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転換期を迎えた日本の社会にふさわしい政治勢力を

今の日本には政治的に動かしがたい事実がある。政治に関する年齢階層別グラデーションのような関心の低下、そしてこれを背景とした国政・地方を問わない選挙における投票率低下である。

 その理由は、本当は一つ。転換期を迎えた日本の社会には、今後の50年先を見据えた社会制度の見直しが必要であるのに、既存の政治勢力(与党・野党を問わず)がそれを避けているという事実を国民に見透かされているのだ。

ひと昔前から変わららない、街角インタビューの定番的答えがある。

「どうせ誰を選んでも変わらないし。」

日本人の政治的成熟度の低さを示すとしてこの定番的答えは揶揄されてきた。しかし、実はこの答えは正鵠を射ているのではないか?

今の日本が、戦後の、まさにゼロからのスタートに立ったときの状況とは全く異なった状況にあるのは誰の目にも明らかである。それ故に戦後設計された、当時は革新的であった社会制度に随所に機能不全が既に生じている。

戦後の日本、昭和の時代に存在していたこと、それは

・人口の爆発的増加とこれに伴う高度経済成長

・漸増する通貨高と経済の活性を示す高金利による国富及び国民資産の増大

・一人当たり国民所得の低さ(=低賃金労働)を利用した格安の製造コストによる世界への輸出攻勢

・高品質で均質な製品を大量生産するための管理教育の徹底と、高品質・低コスト製品による世界市場の席捲

・大企業を中心とした終身雇用制度とこれを支える徹底した解雇制限、年功序列による高賃金

・高齢者と若年層の人口比のアンバランス(今とは逆の高齢者が少なく若年層が極めて多い)を利用した安価な社会保障の徹底、若年層に負担の少ない高齢者世代の優遇

・冷戦終結時頃までの比較的変化の少ない社会情勢と安定した企業基盤

であった。

改めて述べるまでもないだろうが、主に平成の時代にどのような変化が起きたか、あるいは現在進行形で起きているかといえば、

・人口減少と人口オーナス期における経済縮小

・円安と経済停滞を示す低金利による国富及び国民資産の実質的減少

・高賃金による輸出競争力低下と世界市場からの段階的敗退

・管理教育徹底による若年世代の自主性・創造性の低下と革新的技術や世界的新規企業の不発

・解雇制限回避のための非正規労働者の増加と年功序列崩壊に伴う低賃金の固定

・高齢人口層の増加による社会保障の高コスト化、若年層負担の漸進的累増と高齢者世代へのサービスの切り下げ

・果てしなく続く情報技術の進歩による激しい社会的変化と企業内部あるいは企業間の激しい新陳代謝・栄枯盛衰

このように、戦後の日本の発展を支えた状況すべてが既に転換し、変化したというよりは新しい状況に入れ替わっていると言っていいほどであるが、これに対し、戦後造られた社会制度はほとんど変わっていない。構造的問題に対処療法的な立法や政策手段—例えば労働者派遣制度の解禁、異次元緩和に伴う財政ファイナンスの実施、外国人労働者受け入れの大幅拡大—が取られたが、根本的な対処、根治療法は施されていない。

デフレというか構造的不況に対する根治療法が取られていないのであるから、いつまでたっても高度経済成長終了後の泥沼から抜け出せず、若い世代に希望は見えないのだ。しかもその対処療法のおかげで将来への負債(平成元年に100兆円台であった国債残高は今や約1000兆円)は増す一方、状況は悪化し続けている。

この状況を改善するには、国民的議論と国民的同意の上で、戦後の日本を支え、我々が所与のものとしてきたこれまでの政策を抜本的に—戦後起きたようにまさに革命的に—変えていくしかない。

議論されるべきは

・持続可能な社会、持続可能な財政とするための国民負担と財政支出の在り方

・現行の優れた社会保障システムを維持しソフトランディングをさせるために給付の段階的切り下げ(年金受給年齢の引き上げ、医療費自己負担の世代間平等)を選ぶのか、あるいは抜本的改革として年金の賦課方式から積立方式に大転換するのか

・正社員と非正規社員の格差是正及び賃金水準を上昇させるために、非正規社員の待遇を正社員と同等とするよう法整備を図るのか、あるいは企業間競争及び技術革新の激しさを踏まえて現行の厳しい解雇規制を緩和し、これによって不利益を受ける労働者の保護は北欧並みのセーフティネットと再教育制度の構築でケアするのか

・創造性、自主性を最大限発揮できるような教育システムに大きく転換するためにはどのようなやり方が望ましいのか

・社会に「新しい芽」が伸びるようにするにはどの規制を撤廃し、消費者や弱者保護のためにはどの規制が必要なのか

などであろう。

このような抜本的議論がなされることが必要な時期であるのに、残念ながら今の国会でこのような議論はあまり行われていないのは周知の事実である。

だから、「どうせ誰を選んでも変わらないし。」と国民は考え、じわじわと悪くなる予感を抱えながらも政治に関する興味も失われ、目の前の現実に集中するのだ。

先の総選挙で立憲民主党が躍進したのは、今までの野党とは異なる、こういった抜本的議論で政権与党と真っ向勝負の論戦を挑む野党ができることを国民は期待したのではなかったのではないか?しかし、残念ながら現状その方向の取り組みはあまり目立たず、従来型野党の側面が目立っており、これに対する国民の失望が支持率低下となって表れているようにみえる。

国民民主党は、既存の社会システムにおいて、勝ち組の大企業の労働組合をバックにしており、それが強みではあるが、そのくびきから脱することはできていないように見受けられる。現状の行き詰った社会システムを変革するというよりは維持するための政治勢力と国民に思われているので、支持率が低迷したままなのだろう。これに対して、先の地方選挙で躍進した維新の党は、「変えてくれる」という期待を、地方自治における実績を踏まえて大阪の人々に抱かせているようだ。

 政治に興味が失われているのには、理由がある。何事にも結果には原因があるのだ。今の野党に関心が集っていないとすれば、それは一部の野党支持者がいうように、安倍政権がマスコミを支配し情報操作しているからでも、国民が騙されているからでもないだろう。戦闘機の価格を保育所新設費用と比べても、あるいは大臣の失言や役所のスキャンダルを追及しても、今の日本の状況は少しも変わっていかないことを国民は理解している。それらを追及するのが悪いとは言わないが、もっと本質的な議論こそ国民は期待しているのだ。

現状で、野党の離合集散が果てしなく繰り返されても、あるいは野党共闘が成立して一定の成果を挙げたとしても、野党間の議席の消長にとどまり、再び政権交代が起きることはないだろう。

今の日本にどうしても必要なのは、党利党略や選挙に勝つための政治的手段ではない。これからの日本を維持し、さらには発展させていくために必要な、本質的な制度改革を国民に示し同意を得ていく努力を行う、堂々たる政治勢力なのだ。既存政党・新規政党に関わらず、そのような政治勢力と国民が認める政党が現れた時、国民の政治への関心は高まり、日本は次の時代に向けて、新たな、前向きの一歩を踏み出すのである。

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