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7割弱が「具合悪い」を訴える日本の異常

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■「忘却力」だって大切

認知症も人生のうち。お互い様ですからね。「あ、ボケたんだ」って、それを理解して親切にしてあげれば、別に問題ないでしょう。無理やり、入院させる必要もない。もちろん、ご家族が、自宅で介護を背負い込んで疲労困憊してしまってはいけませんから、そこは無理のない範囲で、ですよ。

そもそも、年を取ってくると、自然と物忘れが多くなりますよね。そうなったら、ある意味仕方がないと割り切るのもいい。赤瀬川原平さんも「老人力」を提唱して、老いることをプラスに考えようと言っています。物忘れがひどくなることを、「忘却力が付く」って言っていましたね(笑)。

世界にはいろんな人がいるもので、本当に稀ですけども、記憶力がよくて困るっていう人もいます。何が困るかって、忘れたいことも忘れられないから本人が「辛い」と言うんです。だから医者に相談に行く。何月何日って言ったら、曜日がパッとわかって、その日、何があったって言えるんですから。

うちの女房がそうだったら、僕なんか一緒に暮らせませんよね。「あのとき、こうだった。ああだった」と、必ず覚えてますからね(笑)。だから「忘却力」も非常に大切だと考えます。

ちなみに、うちの母は95歳まで生きていまして、ほとんどボケていませんでした。しかし、ちょっと問題があってですね。母の場合は、体が動かなくなってしまった。頭はボケていないので、そうすると、いろいろ文句が多くなって、かわいそうでした。

逆に体が非常に丈夫でいわゆるボケが起こっちゃいますと、徘徊が始まっちゃいますね。どんどん歩いていってどこへ行ったかわからないと、こういう話になっちゃう。だから脳・体を含めて全体のバランスが大切なんです。

年を取るっていうことは、今まで生きてきた結果です。認知症になってもしょうがない。私は、80歳を超えてますから、80年間の歴史が私の中に入っているんです。

今、梅が咲いていますが、梅の木だって、今のカタチになるまで何千万年、何億年と長い年月をかけて進化してきました。それを今の人間が頭で考えて、完全に理解できますか? その謙虚さは持っていただきたいですね。人の体も同じです。でも、もちろんいいんですよ、いろんなことに望みを持ってね。夢を持って生きるのが、一番だと思います。

(協力=ネイチャーラボ主催「人生100年時代を生きるための“脳”」イベント)

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養老孟司(ようろう・たけし)

1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。67年、医学博士号修得。81年、東京大学医学部教授に就任、95年に退官。北里大学教授、大正大学客員教授などを務め、現在は東京大学名誉教授。『からだの見方』『唯脳論』『バカの壁』『遺言。』など著書多数。

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(東京大学名誉教授 養老 孟司 構成=東 香名子 撮影=村上 庄吾 写真=iStock.com)

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