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和歌山カレー事件・林真須美死刑囚の長男とAbemaTVに出ていろいろ考えさせられた

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 4月21日午前1~3時のネット放送AbemaTVにゲスト出演した。MCはカンニング竹山さんで、テーマは「和歌山カレー事件・林真須美長男が生放送初出演。今伝えたいことは~土曜The NIGHT#60」。真須美さんの長男はこの1~2年、いろいろなテレビの報道・ドキュメンタリー番組に登場してきたが、スタジオでの生出演はこれが初めてだ。

 2月にこの番組でカレー事件について触れたのを長男本人が見ていて、メールを送ってきて、生出演することになったという。

 私は1998年の和歌山カレー事件直後に林家を取材で何度か訪れており、当時小学校5年生だった長男にも会っていた。またその後、真須美さんに接見を重ねるようになってからも、夫の健治さんの出所後の自宅や、真須美さん支援集会などで長男に会ってきた。

 今回、久々に会うことになったのだが、彼はもう31歳とすっかり大人の男性になっていた。番組では匿名ですりガラス越しでの発言だったが、冒頭でこの番組に出演しようと考えた思いを語った。それがなかなか考えさせられる内容だった。

 この1年ほど彼が出演したのはNHKのNスぺや民放の報道特番で、制作者もきちんと考えたうえで比較的丁寧に作った番組だった。でもその反響をネットなどで見ると、「何を被害者づらしてるんだ」「カレー事件の被害者はもっと辛い思いをしてるんだぞ」というものが多かったという。

番組でも紹介した真須美さんからの最近の手紙(筆者撮影)

 1998年10月4日の両親の逮捕で4人の子どもたちは突然、親のいない状態に放り出されるという境遇になった。施設に預けられるのだが、子どもたちにとっては本当に過酷な体験だった。その後も結婚や就職をめぐって彼らは「あの林真須美の子ども」ということでいろいろな目にあってきた。これは番組では語っていなかったが、長男も、結婚を約束した女性がいたが、女性の両親に「実は」と真須美さんの息子であることを告げたとたんに猛反対され、破談になった。3人の姉妹もそれぞれ大変な思いを重ねてきている。

 ドキュメンタリー制作者にとっては、そういう現実を社会に問題提起するという思いで番組を作るから、どうしてもそういう苦労した話を強調することになる。

 ただ、長男が言っていたのは、取材を受けてもそういうところだけ取り上げられることに疑問を感じることもあったという。もっといろいろなことを話しても、使われるのはそういう部分だけ。しかも、局側の意向で、わざわざ普段は行かないカレー事件現場へ行って収録を行うことになったりする。事件を知っている現場付近の人たちが、テレビの撮影をしているのに気が付いて振り向いたりすると、長男としてはいたたまれない思いになったらしい。

 だから特定の文脈でのみ切り取って取り上げられるのでない、今回の2時間の生出演に応じたのだという。番組冒頭でそういう思いを短く語ったのだが、私は、これはなかなか微妙でかつ大事な問題だと思った。だから番組の後、もう一度長男に連絡し、わざわざ日曜で誰もいない『創』編集部に来てもらい、再度話を聞いた。上記の説明はその話も含めて彼の思いを書いたものだ。

 長男は2~3日前からツイッターを始めたという。テレビとかマスコミ報道を通してでない、世間の生の声を聴き、自ら発信できる手段がほしかったからだという。当然、心ない攻撃の声も届くことになるが、それもわかったうえでのことだという。

 長男も最初にネットで母親についてのコメントなどを見始めた時には、「早く吊るせ」「税金の無駄遣いだ」といった書き込みを見て、衝撃を受けたという。そういう世間の反応があることはわかったうえで、でもそういう声にも目をそむけずにいようと考えたという。

 マスコミを経由するのでなく、自分の声を発信したいという思いでツイッターやブログを始めるというのは、元オウム教祖の松本家の子どもたちもそうだし、私が関わった事件当事者でも少なくない。マスコミ報道は、たとえよかれという思いでやっていたとしても、当事者に多かれ少なかれ違和感を抱かせているものだ。どうしたって報道側の主観で事実の一部を切り取ることになるし、しかも報道する者にとってはそれがある種の「使命感」に基づくものだったりする。でも、もしかするとそれは「傲慢」なのかもしれない。

 長男は、婚約していた女性の父親に自分の素性を話した時、相手の女性からは隠しておいたほうがよかったといわれたらしい。実際、結果的に破談になったから、隠しておいたほうがよかったのかもしれない。でも、1時間ほど話しこんだ時に彼が語ったのは、例えば自分の林という姓を変えて結婚する道もあるけれど、母親が「自分はやっていない」と無実を訴えているのに、自分がその家族であることを隠して生きていくことが正しいことなのか葛藤があるということだった。

「自分でも、何が正解なのかはわからないんです」

 彼はそう言った。

 そういう取材対象者の複雑な思いをくみ取ることは当然、マスメディアに属する者には求められているのだが、果たして今のメディアはそういうことが十分できているのだろうか。

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