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【読書感想】売れるには理由がある

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売れるには理由がある

  • 作者: 戸部田誠,てれびのスキマ,花小金井正幸
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2019/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。



売れるには理由がある

内容紹介

これは芸人たちが己の人生を「0→1」にした

あの頃を描いた、おとぎ話である。

エピソードを収集し、教訓や方法論を抽出し、

著者の鮮やかな筆で編み上げた、

グリムやイソップに続く「スキマ童話」。

上質な短編集として楽しむもよし、成功のノウハウ、

生きるための知恵を授かるもよし。

何かしらのジャンルで“一発"当てる、

その助けとなるだろう。――― 山田ルイ53世(髭男爵)

ツービート、タモリ、明石家さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、さまぁ~ず、オリエンタルラジオ、オードリー、南海キャンディーズ、古坂大魔王(ピコ太郎)――。

古今東西、あの人気芸人たちは、どのような“チャンス"“きっかけ"“出会い"をモノにすることで、大きくブレイクすることができたのか?

総勢43組、珠玉の“ネタ"で語られる「芸人たちの運命変更線」。

 どんなに才能にあふれた芸人であっても、デビューした途端に「売れっ子」になれるわけではありません。

 下積み時代の長さに違いはあっても、ブレイクスルーのきっかけになったネタ、あるいは番組というのがあるのです。

 この本は、その「ネタ」に着目して、どんなタイミングで、何がきっかけで生まれ、その後の彼らの人生をどう変えていったのか、が紹介されています。

 43組の芸人が登場してくるので、ひとつひとつを丁寧に、というわけではありませんが、これだけの事例が集められていて、それをまとめて読むことによって、「ブレイクしたネタに共通すること」と、「それぞれの個性」が浮き彫りにされているのです。

 春日さんの結婚が話題になった、オードリーの「ズレ漫才」の項では、こんなエピソードが紹介されています。

 オードリーには結成から約8年間、テレビにまったく出られなかった下積み時代がある。その頃、役割が現在と逆で、若林がボケ、春日がツッコミだったのは有名な話だ。しかし、オーディションでは「どう見ても春日はツッコミとしてポンコツ」などと言われる始末。思案した若林は自分たちを徹底的に見直そうとライブを開催することにした。だが、ライブ会場を借りるかねはない。そこで会場となったのが「むつみ荘」。いまや有名になった風呂なし6畳一間の春日が住むアパートだ。10人入れば満員となる”会場”。隣の部屋に声は筒抜けだ。「小声トーク」と名付けられたそのライブの目的はハッキリしていた。トークの模様をすべて録画し、ウケている部分とそうでない部分を分析していったのだ。すると、若林はあることに気付く。

 春日のツッコミがほとんど間違っていたのだ。翻って、もっともウケていたのが、春日の間違ったツッコミに若林がツッコミ返すときだった。

 そうか! ツッコミの場所が違う、ニュアンスが違う、そんなツッコミができてないというのをそのまま漫才でやればいいのではないか。

 若林は「思いついた瞬間気持ち悪くなった」というほどの天啓を得たのだ。その瞬間、「ズレ漫才」の構造ができあがった。

 彼らはなんとかして「売れたい」と試行錯誤を繰り返しながらも当時は売れるということが、リアルに想像できなかった。それでも「夢」を諦め、「辞める」という選択をすることもできなかった。なぜなら「辞める」理由が見つからなかったからだ。「辞める」にも理由がいる。明確な理由がほしかった。だから苦悩の果て、半ば「クビになること」を目指すようになっていく。クビになるために事務所に怒られそうなことをやる。そのひとつが、漫才なのに、春日がゆっくり歩いて入ってくるというボケだった。また、若林は岡本太郎に惹かれていた。売れず、孤独だった若林は岡本太郎記念館に行き「坐ることを拒否する椅子」に座ると自然と涙が出てきた。

「笑わすことを拒否する漫才を作ろう、そのほうが伝わる」

 若林は春日に「太陽の塔」のように立ってくれ、と提案する。こうして、胸を張って立つ春日のキャラができあがったのだ。

 僕は、ある程度売れてからの(というか、『M-1』決勝に初出場してからの)オードリーしか知らないのですが、若林さんの著書はほとんど読みました。

fujipon.hatenadiary.com

 若林さんのような「笑いの求道者」が、さんざん試行錯誤しても、なかなか「売れるための正解」にはたどり着かなかったのです。

 いまのオードリーを知っていると、「春日さんがツッコミなんて、そりゃうまくいかないだろうな」と言いたくなってしまうのですけど、「正解」を知らない時代の当事者には、それがよくわからないのです。

 それでも、ひたすら迷走した末に「笑わせることを拒否する漫才」という境地に達したとき、ようやく、ウケるようになった。

 この本を読むと、多くの競争相手がいて、「クラスでいちばん面白かったヤツら」のなかで、ブレイクするというのは、並大抵のことではないのだな、と思い知らされます。

 「売れるネタができあがるまでのエピソード」なのに、読んでいて涙が出そうになることもありました。

 芸人という仕事の場合、「自分たちたちが新しい、面白いことをやっている」つもりでも、お客さんにウケないと、どうしようもないのです。

 そこで、どうふるまうのが「正解」なのか。

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