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ピエール瀧は一生神妙な顔でいるべきか?

年号は平成から令和に変わったが、平成の問題が何かしらの解決を見せたわけではない。

少なくとも僕の中では今もなお解決を見せたわけではない問題。ピエール瀧氏の問題をもう一度論じようと思う。

僕はこれまでに、ピエール瀧氏がコカインの使用によって逮捕されたことの問題を3回論じてきた。

1回目は、コカイン使用は「被害者なき犯罪」だとされているが、決してそのようなことはなく、反社会的勢力の資金源となり、また他の薬物中毒者を生み出してしまった、つまり別の被害者を生み出してしまったことの罪があると論じた。(*1)

2回目は、ピエール瀧氏や新井浩文氏に対しては「作品に罪はない」という温情があつまるが、一方で「CMにちょっと映っているだけの盗作女は排除しろ!」というネットの反応は、結局は「作品に罪はない」と言っても、それは「みんなが知っている著名な人間だけに限られる」という権威的、もしくは属人的な意味合いしか持っていないのではないかと論じた。(*2)

そして3回目。

今回のきっかけは、保釈されたピエール瀧氏とツーショットの写真を、電気グルーヴでコンビを組んでいる親友の石野卓球氏がツイッターにアップしたことに端を発する。

ピエール瀧氏の逮捕以降、いろいろと注目された電気グルーヴの二人が、肩を抱き合い微笑む写真は、電気ファンならずとも涙腺の緩む素晴らしい写真であった。(*3)

しかし、sanspo.comに掲載された記事は、そのような気持ちに冷水をぶっかけるものであった。

「石野卓球との写真で見せたピエール瀧の笑顔 神妙な顔での謝罪は何だったのか」と題された記事では、二人の笑顔に対して「(保釈の際に)神妙な顔で謝罪した姿は一体、何だったのか」「今すべきは、20代から陥った薬物中毒から脱却する治療や更生のはずだろう」「現状を思えば、笑顔はあまりに不自然」「これほど残念な友情写真は見たことがない」と論じたのである。(*4)

さて、少なくともこの記事が提示する通り、今ピエール瀧氏が行うべきことは「20代から陥った薬物中毒から脱却する治療や更生のはず」というのはそのとおりだと思う。

だが一方で疑問を抱かざるを得ないのは、「石野卓球氏と一緒に微笑み合う写真を揶揄することが、果たして薬物中毒から脱却する治療や更生に結びつくか」ということである。

ここで僕たちが考えるべきは、日本の違法薬物に対する啓蒙が、どのように行われてきたかという歴史である。

日本の違法薬物への啓蒙は、基本的に「違法薬物に関わったら人生終わり」というイメージを保つことによって行われてきた。

「覚醒剤やめますか? それとも人間やめますか?」という有名なワードや、女子高生などを対象に薬物を使用することで蟻地獄のように人生が飲み込まれるようなイメージをもって、最初から一切接触をしないように、警笛を発してきた。

それは確かに薬物利用の第一歩に対しては一定の抑止力になったのではあろう。しかし残念ながら、この警告は薬物依存に陥っている人たちには、別のイメージをもって聞こえていたのではないのだろうか?

「違法薬物に関わったら人生終わり」という、初期接触を避けるイメージは、その一方で長期に亘って破綻なく付き合っている人たちに対して、「もう終わった人生である」という開き直りを与えてしまい、依存からの脱却という道から目を逸らし、薬物依存に身を晒し続ける、体のいい言い訳になってしまっていたように思う。

しかし実際には、大麻にせよコカインにせよ覚醒剤にせよ、自らの生活が破綻しない程度に付き合いながら長期の利用を続けている人は少なくない。

特に大麻については国や州によっては合法化されている。合法化された大麻を吸っている人の人生が終わってしまったかといえば、そんなことはない。合法化された大麻を吸っている人は、お酒やタバコを嗜む人がそうであるように、普通の生活者と決して変わりない。

すなわち「違法薬物に関わったら人生終わり」という啓蒙は、とっくにその嘘を暴かれているのである。

そして実際、20代からコカインを使用していたと報じられているピエール瀧氏についても、その生活が破綻していたり、人間として終わっていたということなく、今回の写真のように「親友がいる一般的な生活者」としての素顔を顕にしているのである。

その上で、すでに嘘を暴かれた「違法薬物に関わったら人生終わり」という啓蒙を、今後とも継続する必要はあるだろうか? 僕はそうは思わない。

本当に重要なことは、たとえ現在は薬物依存に身をやつしていても、自ら決心すれば、依存という状態を脱すことができることを啓蒙することではないだろうか。

そのために、もはや恐怖煽りは不要である。

そうした意味で、石野卓球氏はもちろん、芸能界に多くの友人を持つピエール瀧氏は「薬物依存脱却の広告塔」としてふさわしいと考える。

もし、ピエール瀧氏に払い続けなければならない「有名税」があるとすれば、それは薬物依存であった過去を一生イジり続けられることであると、僕は考える。

しかしそのことで、現在薬物依存である人たちが、いつか自分も、石野卓球氏とのツーショットの笑顔のような満面の笑みをたたえることができると思うことができるのであれば、それはピエール瀧氏にとって十分過ぎる罪滅ぼしになるはずだ。

そしてピエール瀧氏を再び音楽業界や、芸能業界に受け入れることも、薬物依存の状態にある人たちに対して「決してあなた達は人生が終わった人たちではない」というメッセージを送ることになるだろう。

そしてピエール瀧氏自身にも、彼自身が持つ本来の明るさで、多くの依存症患者たちを導いてほしいのだ。

そのことが結果として、違法薬物の蔓延を防ぐことにつながるだろう。依存からの脱却が、依存者の希望として光り輝く限り、更生の可能性は残り続けるのである。

薬物のみならず、今は様々な依存で苦しんでる人たちも、いつかは笑顔でいられる社会であるべきだ。

ピエール瀧氏を一生神妙な顔で居させても何も解決しないのである。

ピエール瀧氏を笑顔にさせ、その写真をアップロードしてくれた石野卓球氏には、感謝の念しか無い。

あの写真の笑顔があれば、ピエール瀧氏は必ず薬物依存から脱することができるだろう。

違法薬物だけではなく、さまざまな依存で苦しんでいる人たちに、僕はいつか心の底から笑える時が来てほしいと思っている。

*1:違法薬物で逮捕 出演作品の自粛は不要なのか?(赤木智弘 BLOGOS)https://blogos.com/article/364862/
*2:ついこないだまで「作品に罪はない」って言ってなかった?(赤木智弘 BLOGOS)https://blogos.com/article/370941/
*3:一カ月半ぶりに瀧くんと会ったよ。汗だくになるほど笑った!(石野卓球 Twitter)https://twitter.com/TakkyuIshino/status/1121419849656233986
*4:【甘口辛口】石野卓球との写真で見せたピエール瀧の笑顔 神妙な顔での謝罪は何だったのか(SANSPO.COM)https://www.sanspo.com/etc/news/20190427/amk19042705000001-n1.html

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