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トランプ氏に抱きつく安倍外交の手詰まり

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蜜月批判の朝日に対し、緊密連携評価する読売

一方、4月28日付読売新聞の社説は安倍首相とトランプ氏の関係を冒頭から評価する。社説自体の扱いも半本の朝日新聞とは違い、大きな1本社説である。

「日米両国は強固な関係を維持し、アジア太平洋地域の安定と繁栄を図らねばならない。首脳間で緊密な連携の重要性を確認した意義は大きい」

「安倍首相がトランプ米大統領と会談し、新たな貿易協定交渉を加速させることで合意した」

「米国は、貿易摩擦の長期化などで中国や欧州と緊張関係にある。日米関係にまで綻びが生じれば、世界経済は先行き懸念が一段と高まりかねない。両首脳が、通商問題などを巡る対立を表面化させなかったのは適切だと言えよう」

朝日社説と読売社説を読み比べると、同じニュースでもその新聞社のスタンスによって書き方が180度違うことがよく分かる。これに産経新聞の社説(主張)が加わると、さらに論調の違いがはっきりする。

国民の利益よりも、己のことが大切

読売社説は日米双方の思惑の相違まで指摘して忠告する。

「会談でトランプ氏は、交渉の合意時期について『私が訪日する(5月下旬より)前かもしれない』と述べた。2020年の大統領選をにらみ、早急に成果を上げたい意向があるのだろう」

「一方、日本は夏の参院選後の合意を望む。協定の内容次第では、農業関係者の反発を招く恐れがあるためだ。こうした思惑のズレが今後の交渉に悪影響を与えないよう注意を払う必要がある」

参院選と大統領選。安倍首相もトランプ氏も、自らの政策を実行に移すために自らの地位の安定を望んでいる。裏を返せば、国民の利益よりも、己のことが大切なのである。

北朝鮮には制裁を緩めずに完全な非核化を求めるべき

読売社説は、朝日社説には触れられていない北朝鮮問題にも言及している。その点は評価できる。

「2回目の米朝首脳会談が物別れに終わった後、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、中露を後ろ盾に、対米けん制を強めている」と指摘したうえで、評価を下す。

「こうした情勢を踏まえ、日米の首脳が、北朝鮮との交渉方針をすり合わせた意味は小さくない」

「重要なのは、非核化に道筋がつくまで、北朝鮮への圧力を維持することだ。国連安全保障理事会の制裁決議を履行するよう、各国へ働きかける必要がある」

沙鴎一歩も、北朝鮮に対する制裁を緩めずに完全な非核化を求めることに賛成だ。制裁が効果を上げているからこそ、金正恩氏はプーチン氏との会談やロケット砲の発射などあの手この手でアメリカの圧力をかわそうと懸命なのだ。したたかな金正恩氏には、さらにしたたかになる必要がある。

「条件を付けずに」という甘い方針転換で大丈夫か

読売社説は書く。

「米朝首脳会談でトランプ氏が日本人拉致問題を提起したことに、首相は謝意を伝えた」

「首相は、金委員長との直接対話に意欲を示す。拉致と核・ミサイル問題を解決することで、初めて国交正常化の道が開ける。北朝鮮への経済支援も可能となろう。こうした道筋を北朝鮮に伝え、粘り強く譲歩を促さねばならない」

しかし、問題は金正恩氏が安倍首相を見下して相手にしようとしないところにある。この点を安倍政権擁護の読売社説はどう考えているのだろうか。あの金正恩氏を「粘り強さ」で制することが本当にできるのだろうか。

安倍晋三首相は5月6日、トランプ氏と電話で会談し、拉致問題について「あらゆるチャンスを逃さない。私自身が金正恩委員長と条件を付けずに向き合わなければならない」と話した。

これまで安倍首相は「日朝首脳会談を行う以上、拉致問題の解決に資する会談にしなければならない」と強調していたが、6カ国協議の参加国のうち、日本だけが北朝鮮と首脳会談を行っていない現状を考えて方針を転換した格好である。

「条件を付けずに」という甘い方針転換。金正恩氏にまた足もとを見られるのではないか。心配が募る。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=CNP/時事通信フォト)

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