
薬と上手に付き合う方法を解説
日常生活のなかで何気なく出る“症状”は、薬の副作用によるものかもしれない。池袋セルフメディケーションの薬剤師・長澤育弘氏が警鐘を鳴らす。
「よく起きるのが、『頭が重い、痛みが引かない』『口が渇く、のどがイガイガする』『胃がキリキリ痛む、ムカムカする』『お腹がゆるい、便秘が治らない』『頭がボーッとする、眠気が取れない』という5つの症状です。“そのうち治るだろう”と放置してしまうケースが少なくありませんが、薬を飲み続ける限り症状が改善することはなく、悪化することさえあります。その服用を止めない限り、症状がおさまることはありません」
薬の添付文書(説明書)には、それぞれ起こる可能性のある副作用が表示されているが、複数の薬を飲んでいる場合、原因となっている薬を特定するのは難しい。そこで、『週刊ポスト』2019年5月17・24日号では、上記の「5つの症状」について、副作用の原因となり得る薬を120品リストアップし、60歳以上の処方量が多い順に並べた『逆引きお薬手帳』を掲載している。
「例えばロキソニンは、痛みの原因物質であるプロスタグランジンを抑えることで痛みを和らげる『NSAIDs』系の薬です。ところがプロスタグランジンには胃の粘膜を増強する働きもあるため、NSAIDs系薬で分泌を抑えられると、胃痛を引き起こすことがある。そのまま放置してしまい悪化すると胃潰瘍になる場合もあるので軽く考えてはいけません」(長澤氏)
『逆引きお薬手帳』を見ると、漢方薬も数多くリストアップされている。長澤氏はこう注意を促す。
「“漢方薬なら副作用の心配はない”というのは誤解です。とくに植物系の生薬の場合、アルカロイドというアルカリ性の物質が胃酸と反応して消化能力が低下することがあります」
歳を重ねるほど服用薬の種類は増える。多剤併用に陥っている人ほど、副作用による体調不良に悩まされるリスクは高くなる。
「同じ薬を飲んでも、副作用の症状が出るかは個人差があります。例えば副作用として頭痛を引き起こす薬は非常に多いが、ひとつひとつを見れば実際に副作用が起こる確率はそれほど高くない。でも、7種類飲んでいる薬のうち5種類に頭痛の副作用の可能性があれば、それだけ“自分に合わない薬”が含まれているリスクが高くなります」(長澤氏)
『逆引きお薬手帳』を見て、“いま悩んでいる不調は、この薬が原因かも”というものが見つかったら、どう対処すればいいのか。
「自己判断で薬の服用を中止するのは絶対にいけません。副作用が出にくい代替薬はないか、あるいは減薬できないかを医師に相談してください。とくに副作用が出やすいのは、新しい薬を飲み始めたとき。医師に新しい薬を処方されたら、この『逆引きお薬手帳』を参照し、副作用の症状が出ていないかに注意を払うことが大切です」(長澤氏)
どんな薬でも、効果とともに副作用のリスクがある。薬と上手に付き合うために、長澤氏監修の『逆引きお薬手帳』は参考になるだろう。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号