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「酒に呑まれて人生を狂わす」芸能人の悲劇

■「酒を飲む」と「酒に呑まれる」

 「酒は百薬の長」とも言われ、「病は気から」の“気持ち”の部分を大きくする効果がある。理性を酔わせることで、気分が良くなり(ポジティブになり)、病を寄せ付けない、「酒は百薬の長」という言葉には、そんな意味も込められているのかもしれない。

 ところで、芸能界では麻薬だけでなく、酒で人生を狂わす人というのが定期的に出現する。飲酒運転で交通事故を起こし人生を狂わせる人もいれば、女性に破廉恥な行為をして人生を狂わす人もいる。これらは全て、お酒を飲んだから人生が狂ってしまったと言うよりは、お酒に呑まれてしまって人生が狂ってしまったと言っても差し支えないだろう。

 つい先日も、人気音楽グループのAAA(トリプルエー)のリーダーが酒を飲み過ぎて泥酔し、女性に暴力を振るい逮捕されるという事件があった。これも当の本人は全く記憶が無いということで、完全に酒に呑まれてしまった良い例だと思う。その代償として、芸能界の掟通り、無期限の謹慎処分を食らい、人生を狂わせるに足る痛ましい結果を招いてしまった。

 酒には理性を麻痺させる効能があるので、自らの理性の器の大きさを知った上で飲まなければいけない。ここまでなら大丈夫という自己のボーダーラインを知り、その範囲内でお酒を嗜むのが大人の飲み方だと言える。

 そういう意味で、酒を飲むのは、理性を少し酔わせる程度がベターだと言える。理性を少し酔わせて、ほろ酔い気分になるまでが“酒を飲む”という行為に該当する。しかし、その一線を大きく超えてしまうと、“酒を飲む”行為ではなく、“酒に呑まれる”行為になってしまい、主従が逆転してしまう。人ではなく、酒が主役となってしまい、理性ではなく人間そのものが、酒に酔わされてしまうという本末転倒な事態に陥ってしまう。

■泥酔状態は「我思わない、ゆえに我なし」

 酒に呑まれた人間は、制御するべき意識が消失するという意味では、本能のままに動く木偶人形と言ってもよいかもしれない。「我思う、ゆえに我あり」というデカルトの言葉に準えれば、「我思わない、ゆえに我なし」、つまり、疑うべき自分が存在しない状態だとも言える。

 こうなると、もう理性はどこかへ吹っ飛んでしまい、本人の意思とは無関係に恰も夢遊病者の如く本能の赴くままに彷徨うことになる。泥酔している当人にとっては全てが夢の中の出来事であり、その状態で車に乗車してしまえば交通事故を起こし、美しい女性が目の前にいれば、声をかけるだけでなく、抱き付いてしまうなどの欲望丸出しの破廉恥行為に至る場合もある。もちろん、本人は心を持たないマリオネット(操り人形)のように、何も覚えておらず、目が覚めた時には夢ではなく現実だったことが判明し、全てが後の祭りとなってしまう。

 泥酔して罪を犯した人間は、罪を犯した自覚が無いという意味では、冤罪の被害者にでもなった気分なのかもしれない。故意に罪を犯したわけではないと言いたくなる気持ちも解らないわけでもない。しかしながら、誰かに無理矢理に酒を飲まされたわけではなく、泥酔するまで酒を飲むと判断をしたのが、意識のある時点での自分自身であるのならば、世間からは「自業自得」という厳しい判決が下されることになる。

 「我思う、ゆえに我あり」という人間性が失われると、誰もが夢と現実の区別が付かなくなり、人生を狂わせる悲劇の主人公を演じることに繋がってしまう。「百薬の長」と言われる「お酒」も限度を超えると「麻薬」と化し「百の長」にも成り得る。

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