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セブンイレブン「24時間営業」要否議論がもたらすもの ”コンビニ崩壊”の危機も

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セブンイレブンのフランチャイジーから掲げられた人手不足による24時間営業拒否の反旗は、他のコンビニチェーンをも巻き込んだ24時間営業の要否大論争に発展して、セブンイレブン・ジャパンのトップ交代人事に至りました。

議論はフィランチャイズ本部、フランチャイジーそれぞれの思惑が平行線をたどり、現状では出口の見えない状況に陥っているかのように思えます。どこにこの問題の本質があり、解決の糸口があるのか、それを探るべくコンビニビジネスの成立から今回の論争に至る事情を整理してみたいと思います。

通常の営業時間の3倍で日本に持ち込まれたセブンイレブン

BLOGOS編集部

まず日本のコンビニエンスチェーンの祖、セブンイレブンの生い立ちを紐解いてみます。セブインイレブンの誕生は、1927年アメリカのテキサス州オーククリフのサウスランドアイス社なる氷小売販売店が起源です。

電気冷蔵庫がまだ普及していないこの時代に氷は生活必需品であり、需要の高まる夏期に朝7時から夜11時まで営業をしたことが、セブンイレブンの名前の由来になっています。この後、利用者から他の生活必需品も扱って欲しいとの要望を受け、コンビニエンスストアの原型が整っていったようです。

1946年社名をセブンイレブンに変更し、店舗数も増えて順調に発展。1971年に多くの店舗が24時間営業を始めました。イトーヨーカドーが日本でセブンイレブンを始めたのが1974年のことですから、日本に輸入されたその段階で、すでに24時間営業はコンビニエンスストアの基本ビジネスモデルになっていたのです。

この当時の日本の小売商店はほとんどが個人経営。営業時間は、主婦の買い物時間に合わせ11時~19時等の8時間営業が一般的な時代です。そんな昭和の時代に、言ってみれば3倍の営業時間を持って、新たなビジネスモデルを日本に持ち込んだのがセブンイレブンだったのです。

売上より重視される「24時間営業」ビジネス最大の肝

後の社長で当時イトーヨーカドー取締役であった鈴木敏文氏は、本業である大型スーパーの出店が中小小売店の商売を圧迫しているとの批判に対し、「中小小売店の売上不振は生産性の悪さにある」という持論を持ってこれを退けていました。その持論実現の場として鈴木氏が先頭に立って旗振りをしたのが、既に米国で4000店舗規模の成功を収めていた24時間営業小売店セブンイレブン・ビジネスへの着手だったのです。

事業開始に際して目指すところとなった思想は、創業理念にある「中小小売店経営近代化・活性化と大型店との共存共栄の実現」であり、24時間営業による生産性の向上ときめ細かいニーズへの対応こそが、日本の中小小売店成長のカギを握っているとしていたわけなのです。

このようなコンビニの創業経緯を踏まえ、現状の「24時間営業は本当に必要か」という議論に相対してみるなら、個人小売業の生き残りを賭けた生産性向上の観点からコンビニエンスストアと24時間営業は切っても切れない必須の成立要件である、ということにならざるを得ない、そんな印象を強くします。

一部のメディアでも語られているところではありますが、24時間営業は深夜の時間帯の売上が上がるか否かは問題ではなく、いちいち店を開けたり閉めたりすることなく24時間営業を続けることで、チェーン小売店として一定以上の営業生産性が担保されること、それこそがコンビニエンスストア・ビジネスモデルの最大の肝であるということに行き当たるわけなのです。

「オーナーたちの反乱」を発端に”コンビニ崩壊”の危機も

セブンイレブンがスタートした70年代は、一部オイルショック等の経済的なマイナス事象はあったものの、まだまだ高度成長期の名残が続いていた明るい時代でもありました。若年層労働力も十分な供給状況にあり、多少の景気浮き沈みの中では人手不足が大きな問題になるようなこともなく、24時間営業を支える人手確保に大きな支障がなかったことが、このビジネスの発展に大きく寄与してきたことは否めない事実です。

しかし問題は、昨今の少子化という逆行不能な大きな流れの中で起きた空前の人手不足状況です。いかに24時間営業がビジネスモデルの肝であろうとも、物理的な面から24時間営業の維持が難しくなってしまったわけです。コンビニビジネス成立の物理的大前提が崩れたことは、今回の問題が単なる「オーナーたちの反乱」にとどまらない深刻な問題であるという証しなのです。

「オーナーたちの反乱」には、「利益を吸い上げ、ブラック就労を押し付けるコンビニ本部こそ悪の権化」「そもそも契約の段階で納得してはじめたのだから、オーナーは甘んじて現状享受すべき」等々、賛否両論が様々な視点から飛び交っているわけですが、問題はそんなに単純なものではありません。

個人的には、想定外な人手不足に喘ぐオーナーサイドになんらかの救済策を差しのべるべきとは思いますが、かとい言って24時間営業があって本来の目的を達するビジネスモデル自体が崩れるなら、コンビニビジネスそのものの変質、あるいは崩壊の危機までありうるということも、視野におかなくてはいけません。

もし一部の店舗が夜間休業するなら、効率性重視の配送ルートが根本から崩れます。また、もし仮にセブンイレブンがその名のとおり午前7時開店&午後11自閉店にするなら、朝の学生やサラリーマンの大量需要や、終電間際、帰宅者需要は大幅に取り逃すことになります。なり、結果、現在想定されているコンビニエンスストアの収益モデルにも大きなダメージを与えることになるでしょう。

明確な目的達成のために作られたビジネスモデルというものは、その一部でもモデル運営の考え方に反して崩れるなら、全体バランスそのものが崩壊し当初の目的は達することができなくなるのです。

現在、セブンイレブンがおこなっている実証実験は、まさにそのバランス崩壊によるマイナス度合いをケースごとにはかるための作業に相違ありません。すなわち、オーナーサイドからの要望を受け入れるためではなく、異例措置対応の許容範囲をきめるための実証実験に過ぎない、ものなのです。

共同通信社

なぜなら、24時間営業を前提として作られたビジネスモデルとその下で成立している店舗網や店舗運営オペレーションに、コンビニオーナーの意向を吸収するというオプションはなく、それを今ここで一部オーナーの反旗を受けて、収益モデルを全面再構築することは現実的ではないからです。

ですから今年、2月の一部オーナーによる反旗翻し時のセブンイレブンの本音は、なるべく騒ぎは小さく抑えたい、できれば時が経つのを待って当該オーナーにはそっと去ってもらい何事もなかったことにしたい、そう思ったに違いありません。

しかし、働き方改革法の施行というタイミングも重なって(正確にはコンビニオーナーは経営者であり法の対象ではないのですが)、ことは予想以上に大きな騒ぎになったわけです。今は経済産業省が「コンビニ24時間営業に問題なしや?」とことさらに関心を示したことで、セブンイレブンも黙って喧騒が過ぎるのを待つわけにはいかなくなったという状況なのです。

セブンイレブンによれば、現在24時間営業をやめたいと手を挙げている店舗のは全国で96店舗。数字の上では、全国約21,000店舗を数える同チェーン規模からすれば微々たるものです。

ただし力関係から考えて、言いたくても言えない、手を挙げたくても挙げられないオーナーは相当数いることは想像に難くないので、この数字だけで実態を判断する訳にはいかず、経産省も看過できないと声を上げるに至ったのだと思います。

オーナーの声を優先して一部の店だけを時短営業すれば効率性に大きな問題が出る、そうかといって時短営業希望店舗が所属するロジスティック・ブロック全体を時短営業すれば、希望しない店までも収益が減少し、チェーン全体の収益モデルが崩壊する。このような複雑な事情を勘案すると、現状で四方丸く収まるような対処策は大変難しいように思えます。

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