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『左翼老人』を読んで。

■「左翼」が多く成り過ぎた国


 自国の憲法が時の経過とともに形骸化し、その時代にそぐわないと判断されれば、躊躇することなく憲法の内容を更新する。それが世界共通の常識でもあるが、その中にあって日本だけが、いつまで経っても憲法を更新できずにいる。

 自国で作った憲法であるならまだしも、占領軍によって作られた敗戦時の憲法を有り難がり、神様から啓示された聖書でも崇めるが如く、一言一句変えてはならないという教条主義に陥っている人もいれば、単に既得権益を護りたいというだけの人もいる。そして、ただ、空気に流されているだけの人も大勢いるかに見える。

 憲法に限った話ではないが、一般人の感覚からすれば、日本には未だに温存されていることに矛盾を感じざるを得ないようなシステムや制度が多々あるように思われる。それらが、なぜいつまで経っても変えることができないのかは、偏に、日本には「左翼」が多く成り過ぎたからだとも言える。

 先日、『左翼老人』(森口 朗著)という新書を購入して読んでみた。「左翼」という言葉をズバリ使用している本というのも最近では珍しくなくなったが、著者は、思想的な左翼の位置付けをこう書かれている。

 右翼⇔左翼//左派⇔中道⇔右派

 この位置付けでは、右翼と左翼は思想的に行き来が可能だが、左派・中道・右派とは混じり得ないということになっている。

■公職追放によって誕生した「左翼老人」


 本書には、なるほどな…と思える指摘が数多くあった。以下に何カ所か抜粋させていただくと、 
政府や自治体の政権を有する人々は、左翼老人の活動と票により倒れることを恐れて毅然とした対応が取れないのです。国会で真面目な審議をするよりも政府の足を引っ張る方が左翼老人は喜ぶので、野党はそれにおもねっているのです。
この頃(昭和の時代)は、今では考えられないことですが、「教養人は左翼政党を支持し、無学な者が自民党を支持する」という空気が日本を支配していました。今でも比較的教養のある中高年が、ついつい左翼政党に肩入れしてしまうのは、この時代の後遺症です。
※( )内は筆者追記
デモクラシーが機能するためには議論と妥協が不可欠です。なぜなら、絶対的な正義はないことがデモクラシーの前提だからです。しかし、左翼は政治を議論ではなく闘争と捉えているので妥協は敗北でしかありません。
高校の政治経済だけでなく大学の教育でさえも資本主義と共産主義が対立的なものと教えています。しかし、資本主義と共産主義は決して対立的なものではありません。なぜなら、資本主義は人類の歴史の中で徐々に形成された現在の経済の仕組みであるのに対して、共産主義はマルクスの思想とそれを信じた人々が創った人工国家の理念の中にしか存在しない、つまりこの世に一度も存在したことのない妄想だからです。
現代の民主主義というものが多数決で成り立っている以上、政治家や評論家もまた、数に支配されてしまう傾向にある。特にそういった職業を生業としている人々は、正しいことを言っても評価されず、間違ったことを言えば評価されるということで、自らの思想を偽らなければ商売が成り立たないという哀しい現実を背負うことになる。

 こういった倒錯した社会は、敗戦後に行われたGHQの公職追放によって誕生したとも言える。まともなことを言う人々が追放され、代わりにデタラメなことを言う人々が重宝された時代、この時代こそが現在の日本の悲劇を産んでしまった元凶(原型)であり、その誤った時代の思想を信じ込んでしまった人々が、著者の言う「左翼老人」ということなのだろうと思う。

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