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フェイスブックをめぐる3つの「不都合な真実」規制をめぐり報道機関とフェイスブック幹部者が激論

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Getty Images

世界で約20億人の利用者を誇るソーシャルメディアの最大手フェイスブック。このところ、批判の矢面に立たされるようになった。

2016年の米大統領選ではフェイクニュースを拡散したプラットフォームとして、悪評が広がった。追い打ちをかけるかのように、昨年3月、8700万人にも上るフェイスブック利用者の個人情報の不正流出事件が明るみに出た。今年3月中旬には、ニュージーランド・クライストチャーチで発生したモスク銃撃事件で、銃撃犯による犯行の模様をライブ配信させるツールとなってしまい、ここでも責任を問われた。

「フェイスブックは信用できない!」として、そのサービスを止める人も少なくない。はたして、フェイスブックは「もうダメ」なのか。当局による、何らかの規制が必要なのか。もしそうだとすれば、オープン性が特徴となるネットの言論空間はどうなる?

4月上旬、イタリア・ペルージャで開催された「国際ジャーナリズム祭」ではフェイスブックの幹部を呼び、まさにこのテーマで喧々諤々の議論が繰り広げられた。その様子を紹介してみたい。

かつてメディアは「白人男性の発言の場」だった

毎年開催される国際ジャーナリズム祭は、参加費が無料。複数のホテルが会場を提供し、誰もが足を運ぶことができる。

4月4日夕方のパネル・セッションのタイトルは、「フェイスブックを批判する?もちろん。止める?どうして?」。会場は満席となり、立ち見の人もかなりいた。

口火を切ったのは、米ニューヨーク市立大学で教えるジェフ・ジャービス氏だ。スキャンダル続きのフェイスブックを含めてソーシャルメディアの利用を「止めるべきだ」というジャーナリストと、テレビで討論したという。

左からジャービス氏、ボール氏、ブランデル氏(撮影筆者)

ジャービス氏は、「止める」選択肢には必ずしも同意しない。「今まで、『メディア』と言えば、私のような顔をした人物(白人・男性)が発言する場だった。しかし、ソーシャルメディアの勃興で、これまでは外に自分の声を十分に出すことができなかった人が、発言権を得た」と指摘する。

これが一昨年秋以降に大きくなった、セクハラや性犯罪を告発する「MeToo運動」や格差拡大に異議申し立てをする「占拠せよ運動」の広がりなどに表れているという。

民主主義は「会話」であり、その言論空間は玉石混交の「乱雑なものではないか」とジャービス氏は言う。「フェイスブックやツイッターの言論空間は乱雑で、無秩序に見える。そこで秩序をもたらすべきという声が出ている。『ゴミ』を会話から取り除くべきという人がいる一方で、『会話』に手を付けるべきではないと主張する人もいる」。さてどうするべきか、とジャービス氏は問いかける。

「新聞報道よりずっと貴重な情報がネット上にある」

オックスフォード大学レディ・マーガレット・ホールの学長アラン・ラスブリジャー氏は、イギリスのリベラル系日刊紙「ガーディアン」で20年間、編集長だった。

同氏はソーシャルメディア、グーグル、ウィキペディアなどをよく使うという。「イギリスの新聞よりもはるかに貴重な情報が見つかる」。

ラスブリジャー氏は、2016年、イギリスで欧州連合(EU)から離脱するかどうかの国民投票が行われたとき、イギリスの新聞界が質の高い情報を読者に十分に提供できなかったことに失望感を抱いた。「将来を左右する重要な離脱問題に国民が的確な判断を出すための情報を、イギリスの新聞は提供できなかった」。ツイッターを見ていた方が「有益な情報が見つかった」。

ソーシャルメディアを批判するのもいいが、報道機関は「なぜテクノロジー大手が成功したかを、謙虚な気持ちで考えてみるべきではないか」。例えば、記事を出す際には報道事実の根拠を示す、リンクを貼る、読者との「会話」の機会を持つなど、ネットメディアの常識を既存のジャーナリズムに取り入れてみるべきという。

フェイスブックを巡る、3つの「不都合な真実」

イギリスのジャーナリスト、ジェームズ・ボール氏が議論を引き継ぐ。「フェイスブックを巡っては、3つの不都合な真実があると思う」。「不都合な真実」とは、2006年の米映画の題名で、アル・ゴア元米副大統領がナレーター役となった、環境破壊についてのドキュメンタリーだ。

1つ目は「テクノロジーについての報道の質が低く、目を覆うばかりであること」。記者の側にテクノロジーについての知識が浅く、「巨大な権力を持つフェイスブックを始めとするテクノロジー企業の説明責任を追及できない」。

例えば、フェイスブックが、スポティファイ利用者の個人情報を収集している、という報道があった。「フェイスブック側は『そのような意図はなかった』と説明する。フェイスブックには、黙れ!と言いたい。利用者の行動を追跡するのがフェイスブックだから、最初から知っていたはずだ」。しかし、十分な知識がなければ問題を本当には追求できないという。

2つ目は、フェイスブックが巨大になりすぎて情報管理ができなくなっていること。

3つ目が、フェイスブックとメディアが相互依存していること。フェイスブックにはたくさんの人が集まっている。メディア側は多くの人にリーチしたいので、「フェイスブックとメディアは互いに離れられないほど相互依存している」。

個人の趣味でフェイスブックを使っているのなら、「止めたければ止めればいい。でも、もしメディアにいるのだったら、止めるなんて馬鹿げている」。

フェイスブックから、メディアが学べることは

メディアが読者参加を高めるためにアドバイスを行う「Hearken(ハーケン)」の最高経営責任者ジェニファー・ブランデル氏は、報道機関がフェイスブックから学べることがあると指摘する。

「フェイスブックを始めとするソーシャルメディアが非常にうまくやっているのは、人々の声に耳を傾けること」。市民は「上から話しかけられるのではなく、同等の立場から話をしたいと思っている。相互のやり取りを望んでいる」。

具体的には、「まず編集部のスタッフの電子メールを公開すること。これで読者とコミュニケーションを取ることができる。記事を読んでもらったり、ニュースレターを受け取ってもらったりできる」。有料購読者には、「記事の関連データをダウンロードできるようにし、活用してもらうのはどうか」。

フェイスブック側の答えは?

パネリストの一人は、フェイスブックの欧州・中東・アフリカ地域のニュース・パートナーシップ部門ディレクター、ヤスパー・ドウブ氏だった。以前は、ドイツの著名ニュース週刊誌「シュピーゲル」で、デジタル及びテレビの部門を統括していた。彼は現状をどのようにとらえているのか。

「ネット上にたくさんの誤った情報(ミスインフォメーション)が出ているのは、事実だ」と同氏は言う。これに対処するため、フェイスブックは独立したグループを立ち上げ、ファクトチェックに当たらせている。「24の言語、40社の企業と一緒に作業を進めている」。

フェイスブックに対する批判の1つは、ニュースフィードに掲載されるニュースの質が玉石混交であること。フェイクニュース拡散の温床となった。

しかし、「質の高いニュース」のみをフィードに出すことの難しさをドウブ氏は指摘する。「ジャーナリズムの質とは、一体何を指すのか。どの基準を使ったら良いのか。フェイスブック自身がこれを定義するべきなのか」。

フェイスブック側が「ある人たちの意見が気に入らないからと言って、これを排除していいのだろうか」。同氏は「一企業の中で決めるのは、危険」と考える。「私たちは中立でありたい。同時に、多様性を維持したい。しかし、世界のすべての言語のすべての現象を反映させるわけにはいかない」。

メディア企業や政府、産業界からの支援が必要で、今「どうやってやるかについて、議論しているところだ」。

フェイスブックのプラットフォームを悪用する例があることも認識しているという。「人間が誰かと時を一緒に過ごす時、そのコミュニティ内で何らかの乱用・悪用が発生するものだ。問題を解決したいが、どうやってやるかについて、簡単な答えはない」。

これに対し、司会者のジャービス氏は「インターネットの裁判所なるものを作ってはどうか」、と提案した。公の場で悪用例を議論するのである。(このアイデアについては、ブログで詳細な説明がある。)

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