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「大阪の革命的地方選挙」 ―大阪都構想問題を国政の真正面から捉えよ― - 屋山太郎

 大阪で起こった革命的地方選挙を見てみる。大阪府議会では維新の会が議員の過半数に2票足りなかった。従って大阪都構想案を成立させるには府議会であと2議席増やしてからやるべしと反維新陣営は語っている。一方の維新の会側は大阪府と兵庫県の6つの国政選挙区から公明党が各1人を選出している。公明党は都構想にも憲法改正にも反対だから、維新は今後は〝公明倒し〟に向かうだろう。

 大阪では府知事も市長も府と市が合併する「大阪都構想」を掲げている。市議会と府議会が選挙を行った5月に、知事と市長が自ら辞表を出して退任。元知事の松井一郎氏は市長に、元市長の吉村洋文氏は府知事に当選。

 都構想を練る大都市制度法定協で市議は充足したが、府議会の維新が2議席足りなかった。維新は公明の断固反対をくじくために大阪府と兵庫県の国会議員の6議席に公明倒しの目標を立てるという。公明党の地盤といわれる関西で地盤沈下を起こさせれば、自公の連立与党は相当にガタが来るはずだ。維新は公明を次の参院選で叩いて、自公体制をガタつかせる思惑だ。しかし公明党は自民党が公明より維新と組む気を起こさせないようにするだろう。

 公明党は山口那津男委員長が「加憲」とは言うものの実質「9条反対」で動いている。

 自民党は安倍氏の執念で「9条の1をそのままにして加憲」との路線を打ち出している。

 山口氏のように政策の主軸をボカしたままでは憲法改正を国民投票にかけるわけにはいかない。国民の半数の支持が取れなければ、「安倍内閣総辞職」である。公明党が同志を騙したまま今夏の参院選直前まで来るなら、安倍氏は衆参同日選挙に踏み切るほかない。

 維新の橋下徹氏は市議会で他派からあと2議席を切り崩して過半数の40にすれば、都構想は実現に近くなる。府議会はすでに維新が51をとって過半数に達している。

 橋下氏は15年に「政界引退」を表明し、「私は政治が下手だから」とテレビで表明したことがある。しかし大阪の大逆転劇は、完璧とはいかなかったが、あと針1,2本で大成功だった。自民党は「安倍の後ろに安倍なし」と後継者不在を嘆いているが、野には橋下徹氏のような天才的策士が存在しているものだ。

 国会は種切れのような有り様だったが「大阪都構想」のような考え方は、小さくて地味な政策ではない。大阪都構想は府と市を合併して旧府側には幼稚園の建物、市側には保育士と役割を分担させ二重行政を防ぐものだという。

 全国で700もの市が消滅の方向を向いている。地方都市では東京が若干増え、沖縄も増えてはいるものの、あとは減少の一方である。まさに「大阪問題を都市問題」と捉え、国政の真正面から考え直すべきではないか。

(令和元年5月8日付静岡新聞『論壇』より転載)


屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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