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エンゲル係数でも忖度か(鷲尾香一)

「毎月勤労統計」の不正調査問題に端を発し、大きな社会問題となった政府の不正統計疑惑。反省するどころか、総務省統計局がホームページ上で、これまでの「エンゲル係数」に対して、「修正エンゲル係数」なる数値を公表し、物議を醸している。 https://www.stat.go.jp/info/today/129.html

統計局では、エンゲル係数について、「エンゲル係数は、時代の変化の下で変わりゆく私たちの食やライフスタイル、そして社会経済や景気の状況など、家計を取り巻く多くのことを凝縮させ、一つの数値となって映し出してくれています」としている。

しかし、現在のエンゲル係数は、「食料支出の消費支出全体に占める割合であって、所得の増減とは直接関係ありません。したがって、所得が増加しても消費支出が減少した場合、食料支出に減少がなければエンゲル係数は上昇することとなります。この場合、『所得が高くなるにつれ、エンゲル係数は低くなる』というエンゲルの法則は成り立ちません」と指摘している。

つまり、「現在のエンゲル係数は時代の変化に対応していない」と言いたいようだ。

その結果として、「物価変動の影響を除去した実質食料支出の実質可処分所得に占める割合」を「修正エンゲル係数」として公表した。

エンゲル係数は、ご存知の通り「家計の消費支出総額に占める食料費の割合」を示す。家計の消費支出の中で、食料品にどの程度を使っているかを示すもの。そして、その割合が高ければ高いほど、食料品以外に支出を回す余裕がないため、生活水準が低い(生活が苦しい)となる。

このエンゲル係数が、第2次安倍政権に入ってから上昇している。2005年に2人以上世帯のエンゲル係数は22.9%と最低を記録し、その後は23%台で推移していたが、2013年から上昇を開始し、2016年には25.8%まで上昇、その後も高水準で推移している。

これは、アベノミクス政策によって、国民の生活が「苦しくなった」ことの証左とも言える。安倍晋三首相が自画自賛するように、失業率が低下し、名目賃金・所得が上昇しているのであれば、「エンゲルの法則」上は、エンゲル係数は低下しなければならない。

この点については、国会で野党が安倍首相を追及している。その時の安倍首相の答弁は、「(エンゲル係数の上昇は)物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」というものだった。

言い換えれば、総務省が「修正エンゲル係数」を作った理由である「所得が増加しても消費支出が減少した場合(安倍首相の言うところの食生活や生活スタイルの変化)、食料支出に減少がなければエンゲル係数は上昇する」ということになる。

そして、修正エンゲル係数は、アベノミクス政策以降も見事にエンゲル係数の上昇が抑えられた結果となっているのだ。

アベノミクスによりエンゲル係数が上昇したのではないかと問題視された途端に、それを否定するような「修正エンゲル係数」が登場することの摩訶不思議。そこには、安倍政権への“忖度”があるように思えるのは、筆者だけだろうか。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2019年3月15日号)

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