令和に入ってから3日目となった5月3日。
今回の天皇陛下の即位に関してTBSが他局以上に「こだわり」を見せて報道している。
夜のニュース番組「NEWS23」では、現在の天皇陛下の曾祖父にあたる大正天皇が病弱だったために息子である皇太子(後の昭和天皇)が摂政についた際、宮中で大正天皇の側近たちが反発していたという事実を示す女官の証言テープを発見したとして放送した。
明治、大正、昭和と続く天皇の歴史にくわしい放送大学教授の原武史さんも「非常に貴重な録音」で「(当時皇太子だった)昭和天皇が摂政になった際に宮中がギクシャクした関係になった裏側に何がったのが証言テープから浮かび上がってくるかもしれない」と期待を寄せている。
大正天皇の女官の肉声、摂政めぐる対立詳細に出典:TBS NEWS 公式サイト
天皇の退位と即位という、通常なら数十年に一度となる大きな節目をテレビ局のような報道機関が取材力を駆使し、これまで知られていなかった事実を掘り起こして国民に伝えようとするのはいいことだと思う。
TBSは5月3日の憲法記念日の夜の「NEWS23」でひと味違う報道をみせた。
それはこの数日、国民が退位や即位の儀式などを注視してきた象徴天皇という存在の、「憲法における位置づけ」を問い直したのである。
おりしも長期安定政権を築いている安倍首相はこの日も「2020年を(改正した)新しい憲法を施行する年にしたい」と意気込みを語った。今は2019年。安倍首相の言う通りに2020年となれば、後1年ほどで改正された憲法が施行されることになる。
TBSは安倍首相が率いる自民党が2012年に正式に発表した憲法改正草案には、天皇を「元首」にするという文言が記されている点に注目した。一般の人々が象徴天皇制についてどんな感想を持っているのかを聞き歩く取材がベースになっているが、なかなか考えさせる内容になっていたので紹介したい。
[画像をブログで見る]「象徴天皇」と「元首」とは何がどう違うのか?
「NEWS23」はこの夜、「令和に改元されて3日目のきょうも、皇居には天皇陛下の即位を祝う大勢の人たちが訪れました」と伝えた。
皇居に集まった人たちに「きょうは何の日?」と尋ねると、「国民の休日」「文化の日」「建国記念・・・」などといい大人が答えていて、憲法記念日だと認識する人があまり多くないことが伝わる。むしろ人々は令和になってのお祝いムードに浸っていようという意識の方が強い印象だ。
日本国憲法 第1条ではこう書かれている。
「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意を基く。」
[画像をブログで見る]4月30日に前の天皇陛下(現在の上皇陛下)は退位にあたり、
「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します」
とお言葉を述べられた。
[画像をブログで見る]その翌日に現天皇陛下が即位にあたり、
「憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たす」
ことを誓われた。
新旧お二人の陛下が口にされた「象徴」とは、何を意味するのだろうか?
街の人は「象徴」の意味をどうとらえているのか?聞いてみた
人々の回答が興味深いものだった。
(熟年の男性)
「人間としての見本みたいな」
(若い女性)
「あるべき姿の日本を代表した姿というイメージ」
(男女のカップル)
「震災のあったときにひざまずいて国民の歩みよっていく」
国民の間に広く、定着している「象徴」としての天皇。
かつて明治時代に定められた大日本憲法では「天皇ハ国ノ元首二シテ統治権ヲ総攬シ」と、天皇は「象徴」ではなく「元首」と定められた。
[画像をブログで見る]戦時中は天皇に主権があるとの解釈が主流となり、天皇は神格化されていった。
これに対し、国民主権を定めた現在の憲法では、天皇を「象徴」として位置づけることにした。
それが2012年に自民党が示した「日本国憲法改正草案」では「天皇は日本国の元首であり、日本国及び日本国統合の象徴であって・・・」と、およそ70年前に削除された「元首」の文言が復活していた。
その理由について当時、自民党は「わが国において天皇が元首であることは紛れもない事実です。」(「日本国憲法改正草案Q&A増補版」)とした。
[画像をブログで見る]広辞苑によると、「元首」とは「一国を代表する資格をもった首長」のことだとされている。
アメリカではトランプ大統領。中国では習近平国家主席。イギリスであればエリザベス女王が元首にあたる。
2017年の衆議院の憲法問題審査会では、与党の公明党の太田昭宏衆議院議員が「権威は持つけれど権力は持たないことを徹底するという、象徴天皇制の本質論から言って、そうした『元首』ではないということが大事」だと述べている。
憲法学者である首都大学東京の木村草太教授は以下のように解説する。
「天皇を『元首』と明記すると、条約の締結や外交上の代表が必要なとき天皇がその任を負うと解釈される可能性が出てくる。(天皇を元首にする憲法改正を訴える人たちは)動機としては戦前復古的な天皇の地位を増強する国がいい国だという思いが表れているのだと思う。」[画像をブログで見る]