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運転のプロが読み解く、高齢者の暴走事故の真相 - 吉田典史 (ジャーナリスト・記者・ライター)

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東池袋の事故現場(筆者撮影)

東京・池袋で旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(87歳)の運転する車が約150メートルにわたり、暴走した。横断歩道に突っ込み、通行人をはねるなどして、母子が死亡した。

今回は、上北沢自動車学校(世田谷区)の教習指導員の齊藤孝行さんに取材を試み、続出する高齢者の暴走事故の真相を尋ねた。齊藤さんは1980年代の半ばから都内の指定自動車教習所で教え始め、教習員のキャリアは30年を超える。

日々、高齢ドライバーと接する齊藤さんに、暴走事故はどのように映ったのだろうか。

高齢のドライバーが最も苦手なのが、急ブレーキ

齊藤孝行さん

「今回の事故は、加害者の操作ミスの可能性があったのではないか、と思います。報道にあるように、「ブレーキを踏んだつもりが、実はアクセルを踏んでいた」という見方です。もともと、高齢者は若い世代に比べ反射神経が鈍く、足腰が弱くなっている可能性が高い。

加害者がはじめにガードレールにぶつかった時点でびっくりしてブレーキを踏んだつもりになっていた、とも言えるかもしれません。いわゆる、脚伸反射といわれるものです。高齢者講習の実車運転の際に逆走をする人がいます。横に座る私が「逆走していますよ!」と指摘すると、慌てて咄嗟にアクセルを踏んでしまう場合があります。ブレーキを踏んだつもりが、アクセルだったということです。

脚力が衰え、若い人たちのようにブレーキを踏む力が弱い方も多数います。私の観察では、特に75歳前後から弱くなり、80代になると、相当に弱くなっているように思えます。80代以降は、心身の衰えや変化が激しい。この変化を踏まえたうえでの態勢にしないといけないはずなのです。たとえば、80歳以上は運転免許の更新を毎年、義務付けるようにしてもいいのではないか、と思います」

今の高齢者は急ブレーキを踏む訓練をあまりしていない、とも語る。 

「特に平成6年(1994年)以前に免許を取った方は、教習所で急ブレーキを踏むことをきちんとは学んでいない。むしろ、急ブレーキを悪と思い込んでいる傾向があります。実際、当時、警察や教習所はそれに近いことを教えていました。現在の高齢者は急ブレーキにはなれていない人が多いのですから、何らかの対策はとるべきだったのです」

ホワイトボードを使い、アクセルとブレ―キの使い方を説明する齊藤さん

現在のAT車の運転席にあるアクセルとブレーキの位置についても指摘した。

「これは私の考えではなく、この分野に精通している識者の意見であることを断っておきます。欧州のAT車は、全般的に運転席のアクセルとブレーキの間に数十センチのスペースがあります。通常は、運転手は右足と左足を交互に動かし、運転します。

ところが、日本のAT車は一般的にはその幅が狭い。右足だけで、アクセルとブレーキを踏んだり、離したりして運転する人が多いはずです。今回の事故も、私の想像の域を出ていませんが、加害者は片方の足で使い分けていたのではないでしょうか。だから、ブレーキを踏んだつもりが、アクセルを踏みやすくなってしまうのです。

今後の対策として、AT車のアクセルとブレーキの間に、欧州車のようなスペースを設けて、両方の足を使い、運転せざるを得ないようにすることも1つの考え方かもしれません。しかし、教習所の教習指導員や警察、交通事故の研究者、自動車メーカーの社員などの間でもこのあたりは様々な見解があります。早急にコンセンサスをつくるのは、なかなか難しいのかもしれません」

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