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「中学受験で親子が壊れた……」を回避するため、親がもつべき“5つの心構え” - おおたとしまさ

 新学期が始まった。中学受験の勉強のペースもシフトアップする時期だけに、焦りや不安も高まりやすい。悪循環に陥らぬよう、注意が必要だ。

【ポイント整理】中学受験生の親がもつべき“5つの心構え”

 中学受験は両刃の剣。親子でかけがえのない経験ができる一方で、やり方を間違えると親子を壊す凶器にもなる。中学受験の最悪のシナリオとは、全滅することではない。途中で子供や親が壊れてしまうことだ。

 親子を壊すいちばんの原因となるのが、「全滅したらすべてが水の泡」だとか「第一志望に合格しなければ意味がない」というような「ゼロか百か思考」。ちょっとでもつまずいたとたんに不安に振り回されるようになり、冷静な判断ができなくなる。

 世間一般にある「中学受験残酷物語」のイメージは、このような親子から生まれたのではないかと思われる。でも実際は中学受験が悪いのではなく、やり方が悪いのである。


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全滅しても「中学受験をやって良かった」と思える境地

 私が提唱する「中学受験必笑法」の奥義は、極端な言い方をすれば、「たとえ全滅しても『やって良かった』と思える境地」に至ること。それができれば逆に、全滅のリスクは限りなくゼロに近づけることができるし、「納得できる合格」を手にしてその学校に堂々と通い、「この学校に来られて本当に良かった」と思うことができるようになる。そうすればその中学受験は大成功といっていいと私は思う。

 これまで多くの中学受験塾講師、中高一貫校教員、そして中学受験の親を取材してきた経験から、ここでは、中学受験を大成功で終えるために重要な、親の心構えを5つ紹介していこう。

「第2志望でも納得できない病」にご用心

 中学受験において、第一志望に合格できるのは3割にも満たないといわれている。まずはその事実を冷静に受け入れよう。つまり(1)努力が報われないこともあるという現実を受け入れるのだ

 自分の努力の結果が親を落胆させるものだったとしたら、子供の自己肯定感は確実に下がる。それが中学受験の大きなリスクのひとつである。逆に言えば、親が、結果よりも子供の努力そのものを評価し、たたえることができれば、子供の自己肯定感の低下は阻止できる。

 第1志望に大きな憧れを抱き、受験勉強のモチベーションにすることは大切なこと。でも、第1志望しか見えなくなると危険である。失うものが大きいと感じれば感じるほど、不安も大きくなり、その不安に自分自身が振り回されてしまうからだ。

 これを「第2志望でも納得できない病」という。そして、その病に罹りやすいのは、受験生本人ではなく、親のほう。それが、中学受験で親子が壊れ自滅する、典型的なパターンである。だから(2)「何が何でも」というこだわりを捨てる勇気をもつ

 小学4年生で塾に通い始め、小学校では習ったことのないような難問にもあきらめずに取り組むようになる。テストの結果に一喜一憂し、「次はもっとがんばるぞ!」などと目標を立てたりするようになる。親の期待だってひしひしと感じている。「親を喜ばせたい」という気持ちも当然もっている。しかし、親が「結果がすべて」と思っていたら、これらの成長は合格という形でしか報われない。

「いま、ここ」での子供の努力と成長に目を向け、励ますことを、中学受験を志す子の親は忘れてはいけない。逆にそれさえ忘れなければ、合否が怖くなくなるはずだ。「成績が上がってほしい」と切実に願う一方で、「成績が上がらなくても、この子が精一杯がんばって力を出し切れるのなら結果はどうでもいい」と心の底から思えるようになる不思議な体験をするはずなのだ。

 それはすなわち、ありのままの子供を受け入れられるようになるということ。それが、親子で中学受験を経験することの最大の効能だと私は考えている。(3)受かった学校が最高の学校だと信じるのだ

どんな成績の子にも必ずその子なりの成長がある

 ひとはそれぞれ、生まれつきもっている才能が違うといえば違う。そしてそれらは一つのモノサシで優劣をつけ、並べられるものではない。マラソン選手と、短距離走選手と、どちらの運動能力が高いのかと問われても、それを比べるモノサシがないのと同じである。だからこそ(4)わが子の才能を最大限に評価するモノサシを持つ

 一般的なペーパーテストの点数に表れる「学力」とは、記憶力、思考力、表現力など、実はさまざまな個別の能力の最大公約数的な数値である。バランスがとれている子供のほうが高く出る傾向がある。逆に、どこか一部が天才的に突出していても、テストの点数には表れにくい。

 であるならば、親がまずすべきことは、わが子の才能を最大限に評価できる独自のモノサシを持つことだ。毎日コツコツがんばる力、良くない成績にも凹まない明るさ、難問にも果敢に食らいつくガッツ、自分が勉強で疲れているのに親のことまで気遣う優しさ、つらいときにはつらいと言える素直さ……。

 よその子に負けない才能をたくさん見つけ、中学受験という機会を通してそれをさらに伸ばしていることに常に注目してあげよう。そうすれば、よその子と比べたくなる気持ちも和らぐはずだ。

「第1志望以外はすべて第2志望」

「第2志望合格ならまだいい。第3志望もダメ、第4志望もダメとなったらどう考えればいいのか」という指摘もあるだろう。これにはちょっとしたコツがある。(5)第1志望以外はすべて第2志望と考えるのだ

 文化祭やオープンキャンパスに参加して、各学校のいいところをたくさん見せれば、子供には偏差値表など見せなくてもいい。「ぜんぶ受かっちゃったらどこに行くか迷っちゃうね」などとのんきなことを言っていればいいのだ。

 実際、私はこれまでたくさんの学校を取材してきた。その経験から断言できる。長い歴史のなかで生き残ってきた私立の学校は、総じてどこの学校も恵まれた環境であり、いい学校。偏差値にして5や10の違いはなんてことない。

「これからはグローバル。世界のどこへ行っても通用する人間にならなければいけない」と言われているにもかかわらず、狭い日本の一部地域に密集する中高一貫校のなかで「こっちの学校はいいけれど、この学校じゃダメ」だなんて言っているようでは、それこそ先が思いやられるというものである。

約300の学校から子どもに相応しい学校を見つける

 中学受験とは、大学進学から逆算してするものではなく、思春期という多感な時期を過ごす環境を自分で選ぶためにすることだと私は思っている。

 地元の公立中学の水がその子に合っているのならラッキー。中学受験などせずに、その中学に進めばいい。しかしそうでないのなら、中学受験という選択には、自らに合う水を求めるという意味があるといえる。

 大学進学実績が良くて偏差値も高い学校には、本当にいい学校が多いのは間違いない。しかし、大学進学実績や偏差値だけで学校を選ぶことは、年収や肩書きだけで人間を評価するようなもの。浅はかだ。

 そのような考え方では、もっと大学進学実績が良くてもっと偏差値が高い学校があったら、常に「自分は負けている」と感じることになる。常に他人と比較することでしか自分を評価できず、いつまでたっても一人の自立した人間にはなれない。教育効果としては最悪だ。

 さらに言うならば、もし“いい大学”に行くことが至上目標であるのなら、いっそのこと学校なんて最初から通わず、大学受験対策に特化した塾や予備校に通い詰めたほうが効率がいい。そこで中高6年間、毎日入試対策ばかりしていれば、大抵の大学には合格できるはず。

 しかしそんなことをして何の意味があるのか。そう考えてみると、“いい大学”への進学を目的として中学受験をすることや学校を選ぶことが、いかにナンセンスであるかがわかるのではないだろうか。

 ましてや親の見栄のために、偏差値の高い学校に子供を通わせようとすることなど愚の骨頂。子供は親の成果物ではない。

 首都圏には約300の私立中高一貫校がある。さらに国立、公立の中高一貫校もある。現在、首都圏の中高一貫校は、それらすべてを合わせて巨大な1つの「個性×習熟度」別の教育システムになっていると私はとらえている。

 そのなかに必ず、完璧とまではいかなくても、子供が生き生きと思春期を過ごすことのできる学校が見つかるはず。そして中学受験勉強から中学入試本番に至るそのプロセスそのものが、その子が通うべき学校にたどり着くための巨大装置なのだ。その結果にいいも悪いもない。

 わが子がわが子なりに努力を続け、本番でもそれなりに力を発揮することができれば、必ずわが子に合った学校にたどり着けるようになっている。無理したり、焦ったりする必要は全然ない。

(おおたとしまさ)

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