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「筋トレ後にステーキ」は大間違いな理由

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タンパク質量はトレーニング内容によって変える

なお、ムーアらの報告はレッグエクステンションという「単関節トレーニング」によって得られたデータです。


庵野拓将『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』(KADOKAWA)

では一方で、スクワットやベンチプレスといった「多関節トレーニング」では、1食当たりのタンパク質摂取量は変わるのでしょうか?

この問いに答えたのが、スターリング大学のマコトンらの研究報告です。

20代のトレーニング経験者(平均体重70kg)を対象にして、スクワットやベンチプレスなどの多関節トレーニングを10回3セット、疲労困憊になるまで行わせました。トレーニング終了後、2グループに分け、一方はホエイプロテインを20g、もう一方は40g摂取し、3時間後と5時間後の筋タンパク質の合成率を計測しました。

その結果、40g摂取したグループのほうが筋タンパク質の合成率が増加していたのです。

ムーアらが示した係数を踏まえれば、体重70kgの20代の若者が必要とするタンパク質の摂取量は、平均値で16.8g、最大値でも21gとなります。しかし、マコトンらの報告では、同じ体重70kgの20代の若者でも、より激しい多関節トレーニングを行った場合は、40g摂取したほうが筋タンパク質の合成が高まっています。

これら一連の報告を受けて、現代のスポーツ科学やスポーツ栄養学では、タンパク質の摂取量はトレーニング内容の違いによって変わるとしているのです。

つまり、単関節トレーニングを行う場合は、ムーアらが示した係数を活用し、必要なタンパク質の摂取量(A)を割り出します。多関節トレーニングを行う場合は、トレーニング内容の違いを考慮した差分として、(A)に10g程度プラスする、という形です。

例えば、体重70kgの20代の若者がベンチプレス、スクワットなどの多関節トレーニングを行った場合、必要となるタンパク質の摂取量は、ムーアらが示した係数が示す摂取量16.8gに10gプラスした合計26.8gが、最適なタンパク質摂取量の目安となります。

筋肉を大きくするには「24時間」を意識すること

ここまで、1食分の最適なタンパク質の摂取量について考えてきました。しかし、筋トレによる筋タンパク質の合成感度の上昇は24時間継続しています。では、24時間あたりの最適な摂取量はどのくらいなのでしょうか?

参考になるのが、マクマスター大学のモートンらが2017年に報告した筋トレとプロテインに関するメタアナリシスです。報告では、24時間の最適なタンパク質摂取量の係数を導き出しています。

それは「24時間で体重1kg当たりの平均値1.62g(最小値1.03~最大値2.20)」というものです。例えば、体重70kgの若者であれば、24時間で平均値113.4g(最大値154.0g)が最適な摂取量になります。


では、「体重70kgの20代の若者」を例に、筋トレ後の24時間でのタンパク質の摂取パターンをシミュレーションしてみましょう。

まず、モートンらが示した係数で計算すると、24時間における最適なタンパク質摂取量は113.4gとなります。

一方、ムーアらが示した係数で計算すると、1食当たりの最適なタンパク質摂取量は16.8gとなります。さらに、一般的な筋トレは多関節トレーニングが中心となるため、ムーアらの単関節トレーニング由来の数値に10gをプラスし、1食当たりの摂取量は約27gとなります。

夕方にトレーニングを行った場合、その後の夕食で27gのタンパク質を摂取します。さらに、寝る前にプロテインで35gを摂取して、翌日の朝食と昼食に27gずつ摂取すると筋トレ後の24時間におけるタンパク質摂取量は116gとなります。


たとえば、牛ヒレステーキ(100g)に含まれるタンパク質は約21gなので、24時間で約6枚も食べる必要があります。筋トレのたびに食べるのは難しいので、プロテインなどタンパク質を効率よく摂取できる食品を利用することになるでしょう。

モートンらが示す係数、ムーアらが示す係数で若干の差異はありますが、こうした現代のスポーツ科学とスポーツ栄養学が示すエビデンスを活用すれば、1食当たり、さらに24時間の最適なタンパク質摂取量を導き出すことができます。

筋トレの効果を最大化させるためには、筋トレ後の「24時間」を意識して、自分に合ったタンパク質の摂取量を摂取していきましょう。

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庵野拓将(あんの・たくまさ)
理学療法士、トレーナー、博士(医学)
大学院修了後、大学病院のリハビリセンターに勤務。けがや病気をした患者やアスリートのトレーナーとして、これまで延べ6万人の体づくりに携わってきた。大学病院では、世界最先端の研究成果を現場でのトレーニングにフィードバックするため、研究発表、論文執筆も行っている。筆名・庵野拓将として、筋トレ、スポーツ栄養学をはじめとする最新の研究報告を紹介するブログ「リハビリmemo」を主宰。

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(理学療法士 庵野 拓将)

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