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- 2019年05月02日 07:13
超大型連休で“不登校の兆し”を見つける鍵は、休み中と休み明けの変化
2/2「休みたい」は最後のSOSのことも
一方で「休みたい」と言葉にする子もいるそう。これは子どもから出す最後のSOSだと石井さんは言います。「たとえて言うなら、110番や119番にかけるような気持ちで、決死の覚悟で発したSOSの言葉です。そのときは『ドクターストップ』を出すような気持ちで、一にも二にも学校を休ませてあげてください」
しかし中には、連休明けでなくてもしばしば「行きたくない」と言っている場合もあり、「ちょっと頑張れば慣れるはず…」と無理に登校を促すべきか迷う場合もあるかもしれません。
判断に迷う場合は、専門家のいる相談機関をたよることもひとつの手段だと石井さんは言います。(※相談機関は文末参照)。学校の先生は、登校できた子どもへの指導はできても、不登校に関する知識がじゅうぶんでないケースが多いこともあるためです。
「即日休ませるとふたつのパターンに分かれると思います。次の日にはぽろっと学校に行けるパターンと長期の休みになるパターンです。タレントの鈴木奈々さんは、前者のパターンで、学校に行きたくないと親御さんに伝えたときに『無理しなくていいよ』と言われ、気持ちが楽になって、次の日から学校に行けるようになったということでした。
もうひとつのパターンが長期の休みになるケースです。保護者としてはやきもきすると思いますが、その休んでいる期間が休養の必要な期間だと思います。決して保護者が『休んだら』と言ったから休むことになったわけではないので、見守ってあげてほしいと思います」

「わかった」 その一言に救われた過去
ご自身も中学2年からの不登校経験がある石井さん。不登校のときに周りからかけられたうれしかった言葉、逆に辛かった言葉についてもお聞きしました。「学校に行きたくないと親に言うまでは、自分の気持ちにさえ気付いていない状態でした。それまで苦しい、辛い、死にたいと思うことはあったのですが、まさかそれが学校のことだとは自分で気付いていなくて。行きたくないと宣言したとき、感情があふれ出して号泣してしまったんです。そのとき母が『わかった』とだけ言って、深く詮索しなかったこと、否定しなかったことに救われました。保護者以外の人でも「わかった、無理しないで」と受け止めてくれると、本当に傷が浅くすむと思います。
辛かったこととしては、『今がんばって学校に行けば、乗り越えて自信になるよ』というような言葉です。学校の先生でも、ちょっと無理をさせてでも、乗り越えさせて自信をつけさせるという方もいますが、これは間違いだと私は思います」
学校に行きたくないという言葉を受け入れてくれた母親でしたが、不登校中は関係が悪化したこともあったとのこと。
「長く不登校を続けていて、親子関係が泥沼のようなときもありました。でもそれを経て、関係が再構築されたような気がします。親も『生き直しの時期だった』と言っていました。勉強面を心配する保護者が多いかもしれませんが、一日も登校しなくても学校長の判断によっては小中学校を卒業できるケースもあります。私は学校に行っていた時期のダメージが大きすぎて、何もやる気が起きず、自宅学習もほとんどしていません。それでもこうやって生きていくことができていますので、過度に心配をしなくてもいいと思います」
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保護者の言葉がプレッシャーとなり、結果的に先に進めないケースも近くで見てきたと石井さん。
「私は6年間フリースクールに通っていたんですが、そのときの友人で、保護者から『早く勉強しなさい、それが嫌なら働きなさい』とすごく言われていた人がいました。彼は『俺は今度高校に行くんだ』、『勉強するんだ』と言い続けていました。一見とても前向きな言葉に思えますが、結局彼はただただ今を否定することになって、休養することも、前に進むこともできなかった。今を犠牲にして、未来に目を向けることが、プラスになるとは限らないと私は思います」
「学校に行きたくない」は異常ではない
「たとえばある国のテレビの視聴率が100%だったり、選挙である候補者への投票率が100%だったりしたら、『それって異常では』と皆さんは気付くはずです。人間は本来、多様なものですから。それなのに、日本の学校在籍者数は100%であるべきということは、異常だとされないことがほとんどです。それどころか、学校に行けない・行きたくない1%の存在を異常だとして、しかも悩んだ子どもたちが自殺してしまうなど、死者まで出している。学校の在り方について考えなくてはならないときが来ていると私は思います」そもそも学校がもう少し柔軟な場所であればいいのではないかと、石井さんは疑問を呈します。
「本当は学校以外でも生きていける場所があるのですから、子どもを学校に縛り付けなければ、苦しむ子も少なくなるでしょう。いじめもなくなれば、子どもはもちろん先生も含めみんなが楽になるのではないでしょうか」
最後に当事者の保護者に伝えたいことを、お聞きしました。
「私自身が不登校だったときは、もう人生が終わったと思っていました。でもそんなことはないんです。不登校を経ても生きている人はたくさんいて、中川翔子さん、千原Jr.さんなど有名になった方だけでなく、幸せな大人として生きている人がたくさんいます。学校に行かなくても、その先の人生はあるんだと信じてもらえたらと思います。
なかには保護者に理解してもらえないという子どももいると思いますが、そういうときは相談窓口などを使って、だれかに自分の気持ちを伝えることが大切です。学校に行きたくないという人も、幸せになることはできます。不登校の人は、学校に行っていると自分が死んでしまうような感覚があって、自分が生きられる場所を探している人ですから。本質の幸せを目指している人だと私は思っています」
石井さんがおすすめする不登校の当事者やその保護者の相談窓口は下記の通りです。ひとりで抱え込まず、SOSを発することが大事ということなので、心当たりがある人はぜひ相談を。
■保護者や子どもの相談窓口
「子どもの人権110番」(法務省)
(電話0120-007-110 ※平日午前8時30分から午後5時15分まで)
■不登校の相談窓口
「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」(NPO法人)
(電話03-3906-5614)
■18歳までの子どもたちのための専用電話
「チャイルドライン」(NPO法人)
(電話0120-99-7777 ※年末年始以外の毎日 午後4時~午後9時)
(取材・文・写真:上野郁美)
石井志昂
『不登校新聞』編集長、不登校経験者
1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行なってきた。また、女優・故・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者に不登校をテーマに取材を重ねるなど、精力的に活動をしている。
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