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過去の都政より圧倒的にまし 東京都長期ビジョンを読み解く!その68

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西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・小池知事のアイデア、発信力、世論把握力に評価と批判。

・都庁内「コミュニケーション不全」が「思い付き予算」に?

・過去の都政よりは圧倒的に「まし」。知事は指導力発揮を。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45582でお読みください。】

■ まだましの都政?

平成31年度予算をめぐる都議会での混乱、自民党の二階幹事長が全面的に協力すると言及するなど、小池都政は揺れている。今現在、多くの都民の「期待」からは遠く離れてしまった感もある。

しかし、客観的に見て都政のすべてが公開され、ブラックボックスが消え、既得権益にだけ利益を生むような「無駄な」事業が消え、都議会の古い体制が変わる・・・ということは理想ではあるが、そう簡単にはいかない。

なぜかというと、相手がいるからだ。自分の利益・利害のために政治家に要求する人、代弁する人、「これくらい当然でしょ」「自分だけよければいい」と好き勝手に特権や利益を享受したりする人、未来のことより自分の持ち分にしか興味がない人、フリーライダーする人も数多く存在するものなのだから(自覚しているかは別にして)。

なので、改革はそんなに簡単なものではない。公約の達成には程遠いが、それなりに事業化されているし、目標達成に向けて頑張っているようにも思える。

▲写真 東京都議会議会棟(筆者撮影)

都政改革本部での取り組みと成果政党復活予算の廃止受動喫煙対策都民ファーストの会の公約達成度の公表LGBTへの差別を禁じる人権尊重条例制定ペット殺処分ゼロなどを実現してきた。なかでも殺処分ゼロはその数字が下落傾向にあったとはいえ、目標年次を前倒して実現したことは大変評価できる。

▲出典 都民ファーストでつくる「新しい東京」~2020年に向けた実行プラン~概要版、P20より

専門家としてみると、「何とかゼロ」といった政策が実現されていないこと、新規の事業をやりすぎていて空回りしているようにも思えるが、以前の「なんだかよくわからない都政」ではなくなったことも確かだ。

■ 小池都知事のリーダーシップは?

小池都知事のアイデア、発信力は旧来型の政治家とは違い、センスを感じさせてくれることも多い。世論が求めているものは何であるのか、把握する能力とキャッチフレーズで打ち出す部分はさすがである。スピーチ力・プレゼンテーション力は洗練されていると感じるし、専門家からの評価も高い。

しかし、批判も多い。「進め方が独善的」、「職員を信用していない」といった声は内部からもチラホラ。また、音喜多駿前都議会議員は、意思決定の過程が「ブラックボックス」と言っていた。確かに彼がそう言うのも納得できる。

しかし、その言葉を真に受けるのもどうかと思う。なぜなら、意思決定の判断は、そもそも言語化が難しい。その意思決定にしても、その理由、つまり、どのような基準で行ったのか、なぜなのか論理的な説明ができる人はそれほど多くはない。他方、思考のプロセスや議論の内幕をフルオープンにした場合、色々と難しい面もでてくるというのが「組織」でもある。その匙加減は難しい。

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とはいえ、筆者は長らく都知事のリーダーシップに対して疑問を持っていた。

「直感で決めた思い付きなので思考・検討プロセスはない、ロジックは曖昧」なのか。

「ロジックや基準はあるが、自分としては言いたくない」なのか。

どちらなのか、と。

正直のところよく分からないので、奥澤高広都議会議員(町田市選出)に聞いてみることにした。問題意識が高く、学ばせてもらうことの多い若手都議(一期生)。都民ファーストを辞めて新たな会派「無所属 東京みらいに所属している。

▲写真 出典:奥澤都議(筆者撮影)

筆者: 都政の最大の問題は?

奥澤都議: 知事の説明不足と都庁職員の過剰な忖度だと思います。理屈から入る都庁に対して、アイディアから入るのが知事のスタイルだと思います。 知事のアイディアは、的を射ているものが多いものの、理論的な説明をしないので、職員は理解できないというコミュニケーションの問題が発生しています。

筆者: コミュニケーションの問題ですか、、、それは驚きです。コミュニケーションはうまい人かと思っていましたから。都知事自身が、それぞれの事業や取り組みの本質的な意味がわかっていないかもしれませんね。例えば、部下から「具体的には?」「どういう意味」と質問をされても、深い考えがないので答えられない面もあると推察します。小池知事と議会とのコミュニケーションはいかがですか?

奥澤都議: そこが問題です。知事の頭の中にあることを噛み砕いたり、具体的な施策案を提案したりする役割が必要です。しかし、それを都民ファーストの会が十分役割を果たせていないと思います。公明党はとてもうまくやっているので、重宝されるのもよく分かります。

筆者: 確かに公明党の議員さんたちは優秀ですから理解できます。都庁内のコミュニケーションと同様ということですね。それが何を生んでいるのでしょうか?

奥澤都議:  お互い本質的な意図を理解しあえていないからズレが生じてしまう。お互いがお互いの理解を確認しないまま、話が進んでいきます。

その結果、結婚に向けた気運醸成のための動画(3,000万円)であったり、「アート&エコ風呂敷プロジェクト」日仏アーティストデザインのオリジナル風呂敷の展示、東京2020大会時に訪都する外国人旅行者等に配布する風呂敷を制作):4億1,713万円といった「思い付き予算」とよばれても仕方のないような予算がたくさんついてしまうのです。

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奥澤都議は都政の問題の本質を、都知事と都庁職員の「コミュニケーション不全」に課題があると考え、リーダーシップの在り方について問題意識を持っている。

■ 令和の時代に東京都知事は何を打ち出す?

実際、この国で、政治家のリーダーシップが具体的に語られることは意外にも少ない。どういった指示を出し、権限と責任を与え、進捗管理と状況確認を行う、などそのスタイルが論じられることはあまり聞かない。その意味で、小池都知事のリーダーシップやコミュニケーションのスタイルが語られることは少ないのも当然であろう。実際、今回調べてみたが、そうした記事はとても少ない。

課題が多いとは思うが、都知事や都庁はそれなりの頑張りをしていると思う。「なんとかゼロ」の政策はほとんどうまくいっているとは思えないが、過去の都政よりは圧倒的に「まし」である。やり方のレベルは別として、変えようとはしている。

小池都知事には、自分のリーダーシップの在り方を明確に打ち出し、発揮してもらいたい。特に、都知事は五輪・パラリンピックに歴史的意味づけを与えられる存在でもある。都庁職員や都議会議員の中には、経験に基づく知識や見識をもった人々がたくさんいる。深く話し合い、相互理解を深め、真剣に議論しあい、あたらしい価値のある意見や考えを作り出して欲しい。それが知事の言う「ダイバーシティ」であり「イノベーション」の価値ではないかと思う。

令和の時代の東京都知事のリーダーシップに期待したい。

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