記事

二階幹事長、「ポスト安倍」を画策(佐藤甲一)

今、権謀術数に長けた自民党の二階俊博幹事長の動きがおもしろい。3月13日には自転車の事故で車椅子生活となった自民党の谷垣禎一前総裁と会談、夏の参議院選挙に立候補し、政界復帰するよう要請した。

谷垣氏はリハビリに専念したいとして固辞したが、二階氏は会食の中で「セールスと交渉は断られたときから始まる」と述べ、諦めていない。昨年谷垣氏は安倍晋三総理と会談した際にも参議院選挙立候補を断っており、二階氏からすれば一度は断られるのは織り込み済みだろう。

永田町の中では谷垣氏が比例区から出馬すれば参議院選挙の目玉となり、自民党の得票の増加が期待できるとの観測が広まっているが、二階氏はその程度の思惑で動くほどの「ボンクラ」ではない。二階氏は前日の12日には安倍4選の可能性に触れた。しかしこの発言には含みがあり、「余人をもって代えがたいということになれば」という条件付きだった。言い換えれば安倍総裁に代わるような人物がいれば4選はない、ということにもなる。

党内には岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長ら「ポスト安倍」を狙う人材があるにはあるが、今ひとつ党内の支持は広がりに欠ける。しかしもし、谷垣氏が政界復帰し現職議員になれば、その人格識見、実績を考えるとにわかに「総裁候補」に祭り上げられ、安倍政治に飽き始めた自民党内で支持が広がる可能性は少なくない。安倍総理に代わる人物こそ、谷垣氏というわけだ。

二階氏がこうした動きを進めるのは今の安倍政治への不満が底流にあると言っていいだろう。安倍総理個人に対する評価はあったとしても、安倍一強政治の下での自民党議員の「ていたらく」には相当の危機感があるようだ。

 国民民主党と立憲民主党の骨肉の争い、有権者の野党不信などが複合的に重なり、今のところ自民党が政権を失う心配はない。こうした緊張感の欠如が選挙など低調な党活動に結びついている。旧民主党の細野豪志衆院議員を派閥に入会させ、細野氏の選挙区(静岡5区)に派閥の現職議員を抱える岸田政調会長との間で軋轢を生んだと思えば、小池百合子東京都知事の再選に向けた出馬を「支援する」と表明するなど、党の束ねの幹事長が自ら自民党内に波風を立てている。

これらもすべて、安倍一強政治にあぐらをかき、「戦う姿勢」を失った自民党の地方支部に活を入れようとの思惑からだ。自民党は2017年秋に、2回続けて比例区で復活した衆議院議員について、次回の選挙では重複立候補を認めないことをルール化した。

一方で大阪府知事選に俳優の辰巳琢郎氏擁立を企て、大阪維新の会との激突を辞さない姿勢は、憲法改正の思惑から日本維新の会との関係を重視し、国政選挙における重要なパートナーの公明党を「ないがしろ」にしかねない安倍総理や菅義偉官房長官への「警告」とも受け取れる。

考えれば小池都知事を自民が支援すれば一番胸をなで下ろすのは公明党である。二階氏の行動は国政選挙をどう戦うかという観点から見れば筋が通っている。谷垣氏の参議院選挙出馬があるのかないのか。安倍総理には「4選の可能性」をちらつかせ、かたや新たな「ポスト安倍」誕生の画策を進める二階氏の奸智に長けた動きから目が離せなくなってきた。

(さとう こういち・ジャーナリスト。2019年3月22日号)

あわせて読みたい

「二階俊博」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。