- 2019年04月25日 12:00
ビール4社の業績はM&Aで明暗、海外ライバル企業の売上規模に迫れるか?
2/2■ビール各社の主要指標
大型買収は、「のれん」や「有利子負債」「支払利息」といった科目に影響する。のれんは買収額と買収先企業の価値との差額を示しているといっていいだろう。アサヒとサントリ ーの高額なのれんが目立つ。先ほどの表を以下に再掲する。
買収資金は借入金などでまかなった。そのため、返済が求められる両グループの有利子負債は1兆円を超す。ただし、年間支払利息が200億円台のサントリーに対して、アサヒグループは50~60億円台である。返済期間の長短があって、長期借入金の利息がサントリー1.88%、アサヒは0.4%という違いなどからきているようだ。
「法人所得税」は、利益に応じて課せられる。表ではキャッシュフロー計算書における計上額を表示した。「株式配当金」も同様である。キリンは、株式配当金が法人所得税を上回った(2018年)。
酒税はビールなどの出荷・販売にともない発生する。基本的に、売上高に含んで計上する。アサヒの酒税が突出しているのは、「スーパードライ」など税率が高いビールの比重が高いからだ。そのビールにかけられている税率が引き下げられ、税率が安い発泡酒や第三のビールが引き上げられる予定になっており、アサヒにとっては有利に働くという見方もできるだろう。
“トップ水準”といわれるビール各社の従業員給与も見てみよう。4社とも持株会社に在籍する少人数の平均値であり、ほぼ実態を示していといっていいだろう。事業子会社の営業職などの従業員は40歳前後で年収が1000万円を突破する、と推定していいようだ。もちろん、業績連動型の報酬体系になっているため格差があることはいうまでもない。
売上高と同じように2008年との比較はどうか。キリンは983万円から約175万円のアップである。サントリーは904万円から1146万円、アサヒは892万円から1093万円への増額だ。サントリーとアサヒは持株体制に移行する前で、2008年は両社とも4000人前後の平均額のため単純に比較はできないが、上昇していることは確実だろう。サッポロは横ばいでの推移である。
経営陣の年俸はどうか。キリンでいえば、2008年以降、1度だけ4000万円台があったが、おおよそ7000万円台での推移。2017年は平均額が1億円を突破、2018年は9000万円台である。
日産自動車(7201)を率いていたカルロス・ゴーン氏の逮捕劇で話題になったように、2010年から年俸1億円以上の経営陣について個別開示がされるようになっている。それによれば、キリンは毎年のように1億円以上の社内取締役を輩出。年俸1億円以上の社内取締役がいなかったのは赤字決算だった14年のみである。
その14年から1億円プレーヤーが在籍するようになったのがアサヒだ。サントリーは取締役の報酬開示はないが、子会社のサントリー食品インターナショナル(2587)には1億円プレーヤーが存在しており、親会社のサントリーにも年俸1億円以上の経営陣がいると見ていいだろう。サッポロはまだ年俸1億円以上の社内取締役は誕生していない。
■巨大ライバル企業の売上規模に迫れるか
アサヒとキリン、サッポロの3社に共通している点は何か? 帝国ホテル(9708)の株主であるということだ。一方、ロイヤルホテル(9713)やパレスホテルの株式を所有しているのはサントリーである。
ビール各社にとっては、取引関係の強化を進めるという意味合いがあるのだろう。外食チェーンの株式も所有する。
「餃子の王将」の王将フードサービス(9936)や「はなの舞」のチムニー(3178)などの株主になっているのはアサヒである。キリンもチムニーや「日高屋」のハイデイ日高(7611)、サッポロは「まいどおおきに食堂」のフジオフードシステム(2752)などの株式を所有している。
不動産事業にも注力しているサッポロが所有する恵比寿ガーデンプレイス(東京・渋谷区)の資産価値は、およそ1500億円である。
ノンアルコール飲料を含め国内市場の縮小は必至なだけに、各社は海外展開の拡大を目標に掲げる。ただし、ビール世界トップのアンハイザー・ブッシュ・インべブ(ベルギー)の売上高は6兆円規模だ。ノンアルコールでは、売上高が10兆円を超すスイスのネスレを筆頭に、7兆円台のペプシコ、3兆円台のコカ・コーラなど巨大なライバルが存在。各社とも全世界規模での販売だ。
たとえば、ネスレの地域別販売内訳は、南北アメリカ44.9%、欧州・中東・北アフリカ29.4%、アジア・オセアニア・サハラ以南のアフリカが25.7%(2018年)。海外売上高比率のアップなど、国内ビール4社の手腕が問われる。
ビジネスリサーチ・ジャパン[著]


