銀トップで唯一実刑判決を受けた河谷氏が84歳になった今、拓銀破綻の真相を赤裸々に綴っている。

共通しているのは「平成経済=失敗」

 ただ、いずれにも共通するのは、過去30余年の平成経済は失敗や失政の連続であったと回顧していること。『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書、原真人著)は「異次元緩和は真珠湾攻撃、マイナス金利はインパール作戦、枠組み変更は沖縄戦」になぞらえ、黒田東彦総裁の金融緩和政策に警鐘を鳴らしている。

 平成経済本の購入者は中年以上の年配の男性が中心だという。狂乱の昭和バブルから一転し、七転八倒した平成初期の金融不況、泡沫の平成ITバブル、そしてリーマンショックを経験した世代だ。

「現在の日本経済は不動産価格の高騰などミニバブルと言ってもいい状況です。年配世代からすれば、このバブルはいつ弾けてもおかしくないように映る。そうした不安から令和時代を占う指針として、過去の教訓に学ぼうとしているのでしょう」(大手出版社関係者)

 昭和バブルとそれに続く平成の経済失政から何を学ぶのか。“平成は遠くなりにけり”と懐かしむには、まだ早い。

(森岡 英樹/週刊文春 2019年5月16日号)

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