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忘れられないといいですね

自民、最低賃金を一律化 参院選 政策集に明記へ(産経新聞)

 地域間で異なる最低賃金(最賃)について、自民党が夏の参院選で公約とともに取りまとめる政策集に一律化の検討方針を明記する方向で調整していることが3日、分かった。相対的に低い地方の最賃を底上げすることで、人件費が増えても一定の利益を上げられるよう企業に努力を促し、日本全体の生産性向上などにつなげる狙いだ。

 経営への影響が大きい中小企業が、参院選で激戦の予想される地方に多い点にも配慮し、扱いは中長期的な課題にとどめる方針。

 安倍晋三首相は平成27年11月、最賃について、毎年度3%程度引き上げて、将来的に全国平均で千円を目指すと表明し、現在は874円まで達した。ただ、最高の東京都(985円)と最低の鹿児島県(761円)で224円の格差があり、外国人を含めた地方から都市への人材流出の一因となっている。一方で、労働力確保のコストが都市よりも抑えられることから、生産性の低い地方企業を温存することにつながっているとの指摘も出ている。

 自民党は今年2月、最賃の格差解消に向け、有志議員が「最低賃金一元化推進議員連盟」(会長・衛藤征士郎元衆院副議長)を設立。最賃一律化が持論で政権幹部とも親交のあるデービッド・アトキンソン小西美術工芸社社長らと意見交換し、必要な法整備を訴えている。議連では厚生労働省の担当課長が業種別の一律化を主張し菅義偉官房長官が全否定する騒動も起きた。

 ただ、党幹部も一律化の必要性自体は認めており、議連側の要望を受け入れ、選挙公約としての拘束力は弱い政策集「Jファイル」に地方の反発を招かない表現で一律化を盛り込む方向で調整することになった。実現に向けては、最賃の底上げを後押しするよう実効性のある補助金などの仕組みづくりも課題となりそうだ。

 さて公約はおろか政策集ともなりますと、自民党以外の党が与党になったときも含めて忘却の彼方に追いやられがちなイメージですが、これはどうなるのでしょうか。曰く「扱いは中長期的な課題にとどめる方針」とのことですから、インフレ目標よろしく掛け声だけで終わる可能性も高そうです。現に菅官房長官の全否定などもあるわけで、「ポスト安倍」が今回の方針を引き継ぐ見込みは乏しいような気もしますし。

 とは言え、最低賃金の一律化自体は好ましい政策です。例えば東京のコンビニ店員と鹿児島のコンビニ店員で能力に大きな違いはないはずですが、しかし賃金には大きな違いがあります。住むところに制約のない人であるならば、必然的に東京へと引き寄せられることでしょう。地方で頑張るよりも、上京する方が得なのですから。

 平成は、東京一極集中の進んだ時代でした。東京に収まりきらない富が地方に波及する時代から、企業や人材が東京へと流出する時代に移行したのが平成と言えます。東京都知事にとっては、くだらない妄言、暴言を連発していても勝手に足下が栄えていく良い時代であったかも知れませんが、日本全国にとっては決して繁栄の時代ではなかったわけです。

 そこで「日本全体の生産性向上」を考える上では、地方の給与水準を上げていくこと、地方で働く人の所得を増やし、地方在住者の購買力を上げていくことも当然ながら、求められるのでしょう。しかるに地方ほど低い賃金が法的に許されているために、マトモな賃金を払えない生産性の低い事業者が延命できてしまうのが現状です。

 平成は、規制緩和の時代でもありました。改革の旗の下、より広い範囲の職種を非正規で、かつ薄給で雇い続けられるようになった時代です。賃金を引き上げたら潰れてしまう、そんな生産性が低く競争力に欠ける企業でも、人件費を抑制することで事業を継続できるようになった時代なのです。そして、日本経済が発展した時代ではありませんでした。

 「経営への影響が大きい中小企業が~」とは、最低賃金引き上げ論議の際に出てくる決まり文句ですが、しかしマトモな賃金を支払えない企業は日本社会の寄生虫でしかないわけです。それは駆除されるべきであり、人権のように守られるべきものではないでしょう。賃金を引き上げたら潰れてしまうのなら、それは既に事業として破綻しているのです。

 そもそも安い人件費を唯一の武器に価格競争を仕掛けてくる事業者が国内に存在することは、他の優良事業者にとってもマイナスです。ちゃんと賃金を引き上げようとしても、(人件費を抑制することで)安売り攻勢を仕掛けてくる競合他社がいては、それへの対抗策も必要となってしまいます。悪貨は良貨を駆逐するものですから。

 従業員を安く長く働かせることでしか事業を継続できない、そんなゾンビ企業に対して毅然とした態度を取ること、それが国民にとって有益な政治家の在り方と言えます。しかし、とかく経営者目線の日本社会では、企業の保護ばかりが優先されがちです。そして与党に限らず野党もまた同様で、「弱い」企業を守ろうとして結果的にはゾンビ企業の延命に協力している等々。

 引用元では「実効性のある補助金などの仕組みづくり」と書かれていますが、この「補助金」とは、やはり企業――それも「マトモな賃金を払ったら潰れてしまう生産性の低い企業」――が対象となるのでしょうか。それ即ち企業への福祉を続けてしまっては、問題企業の延命にこそ繋がっても、地方の自立的な発展に繋がることは永遠にないと言わざるを得ません。

 やるべきとすれば、ゾンビ企業の駆除あるのみです。最低賃金を都市部と同水準に引き上げる、それで破綻する事業者には、速やかに市場から退場してもらう必要があります。これで失業者が出るのであれば、その時こそ補助金の出番であり、同様に地域サービスが不足するようになれば、これもまた補助金の出番でしょう。

 民間で(賃金を最低水準まで引き下げない限り)採算が取れないような事業こそ、「官」がやらなければいけないことであり、そこで適切な雇用を生むべきことでもあります。正しい道へ進むためには、まず誤った道を引き返さなければいけません。「官から民」の時代の過ちを修正するためには「民から官」への動きもまた考えられるべきであり、それはゾンビ企業延命のための福祉よりも、間違いなく有意義なことです。

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