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焦点:日産、迫られる業績改善 経営統合反対へ交渉力の源泉に


[東京 25日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>の業績悪化に歯止めがかからない。2019年3月期の連結業績予想を2月に続いて下方修正。そんな中、4月中旬には仏ルノー<RENA.PA>から再び経営統合を要求された。日産は反対姿勢を貫くためにも業績改善が急務だが、株式市場関係者の間では先行き不安が一段と強まっている。

<「ストレッチ」の代償>

「今は経営統合を考える時ではなく、業績を立て直すことに集中している。ぜひお時間を下さい」――。筆頭株主のルノーがこれまでの友好的な態度を一変させ、経営統合を再び迫ったことを受けて集まった記者団に対し、日産の西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)は22日夜にこう述べ、経営統合に反対する意思をにじませた。

24日発表した前期の営業利益予想は約45%減の3180億円と従来から1320億円下振れた。このうち半分の約660億円が、米国で不具合の出ている無段変速機(CVT)を搭載した約300万台の保証期間延長に伴う引き当てコストの増加だ。軽部博・最高財務責任者(CFO)は、CVTの異音や振動に対する不満が多く、「顧客満足度の向上のため、保証期間を従来の5年から7年に延長する」と説明した。

残り半分は販売不振などによるものだ。日米欧といった主力市場で想定を下回り、前期の世界販売を560万台から551.6万台に引き下げた。カルロス・ゴーン前会長による事件が響き、日本では新規顧客が減っている。米国での販売も低迷、インセンティブ(販売奨励金)の削減も想定より進まず、営業利益を430億円押し下げた。

日産は現在、米国でこれまでの「量」ではなく「質」を重視する販売戦略を推進している。西川社長は2月の決算会見で、日産車は過去に販売奨励金を多用して安売りし、無理に販売を伸ばしてきたため、「ブランド価値が十分ではない」と反省。今後は「ストレッチ」をせず、持続的な成長に向けて販売を正常化させると話していた。「ストレッチ」とは、ゴーン前会長が掲げた高い販売目標の達成を最優先することを指す。

しかし、日産車は「値引きが当たり前」というイメージがすでに強く、販売奨励金を減らすと販売も減ってしまう。その結果、前期は「当初考えていたよりも、過去数年、米国でストレッチし続けていたインパクトが大きかった」(軽部CFO)。

<交渉力低下を懸念>

調査会社TIWのシニアアナリスト、高田悟氏は、日産が米国販売で量から質重視に転換したことは評価しつつ、「いかにこれまで販売奨励金に依存していたかが露呈した形だ」と指摘。「米国同様、他の市場でもそのような傾向がみられるようだ」と先行き懸念を隠さない。

ルノーから日産への出資は約43%なのに対し、日産からルノーへの出資は15%にで議決権もなく、資本関係では劣勢に立つ日産。だが、業績面ではルノーを長く支えてきており、そのおかげでこれまで「対等の精神」を主張できたともいえる。だが、業績が悪化すれば、日産の立場は弱まり、ルノーの意向を飲まされかねない。ルノーの統合要求に対し、日産が交渉で優位に立つためにも「業績改善は急務だ」と高田氏は話す。

前期の純利益は従来から910億円下方修正し、57%減の3190億円となる見通し。配当は期末28.5円を維持する方針だ。ただ、野村証券リサーチアナリストの桾本将隆氏は、20年3月期の配当予想について、日産が明言を避けており、日米欧での販売苦戦に伴う収益悪化を背景に前期の年間57円は困難とみて40円に引き下げた。

<経営幹部も相次ぎ流出>

一方、日産ではゴーン前会長に近かった幹部の流出が相次いでいる。1月には、長く北米事業を担い、昨年4月からは中国を担当していたチーフ・パフォーマンス・オフィサーのホセ・ムニョス氏、3月には人事担当のアルン・バジャージュ専務執行役員が日産を離れた。

ゴーン前会長にトヨタ自動車<7203.T>から引き抜かれ、世界でのマーケティング・販売、電気自動車・電池事業、日本・アジア・オセアニア事業を担当していたダニエレ・スキラッチ副社長も5月に退任する。

こうした中、日産は23日の取締役会で新たな役員人事を決めた。最高執行責任者(COO)には、生産や調達を担当するチーフ・コンペティティブ・オフィサーの山内康裕氏が5月16日付で就く。COOのポストは取締役の志賀俊之氏が13年に退いて以来の復活。副COO職も新たに設け、ルノー出身で最高品質責任者(CQO)のクリスチャン・ヴァンデンヘンデ氏が兼務する。

両社の提携関係のルールを定めた協定の中には「ルノーは日産のCOO以上の役職者を指名できる」というものがある。ただ、関係者によると、山内氏のCOO起用は「ルノーの要求に対する反発ではない」といい、23日の取締役会では、日産の取締役として出席したルノーのジャンドミニク・スナール会長も難色を示さなかったという。

ゴーン前会長の逮捕と起訴、相次ぐ業績予想の下方修正と経営幹部の流出で、現場の士気への影響も社内外でささやかれる。ただ、ある日産関係者は「現場ではルノーとの調整や摩擦が多すぎて、誰が役員だろうとそれどころではない。ただ、イメージが悪い経営の混乱はもう勘弁してほしい」と冷ややかだ。

ルノーは日産株の配当収入にも支えられている。経営統合を前進させたいルノーが、業績悪化を理由に西川社長の経営責任を追及し、退任に追い込むこともありうる。業績回復と経営の独立性確保という「二兎」を追えるのかどうか――。西川社長が5月14日の決算発表会見で、そのシナリオをどう説明するか注目される。

(白木真紀 取材協力:田実直美 編集:田巻一彦)

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