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【読書感想】観光亡国論

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観光亡国論 (中公新書ラクレ)
作者: アレックス・カー,清野由美
出版社/メーカー: 中央公論新社
発売日: 2019/03/07
メディア: 新書
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Kindle版もあります。

観光亡国論 (中公新書ラクレ)
作者: アレックス・カー,清野由美
出版社/メーカー: 中央公論新社
発売日: 2019/04/26
メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
右肩上がりで増加する訪日外国人観光客。京都をはじめとする観光地へキャパシティを超える観光客が殺到し、交通や景観、住環境などでトラブルが続発する状況を前に、東洋文化研究者のアレックス・カー氏は「かつての工業公害と同じ」と指摘する。本書はその危機感を起点に世界の事例を盛り込み、ジャーナリスト・清野由美氏とともに建設的な解決策を検討する一冊。真の観光立国を果たすべく、目の前の観光公害を乗り越えよ!

日本を訪れる外国人観光客は、どんどん増えてきています。

日本の魅力が再発見された、とか、政府の努力のおかげ、というのもあるのでしょうけど、中国をはじめとするアジアの国々の経済力が上昇してきたことにより、日本が彼らにとっての「行きやすい外国」になったのが大きいのです。

2011年の訪日外国人(インバウンド)の数が622万人だったのが、2018年は3000万人を突破することが確実視されているというのですから、これはもう「激増」ですよね。

観光客の増加は経済的な効果を生み出しますし、観光業というのは、これから人口減にさらされ、国内消費が落ち込むことが予想される日本にとっては、重要な産業となっていくはずです。

その一方で、急激な観光客の増加で、地元の人たちの生活が脅かされたり、儲かるのはツアー会社だけ、というような状況もみられているのです。

著者は「観光公害」の例として、まず、京都をあげているのですが、僕も何年か前に仕事で京都を訪れた際に、あまりの人の多さに辟易したことがあります。

道も観光地も人であふれていて、常に花火大会の帰り道のような混雑で、それこそ、お寺や神社を観に来たのか、人を見に来たのかわからない。僕が子どもの頃(といっても、30年くらい前ですが)に修学旅行で来たときの京都は、もっとのんびり銀閣寺を眺めることができたのに……

それでも、観光客が多いほうが良いだろう、と考えがちなのですが、必ずしもそうではないみたいなんですよね。

観光公害は京都だけでなく、世界中で問題になっている、きわめて今日的な社会課題でもあります。

「観光立国」の先駆けヨーロッパでは、バルセロナ、フィレンツェ、アムステルダムといった、世界の観光をリードしてきた街を中心に、「オーバーツーリズム(観光過剰)」という言葉が盛んにいわれるようになり、メディアでは「ツーリズモフォビア(観光恐怖症)」という造語も登場するようになりました。

ちなみに「オーバーツーリズム」という言葉は、2012年にツイッターのハッシュタグ「#overtourism」で認知されるようになったものですが、現在では国連世界観光機関(UNWTO)が、「ホストやゲスト、住民や旅行客が、その土地への訪問者を多すぎるように感じ、地域生活や観光体験の質が、看過できないほど悪化している状態」と、定義を決めています。

この定義では数値ではなく、住民と旅行者の「感じ方」を重視しているところが特徴です。すなわち、多くの人が「観光のために周辺の環境が悪くなった」と思う状況が、オーバーツーリズムなのです。

観光による地域活性の”優等生”であったバルセロナやフィレンツェですが、今では世界中からやってくる観光客が、京都以上に住民の生活を脅かすようになっています。

中でも、現代ならではの課題の筆頭が「民泊」です。有名な観光地では、民泊として運用することをあてこんでマンションが乱造され、相場よりもさらに高い価格で取り引きされます。民泊バブルが起こった結果、周辺の地価・家賃が上がり、もとからいた住民が住めなくなってしまっているのです。

民泊に泊まる客の中には一部、道端で飲食をする、隣の敷地内に入る、ゴミを始末しないといった近隣への迷惑行為を行う人が見られます。しかもそのような旅行者が短期間滞在してトラブルを起こしても、持ち主が不在で連絡の取りようがなく、問題は未解決のまま悪循環に陥りがちです。

また、世界中どこでも、観光客は大きなスーツケースを持って移動します。それによって電車やバスが混み合うことに加え、彼らがガラガラと引きずるスーツケースの車輪は、案内サインが書かれている駅構内の床やプラットフォーム、舗装路、そして車両を傷めます。それらのメンテナンスは受け入れ側が担うしかなく、住民にとっては、税金などによるコストを負担させられるとともに普段の足も邪魔されるという、何重もの理不尽状態を生み出しています。

地元の人たちにとっては、観光客が押し寄せてくる状況というのは、けっしてプラスの面ばかりではないのです。

観光地だからといって、みんなが観光客相手に商売をしているわけではないでしょうし。

プラスの面ばかりではない、どころか、家賃が上がったり、道がずっと混雑していたり、観光客に対するインフラのコスト負担を求められたりもします。

とはいえ、今の日本で「観光税」的なものを主張すると「そんなことをしたら、観光客が減るじゃないか!」という業界からの反発が強いし、観光客からも反対の声があがります。

著者は、「観光資源を守り、本当に興味がある人たちに満足してもらうためには、ある程度の負担を観光客に求めるほうが、合理的ではないか」という提言をこの本のなかで何度も繰り返しているのです。

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