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学会発表が学会員オンリーであることの誤謬

感染症学会地方会に以下の要望と苦情を書きました。でも、これって感染症学会のみならず、日本の医学界のあちこちに偏在する悪習です。つい先日も公衆衛生学会が同じポリシーを持っていることを発見しました。しかも、1会員1発表に限る、だそうで、安売りの卵じゃないんだから、こんな無意味なルールは作らんでほしい。

現在あちこちで「働き方改革」真っ最中ですが、現実にはいかに残業代を払わずに残業してないふりをするか、みたいな姑息なことばかりやっています。一番大事なのは、「無駄と無意味を看破して修正できること」なんです。学会員オンリーみたいな無駄ルールをなくせば、無理やり「今年だけ」学会に入会みたいな手間を省けます。大学や学術界は本当に無駄が多い。郵便局に直接行かないと入金できない、メールで済む話をファックスさせる、手書きさせる、印刷してハンコ押せとかいう。そして、無駄無意味を指摘しても、修正できない。そりゃ、定時に帰宅できないに決まってます。

で、本件は感染症学会理事会にお図りいただけるようです。結果がわかったら、またお伝えしますね。

神戸大学の岩田健太郎(感染症学会評議員、化療学会会員)です。件名について苦情申し上げ、改善を促すべくメールをしたためました。

近年は地方会で発表することはほとんどなく、座長や講演でときどき参加するくらいでしたが、ちょうどよいデータがまとまったのと、この時期に適当な発表の場がなかったので貴会での発表を検討しました。感染管理看護師(CNIC)と共同でデータ収集と分析を行い、統計解析の専門家にご指導いただきながら、3名でまとめた潜在性結核治療効果の解析です。

ところが、
申込資格:共同演者を含め登録される学会の会員であることを要します。
     (日本感染症学会へ登録される場合は、全員日本感染症学会会員であること)

との表示をみて仰天しました。平成も終わろうというのに、貴会(本メールとHPを見る限りでは化学療法学会がどうなっているかは分かりません、)は未だに昭和でレトロな悪慣習を保持されていると知ったのです。

地方会で一回発表するためだけに共同研究者の看護師や統計家に学会に入れと要望するような不義理は私にはできません。正当な共同研究者である彼らを発表者から外すなどという不義理はもっとできません。

参考までに今年のID week(私はスケジュールが合わないのでこの会には参加しません)にはアブストラクトガイドラインに、

Authors do not have to be members of one of the four sponsoring societies (IDSA, SHEA, PIDS, and HIVMA) to submit an abstract.

と明記されています。彼我の科学や学術界に対する観点の違いが明らかです。今年の感染症学会総会をはじめとして、最近は日本の感染症界で夜郎自大な日本称揚の気運が高まっているようですが、内実がこの体たらくでは、いつまでたっても米国の学術界には追いつけはしないでしょう。

古典的な思想の進歩は弁証法で行われますが、弁証法とはディアレクティーク、すなわち対話です。他者との対話があるからこそアウフヘーベンは可能となり、学問は進歩します。同じ価値観、同じ世界観を共有する井の中の蛙以外はお断り、な学術サロンでは学問は滅びます。学会員以外の発表こそ積極的に受け入れてこその学問であり、科学です。

むろん、方便として、学会員を増加、保持するためにこのような措置をとっているのは承知しています。で、あれば、学会員と非学会員の参加費を差別化すればよろしいのです。国際学会は概ねそうしています。金銭的な問題はこれにて克服し、自由で活発な議論が行われるサロンとして感染症学会を宣伝し、正々堂々と学会員を増やすよう仕向ければよいのです。発表資格を人質に取るなどという卑怯なやり方は、昭和の時代に終わりにすべきだったのです。

日本の医学界には貴会同様の措置をとっている学会が多いことも承知しています。しかし、子供ではないのですから、「周りもやっているから」は正当な理由にはなりません。悪習を真似するのではなく、誇り高い感染症学会、化学療法学会として、毅然とした態度を取り、朱に交わらずに諸外国にも自慢できるような学会運営をしてこそ、初めて「称揚」の価値は生まれます。やはり「井の中の蛙」でサロン内だけでシュプレヒコールを上げるような、みっともない態度を我々は取るべきではありません。

地方会のみならず、感染症関係の学会がより他者に開かれ、よってよりまっとうな科学的議論が展開され、本当の意味で、ポスターだけではなく、ちゃんと発展することを学会員として心から希望しつつ、要望と苦情を申し上げる次第です。

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