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金正恩の妹、金与正に異変?

トップ写真:南北首脳会談(2018年4月27日)に同席する金与正氏(右手前) 出典:韓国大統領府ホームページ

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・金与正が米朝首脳会談の演出を失敗。帰国後の宣伝でも失敗。

・金正恩の権威失墜。金与正は排除された可能性、との報道も。

金正恩・金与正コンビに幹部は疑念抱き、住民は失望か。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45350でお読みください。】

ハノイでの米朝首脳会談の決裂は、北朝鮮の金正恩委員長だけでなく妹の金与正の立場にまで影響を与えているようだ。

2018年の「平昌冬季オリンピック」から「4・27板門店南北首脳会談」「6・12シンガポール米朝首脳会談」「9・19平壌南北首脳会談」までの金与正の演出は、文在寅大統領の積極的な協力もあって、世界の注目を集めた。世界と韓国国民から忌み嫌われていた「暴君金正恩」のイメージ払しょくにも大いに貢献した。

しかし米朝ハノイ首脳会談での宣伝・演出の失敗は、その功績を帳消しにしただけでなく、兄の金正恩委員長に大きな打撃を与える要因となった。

▲写真 金与正氏 出典:韓国大統領府ホームページ

こうしたことから「ビジネスインサイダー」(英字版)は、2019年4月16日付で「Kim Jong Un’s ‘princess’ sister may have been kicked out of North Korea’s ruling body, suggesting a fall from favor」(「金正恩の妹の“王女”は、北朝鮮の権力核心から退けられたかも知れない」)とのタイトルで、金与正の立場が弱まり権力中枢の政策決定集団から排除されたのでは、との報道を行った。

■ 未熟で妄想的な宣伝・演出手法

金正恩が妹の金与正をやすやすと遠ざけることはないと思われるが、もしもこの報道が事実なら一大事件である。確かにハノイ会談に臨む過程での金与正の宣伝と演出は、ちぐはぐさと未熟さが目立った。

まず非核化に関する国内外への宣伝で、本音と建前の使い分けが露骨だった。

対外的には米国非難の報道を控え、条件次第では核放棄に応じるかのような欺瞞宣伝をしていたが、国内での宣伝・教育では「核は絶対手放さない」「核保有したからこそ米国が降伏し会談に出てきた」などと真逆の宣伝を行っていた。こうしたプロパガンダを米国が察知しないわけがなく、それが金正恩の「非核化意思」に疑念を抱かせる要因にもなった。

▲写真 第2回米朝首脳会談(2019年2月27日 ベトナム・ハノイ)出典:The White House facebook

次に、会談結果がどうなるか分からないのに「ハノイ大捷(大勝)」などと宣伝し、平壌駅で盛大な見送りセレモニーを行い、手ぶらで帰国した金正恩に大恥をかかせた。

「取らぬ狸の皮算用」式のセレモニーを大々的に行ったことによって、会談決裂のダメージを倍加させた。そして金正恩の「弁明」も難しくさせた。金正恩は国民をなだめる詭弁創作と「自力更生」なる「立てこもり対応策」に43日もの時間をかけざるを得なかった。また北朝鮮住民と、特には外貨獲得・貿易関係幹部に、過大な期待感を抱かせたことによって、落胆と不信を増幅させた。間もなく制裁解除がなされると期待を膨らませ、中国などで待機していた貿易関係幹部たちからは様々な不満が噴出している。

第三に、帰国後も米朝会談が成功裏に行われたごとく報道を行い傷口を広げた。

北朝鮮の虚偽報道ぶりを国際社会に知らしめただけでなく、北朝鮮住民たちにも当局発表の信ぴょう性に疑念を抱かせる結果をもたらした。当局発表の虚偽報道は、中国から口コミで伝わる真実情報によって打ち消されてしまった。政府当局者はもちろん金正恩の言動にまで疑念を抱かせる結果となった。これはこれまでの北朝鮮プロパガンダには見られない大失敗である。

こうした疑念を打ち払おうとして、金正恩は、帰国直後(3月6日)に行われた第2回党初級宣伝活動家大会への書簡で、「首領を神秘化してはならない」としたが、これも北朝鮮の幹部と住民に混乱をもたらし、金正恩の権威失墜に輪をかけることになった。

▲写真 韓国特使と会談する金正恩委委員長。後ろに金与正氏の姿も(2018年3月6日 北朝鮮・平壌)出典:韓国大統領府ホームページ

■ 金正恩・金与正コンビの指導力に疑問符

ハノイ会談を通じて最高幹部たちは、金正恩・金与正のコンビでは到底米国に対抗できないと考えたに違いない。

現在、北朝鮮の内部からは食糧難による「第2の苦難の行軍」情報が伝えられている。北朝鮮当局は、人々の不満を抑えるために災害備蓄用の5号食糧庫だけでなく戦争備蓄用の2号食糧庫まで開き、食料補給に必死だという。国連に窮状を訴え、支援を受ける活動も強めている。一部で餓死者が出ているからだ。

2012年の金正恩登場時に彼が口にした「人民を二度と飢えさせない」との公約はほとんど実現不可能な状態だ。「核武器が完成すればよい生活ができる」との宣伝もハノイ米朝会談の決裂で失望だけを与えた。このままだと2021年に期限を迎える「国家経済発展5カ年戦略」の目標実現はほぼ絶望的だ。

ハノイ会談宣伝の大失敗で、金正恩が、一時的かは分からないが、金与正を遠ざけ責任を感じさせようとしたとしても不思議ではない。4月末に予定されている露・朝首脳会談での金与正の動向が注目される。

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