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大鹿靖明著『ドキュメント福島第一原発事故 メルトダウン』(講談社刊)

大鹿靖明著『ドキュメント福島第一原発事故 メルトダウン』(講談社刊)は、久しぶりにジャーナリストの仕事を読ませていただいた気のする作品だ。

福島第一原発事故以降、低線量の放射線が人体に与える影響をどう評価したらよいか、専門家の意見も分かれるなど、情報の峻別はひじょうに難しくなった。

被ばくの問題だけでなく、事故後、政府の発表への信頼性、そして、それを報じる新聞・テレビの情報に対しても、何かしらの意図が含まれた情報であるのか、また、その意図が含まれているとしたらその意図を意図として見破ることのできないまま情報がたれ流されているのか。それとも重要なことは伝えられていないのか等々、不信の連鎖の中に置かれた1年ではなかったか。

ジャーナリズムの意義は、速報性とともに、事件の検証性でもある。
朝日新聞の記者で雑誌『アエラ』編集部の大鹿氏の仕事は、後者、すなわち、事件の検証において重要な意義を持つものだと思った。

タイトルに「メルトダウン」と付けられている。もちろん、それは原発事故そのものを指すが、それだけではない。
「メルトダウンしていたのは、原発の炉心だけではないのだ。原因企業である東電の経営陣たち。責任官庁である経産省の官僚たち。原子力安全委員会や保安院の原発専門家たち。原発責任企業の東電に自己責任で2兆円も貸しながら、東電の経営が危うくなると自分たちの債権保全にだけは必死な愚かな銀行家たち。未曾有の国難にもかかわらず、正気の沙汰とは思えない政争に明け暮れた政治家たち。いずれもメルトダウンしていた。エリートやエグゼクティブや選良と呼ばれる人たちの、能力の欠落と保身、責任転嫁、そして精神の荒廃を、可能な限り記録しよう。それが私の出発点だった。」(同書「あとがき」より)

実際、全3部、14章で構成される本書のうち、原発のメルトダウンに関する部分は第一部「悪夢の1週間」の第1章から6章までで、全体の3分の一ほどである。昨年3月以降、12月までに、125人の関係者に接触を試みる中で得られた証言や資料をもとに可能な限り実名で記録している。
日本の政治の中枢で行われる「ベスト&ブライテスト」による意思決定ではあるが、実は省庁間の既得権争い(縄張り争い)のため意図して歪められた情報をもとに行われることがある。
そして、政権の中枢である官邸と、そこに働く総理秘書官と出身官庁(おもに経産省)の思惑から総理に対して送られる「罠」情報。
総理の菅直人が、総理に対してそんなことをするのか、と経産省官僚をいぶかるところがある。

いま、「再稼働」を急ぐ政治があるが、意思決定の仕組み自体が「メルトダウン」状態から脱したものとは思えない。

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