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本来の役割とは? 法改正で公民館、図書館、博物館を首長部局に移管可能に

 社会教育施設の運営を教育委員会から首長部局へ移すことが可能となる法律が成立する見込みとなった。


■活性化する?

 学童クラブ(学童保育)の職員配置を緩和する「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」には、この内容も含まれており、4月25日の衆議院地方創生特別委員会で賛成多数により可決した。

 この内容も地方からの意見がきっかけとなったもの。首長部局にある観光部門やまちづくりなどと連携ができるようになり、より活性化するというのが理由だ。

 地方からの意見を受けて、中央教育審議会生涯学習分科会に公立社会教育施設の所管の在り方等に関する生涯学習分科会における審議が行われ、平成30年7月9日にまとめが公表され、法案へとなった。

 このまとめを読むと、少子化による人口減少、急速な高齢化、グローバル化、第4次産業革命の進展など大きな変革の中にあり、地域社会においても、地域経済の縮小や医療・介護の需給逼迫、財政の悪化、人と人とのつながりの希薄化による社会的孤立の拡大など、様々な課題に直面している。

 今後より多様化・複雑化する社会的課題を解決しつつ、新たな社会像を実現をするためには、地域の運営においても、「行政=サービスの提供者」、「住民=サービスの享受者」という二分論の役割分担によるのではなく、住民自らも担い手として主体的にかかわり、それぞれが多様な力を発揮しながらともに新しい価値を創造していくことが求められる。同時に、多様で複雑な社会的課題の解決のためには、行政分野の枠を超えた幅広い連携を強化することも必要である。

 一方で、社会教育施設の現状には厳しい意見もあり、社会教育施設が真に地域の学習と活動の拠点として機能するためには、それぞれの施設が今後果たすべき役割を明確にするとともに、求められる役割を果たすために必要な具体的方策について制度面も含めて検討し、着実に実現していく必要がある。

 さらに、学習と活動の拠点としてのみならず、住民主体の地域づくり、持続可能な共生社会の構築に向けた幅広い取組の拠点となる施設としても位置付けられるべきである。

 ともあり、現状に課題を抱えていることも背景にあることが記されている。

 しかし、市長部局へ移管しないとできないことだろうか? との疑問を持ってしまう

■今でもできること

 衆議院地方創生特別委員会でも、現状の地方自治法においても首長部局が社会教育施設の事務を行うことが可能であり、今回の改正とどういう違いがあるのか。むしろ現行の制度で対応できるのでは? の質問が出されている。

 答弁は、まちづくりや観光等の他の行政分野の事業等との一体的推進等のため、地方公共団体がより効果的と判断する場合には、その所管を首長とすることができる特例を設けるものといった内容で、答えとはなっていなかった。

 さらに、社会教育施設の充実よりも、結果として、行政の効率化に重きを置いている見直しに見えてしまう。施設の担当者が減らされたり兼務で対応されたりして社会教育行政の人員体制が弱体化し、本来果たすべき役割が曖昧になってしまうのでは? との質問もあった。

 この答弁は、首長に移管した公立社会教育施設につきましても、法律及び法律に基づく各種の基準等を踏まえまして、必要な職員の確保を含めて、設置者である各地方団体において地域の期待に応えた適切な運営に努めていただくことが重要であると考えております、となっていた。

 法律で基準があるから首長部局へ移しても大丈夫との意味と考えれば、法改正自体が必要ないように思えてしまう。

■本来の役割

 公民館は、既存利用者が施設を独占し、新規の人が入り難いこと。博物館には、研究が好きで、来館者へのホスピタリティーが薄く来館者が増えないこと。図書館には、本は好きでも人付き合いが苦手で来館者のことを考えていないなど人材配置や人材育成に課題があるとの指摘をよく聞く。さらに、正規ではなく嘱託職員で対応し、スキルのある職員が配置できず、さらに閑古鳥が鳴く負のスパイラル状況との話も良く聞く。

 早い話、首長部局が力を入れていなかったから、本来果たすべき役割ができていないのでは。さらに言えば、首長部局が本来果たすべき役割を考えていないことに問題はないのかと思えてならない。

 そもそも、市長部局と教育委員会が連携できない自治体の組織に問題があり、市長部局に移しても同じことで、より悪いほうへ進んでいかないかの懸念も持つ。

 現状でも、教育委員は首長が提案しないと任命ができない、教育委員会の事務局(教育部など)の人事権、なによりも肝心の予算も首長が握っていることを考えれば、移管しなくてもできるのではないだろうか。

 と考えると、法改正の目的は何だろう? 社会教育に関する事務については、今後とも教育委員会が所管することを基本とすべきと提案説明されているが、実際に実施した場合どうなるのか、たんに人員減、コストカットだけが目的とならないかが気がかりだ。

 その前に、本来果たすべき役割を明確にして、できているのかの検証をすべきと思えてならない。

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