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【解説】 なぜ労働党は議席を減らした 英地方選

イアン・ワトソンBBC政治担当編集委員

英最大野党・労働党は2日にイングランドと北アイルランドで投開票された地方議会選で、大きく議席を減らした。多くの地区では前回の2015年選挙に続く後退となった。

労働党が82議席を失ったのに対して、与党・保守党は実にその10倍以上の1334議席を失っている。しかし、あまり人気のない政権の任期半ばにあった選挙で、最大野党が議席を大きく伸ばさなかったことの方が、きわめて異例だ。

イギリスの欧州連合(EU)離脱、つまりブレグジットを支持する地域で労働党が得票を減らしたのは、2度目の国民投票にきっぱり反対していないからだという見方は、おそらく当たっている。たとえば、イングランド北東部サンダーランド市議会のグレアム・ミラー議長が言うように。

(労働党は、もし保守党がEUとのブレグジット協定を変更しないなら、国民投票は選択肢としてあり得るという立場だ)

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しかし、サンダーランドの投票結果を詳しく見ていくと、労働党が抱える政治的な問題がいかに複雑かが明らかになる。

サンダーランドで労働党の得票率は17ポイント近く下がった。一方で、ブレグジットを強力に支持するイギリス独立党(UKIP)の得票率は4.5ポイント上がった。

EU残留を支持する自由民主党は、サンダーランドで得票率を10ポイント近く伸ばし、同様に緑の党も8.5ポイント伸ばした。さらに言えば、自由民主党と緑の党の票を合わせれば得票率は21.4%で、UKIPの23.9%に迫っている。

労働党から自由民主党に流れた票は約13%、緑の党へは10%だった。

労働党支持者の中には、内容を問わず政府のブレグジット協定について国民投票の実施を支持する層がいる。その人たちによると、労働党はEU残留派にアピールしなくなり、そのため離脱派多数の一部地区で支持を失っているのだという。

そうやって労働党支持者が自由民主党と緑の党に流れたことで、労働党が票を減らし、それがUKIPに有利に働いたというわけだ。

地元の事情

イングランド中部ダービーはEU離脱を支持した。今回の選挙では労働党が6議席失い、UKIPは2議席増やした。労働党から自民党に流れた票は6%だった。

しかし、労働党の現在の方針(留保条件だらけで極めて限定的な条件が整えば国民投票を支持するというもの)を支持する人たちは、ブレグジットだけで地方選の結果を分析するのは単純すぎると言う。

実際のところ、労働党支持から自由民主党支持に切り替えた人がなぜそうしたのか、動機は本人に直接聞かない限り、分かりようもない。

場所によっては本当に純粋に地元ならではの特殊事情が、投票に影響している。これは地方選挙だったのだから、当然だろう。

労働党左派の間には、別の解釈もある。労働党が議会与党の自治体によっては財源不足のため住民サービスを削減せざるを得なかった場所もあり、これに対する批判票が労働党の後退につながったのだろうという意見だ。

労働党への批判票は、場所によっては自由民主党を利する。

ほかに、労働党左派の間には、ブレグジット論争があまりに騒がしくほかの何も聞こえなくなってしまっているため、労働党が緊縮財政を批判しようとしても、それが有権者につながらないのだという不満もある。

こう言う人たちはむしろ、党の執行部が早く政府と妥協し、ブレグジットを済ませてほしいと強く願っている。労働党がブレグジットで政府と合意すれば、ブレグジットをめぐる激しい対立と悪感情は中和されるだろうと期待しているのだ。

いずれにしろ、今回の選挙結果を受けて政治家はそれぞれに、自分は国民の意志を承知していると宣言するだろう。必ずしも、有権者の深い思惑を探ることなく。そして、自分や自分の党の主張を推し進める材料として、今回の選挙結果を解釈するに違いない。

(英語記事 Local elections: Why has Labour lost seats?

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