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車内販売「#シンカンセンスゴイカタイアイス」はなぜ硬いのか

新幹線車内販売アイスにスプーンを立てるアングルがSNSでは人気

 やわらかプリンやふわとろオムレツなど、近ごろの食べ物の流行は「やわらかい」ことが多い。ところが、新幹線の車内販売で食べられるアイスクリームは、すごく硬いことが理由で人気を集めている。ライターの小川裕夫氏が、SNS投稿でも「#シンカンセンスゴイカタイアイス」とハッシュタグつきで数多く投稿され人気を集める、新幹線の車内販売アイスクリームについてレポートする。

【写真】新幹線車内販売アイスクリームのラインナップ

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 ゴールデンウィーク到来。

 平成と令和にまたがる今年は、5月1日が祝日になる。大型連休を見込んで、早くも各地の観光地やレジャー施設が大々的にPRを繰り返している。移動手段になる鉄道でも、各社から企画きっぷの販売が予定されている。

 せっかく鉄道で移動するなら、車内で過ごすひとときも快適で優雅にと考える人も少なくない。スマホとフリーwi-fiを持ち込んで、映画を鑑賞する。新緑まぶしい車窓に目をやりながらのんびりと読書をする。車内では、人それぞれが考える贅沢な過ごし方がある。

 車内で過ごす至福な時間。とりわけ、それを左右する大きな要素に“食”がある。鉄道において、食と言えばすぐに思いつくのは"駅弁"だろう。

 最近は駅弁販売の競争が激化し、種類は充実している。その一方、地方駅の名物駅弁販売業者が店を閉めてしまい、地元ならではの味を楽しめなくなっている。一昔前だったら、食べ物の調達は鉄道乗車前の一連の儀式に組み込まれていた。

 駅弁販売業者を窮地に追いやったのが、駅前のコンビニやエキナカだ。いまや駅前にコンビニがあることは珍しくなく、エキナカにもレストランや売店が充実している。乗車直前に、そうした店で食べ物・飲み物を買い込めば、車内での飲食には困らない。

 コンビニやエキナカの伸張によって打撃を受けたのは、駅弁販売業者だけではない。新幹線や特急列車内での車内販売も、時代とともにサービスを縮小している。

 今年2月にJR東日本は一部の新幹線を除いて、車内販売の廃止・縮小を表明。この発表を受け、「楽しみにしている駅弁が車内で買えなくなる」といった悲痛な叫びが鉄道ファンや旅行好きの間に溢れた。

 JR東日本の発表は、あくまでもすべての車内販売を廃止するという内容ではない。しかし、今後もコンビニ・エキナカの隆盛は続くだろう。そうした情勢から、近い将来に新幹線から車内販売が全廃されてしまうという不安は拭えない。

 駅前にコンビニもあるし、エキナカでも買える。わざわざ車内販売で買う必然性はない。

 しかし、コンビニやエキナカでは絶対に代替できない食べ物が新幹線の車内で販売されている。“シンカンセンスゴイカタイアイス”の異名で知られる、スジャータスーパープレミアムアイスクリームだ。

“シンカンセンスゴイカタイアイス”は、呼び名の通りに驚くほどアイスが硬い。その硬さは、スプーンをさしこんでもアイス表面に突き刺さって立つほどだ。この硬さが話題を呼び、新幹線利用者から「乗ったら絶対に食べたい!」と熱く語られるようになった。最近では、ツイッターやインスタグラムなどのSNSで評判が拡散し、人気はさらに上昇している。

 製造元のスジャータめいらくは、コーヒーフレッシュをはじめ果汁飲料・野菜飲料の販売などで知られる。同社広報部の担当者は言う。

「スジャータスーパープレミアムアイスクリームは、通常のアイスクリームよりも空気の含有量を少なくし、アイスクリームの密度を高くしています。そのため、通常のアイスよりも溶けにくくなっています。そうした製法により、“シンカンセンスゴイカタイアイス”と言われるようになったんだと思います」

 また、徹底した温度管理も“シンカンセンスゴイカタイアイス”の秘密のひとつでもある。製造元であるスジャータめいらくが、温度管理に細心の注意を払っているだけではない。

 販売元であるJR側でも温度管理を徹底しているほか、“シンカンセンスゴイカタイアイス”のための工夫を凝らしている。東海道新幹線で車内販売を担当するJR東海パッセンジャーズ総務部の広報担当者は、こう話す。

「新幹線車内には、アイスクリームを保管する冷凍庫がありません。そのため、スジャータスーパープレミアムアイスクリームはドライアイスを詰めた保冷バッグに入れています。そのドライアイスによって、アイスが硬くなっています。これが奏功して、利用者から好評を得たようです」

 スジャータスーパープレミアムアイスクリームは、東京駅の新幹線ホームや埼玉県さいたま市の鉄道博物館などでも販売されている。しかし、これらで販売されているアイスと新幹線車内で販売されているアイスと比べると、まるで別物。ホーム売店や鉄道博物館で販売しているアイスは、硬さが物足りない。スプーンが立つほど硬くなければ、“シンカンセンスゴイカタイアイス”の真髄を味わうことはできないのだ。

 そうした事情もあって、『新幹線車内で食べたい!』というリクエストが根強くある。

 その硬さから注目を浴びる“シンカンセンスゴイカタイアイス”だが、決してウケを狙ったネタ商品ではない。その発端は「新幹線車内で食べるために高級感のあるアイス」というコンセプトから、スジャータめいらくとJR側とが共同開発をスタートした。そして、通常のアイスよりも空気の含有量を減らしたことで、濃厚な味わいになっている。

「スジャータスーパープレミアムアイスクリームは、JRの車内販売を想定して生産・販売しています。そのため、HPの製品紹介には掲載していません。また、通販にも対応はしていません」(めいらくスジャータ広報部)

 東京駅-新大阪駅間を結ぶ東海道新幹線では、“のぞみ”・“ひかり”・“こだま”の3タイプが走っている。そのうち、各駅停車タイプの“こだま”は「利用実態に合わせて、2012年3月をもって車内販売を終了した」(JR東海東京広報室)が、“のぞみ”と“ひかり”には車内販売が残っている。

 JR東日本が一部の新幹線で車内販売の取り止めると規模縮小を発表したが、JR東海は東海道新幹線の車内販売に対する方針を変更する予定はないという。つまり、東海道新幹線の“のぞみ”と“ひかり”車内では、引き続き“シンカンセンスゴイカタイアイス”を食べることができる。

 ゴールデンウィークに新幹線で出かける際、車内で“シンカンセンスゴイカタイアイス”の味だけではなく、硬さも存分に堪能してほしい。

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