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「過剰な肉食」は、人類の安全を脅かす?ー日本人の3倍肉を食べるアメリカ人の肉消費を減らす方法

「商業的農業」は世界的な森林破壊を引き起こす主要因になっており、気候変動にもマイナスに働いている。これがまさに当てはまるのが大豆、パーム油(*)、牛肉などの生産だ。土地管理を誤るとどれほどの弊害を将来世代にもたらすのか、Inter Press Serviceが取材した。

*編集部補足
アブラヤシの果実から得られる植物油。ポテトチップス、カップラーメンなど揚げ物によく使われ、通常「植物油脂」と表記されている。熱帯の森林を切り開いて作られるため、世界的な消費量増の影響で、森林が驚異的なスピードで消える原因となっている。


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現代の農業システムによって飢えが阻止され、世界70億の人々が食べていけてるわけだが、その一方で、私たちの「食べ方」や食べものの「作り方」は、将来世代の食糧安全保障を脅かしてもいる。 2050年に世界人口は100億人に達すると見られている。それを踏まえると、食糧安全保障を確かなものにすることは、これまで以上に重要なテーマである。

しかし、現在行われている食料生産の方法では、世界で広がる環境悪化の最大要因となっているのだ。今のままの生産方法や消費パターンを続けていると、近いうちに地球の限界を超えてしまい、生存も繁栄もできなくなってしまうだろう。

Pixabay

学術雑誌『ネイチャー』に掲載されたレポート「持続可能性:フードシステムを環境の限界内にとどめておくための選択肢」(*)の共同執筆者の一人、マルコ・スプリングマンは言う。

「何の対策も取らない場合、恐ろしいレベルで地球の限界を超えてしまうことが分かっています」 *2018年10月10日掲載
「現在のフードシステムが土地利用を圧迫し、森林破壊を引き起こしています。森林は二酸化炭素を貯蔵する一方、野生種や生物多様性の宝庫でもあるので、木々伐採が過ぎると、生態系の制御システムが破壊されてしまいます」

世界の陸地の40%以上が農業用に転用または確保されてきたおかげで、すでに世界の森林の半分以上が失われているのだ。

Friday Phiri/IPS
コートジボワール共和国の最大都市アビジャンの郊外にあるプランテーン農場。現在の食料生産は、世界レベルで環境悪化を引き起こしている

「国連砂漠化対処条約(UNCCD)」には、商業的農業、とりわけ大豆、パーム油、牛肉の生産が主要因となっているとある。

アマゾン流域にその実例がある。木々が切り倒され、土地は牛の牧場や大豆栽培などの農業活動に転用され、その大半は食用よりも動物の飼料として使われている。現に、地球上の使用可能な陸地表面の半分は、家畜用または家畜用飼料の栽培に使われている。その土地を合わせると、北米と南米を合わせた面積に匹敵する。

さらに、肥料を集中的に使用することも土地の生産性を落とし、土地の劣化や砂漠化をも引き起こし、温室効果ガス(GHG)排出の大きな要因になっている。

Pixabay

フードシステムによって2010年だけで50億トンを超える二酸化炭素が排出されているのだ。明確な目標を定めなければ、フードシステムがもたらす環境影響は50〜90%高まり、「人類が安全に活動できる領域」を超えてしまうと推定されている。

スプリングマンは、環境の限界を超えないためには3つの意欲的な対策を取るべきと指摘する。技術改良をすることで持続可能な食糧生産を増やしていくこと、そしてさらなる耕作地への需要を減らしていくこと。そしてもう1つがより手ごわい対策、「植物ベースの食事への切り替え」だ。

「植物ベースの食事を増やしていけば、温室効果ガス排出を抑えられますし、バランスが取れ、健康にも良い。食事を見直すことで、土地利用にかかっている圧力を軽減できると考えられています」とスプリングマンは言う。

先述の『ネイチャー』レポートには、より健康的な食事に変えていくことで、温室効果ガス排出やその他環境への影響が30%近く軽減されたとある。

2018年過去最高を記録した北米の肉消費量、地球のためには84%減が必要

「EATランセット委員会(*)」の最新レポートでも、環境の持続可能性や公衆衛生のためには食事を見直す必要性があると強調されている。

* 英医学誌『ランセット』を中心とした、栄養や食に関する政策を研究する委員会。

「私たちが口にする食べ物やその生産方法が、人々およびこの地球の健康状態を決定づけます。なのに現在のやり方は、ひどくまずいものになっています」レポート共同著者の一人ティム・ラングは言う。

「世界的なフードシステムをかつてない規模で大幅に見直し、各国の状況に合わせて調整していく必要があります。これは前人未踏の取り組みで、簡単に解消できる問題ではありません。ですが、実現は可能です」

「健康的で持続可能な食事のために我々が考案した科学的な目標値があります。これが重要な指標となり、これからの動きを推進してくれるでしょう」

当委員会が推奨する「地球にやさしい食事」には、赤身肉の消費量を半分に減らし、野菜・フルーツ・ナッツの摂取を2倍に増やすこととある。 世界で最も肉の消費量が多い地域の1つは北米だ。2018年、アメリカ人の肉の消費量は過去最高を記録し、平均的な消費者で赤身肉と鶏肉合わせて222パウンド(約100kg)以上食べていた(※)。世界的な健康ガイドラインに従うならば、赤身肉の消費を今より84%減らし、豆やレンズ豆を今より6倍に増やさなくてはならない。

※編集部補足
日本人の肉類の消費は年間32.7 ㎏(農林水産省『平成29年度食料需給表』より)


平均的な消費者でも食生活を変えていける方策が必要

ビヨンド・ミート社やインポッシブルバーガー社(*)の成功に見られるように、北米でも植物ベース食品の人気は高まっている。だが食習慣を変えていくには、情報だけでは十分でないとスプリングマンは言う。
*どちらも、米カリフォルニア州に本部を置く植物由来の人工肉を製造・開発する食品テクノロジー企業。
Pixabay

「もちろん誰にだって(その気になれば)食生活は変えられますし、それができるのなら素晴らしいことです。でも、標準的な消費者でも実行しやすいものになっていないと、多くの人々は行動に移さないでしょう」

そこでスプリングマンが提案するのは、食品の価格に健康や環境に及ぼす影響コストを盛り込むこと。例えば、牛肉の価格は、温室効果ガス排出への負担となっていることを踏まえ、平均40%上乗せする、等だ。これにより政府は収入源を獲得できるので、より健康的な商品への助成など、他の分野にお金をまわすことができる。

消えゆく自然が物語っていること

さらにEATランセット委員会は、生物多様性を失わないこと、農地拡大で自然生態系を壊さないこと、肥料の改良、効率的な水利用の必要性も訴えている。

EATランセット委員会のリチャード・ホートン編集長は言う。

「当委員会が呼び掛けている変化は、表面的でもシンプルでもありません。複雑なシステム、誘因策、規制に焦点を合わせ、本腰を入れて取り組まねばなりません。私たちの『食べ方』を見直すうえで、コミュニティや政府がそれぞれのレベルで果たせる役割があります」

「自然との関係性に答えがあると思っています。地球そして身体に良い方法で食べることができれば、地球資源の自然なバランスを取り戻すことができるでしょう。今目の前から消えていってる自然こそが、人間と地球存続のカギを握っているのです」

By Tharanga Yakupitiyage
Courtesy of Inter Press Service / INSP.ngo

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