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貧困状態の子どもを支援する「第三の居場所」とは?見えてきた「社会関係資本」「人的資本」の重要性

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日本では今、7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。

一見こんな豊かな日本で貧困? と不思議に思いますが、内閣府の発表によれば平成28年度子どもの相対的貧困率は13.9%、特にひとり親世帯の貧困率だけ見れば50.8%(※)と、極めて深刻な状況です(※平成29年度子どもの貧困の状況及び子どもの貧困対策の実施状況)。

貧困は子どもの生育にどんな影響を及ぼすのでしょうか。また貧困家庭で育つ子どもたちが本当に必要としている支援とは、一体どういったものなのでしょうか。日本財団子どもの貧困対策チームリーダーの本山勝寛さんと、同財団と協働し拠点活動を行うNPO法人Learning for All代表李炯植(り ひょんしぎ)さんに、お話を伺いました。

日本の子どもたちがおかれている貧困の真実

——現在、日本の子どもの13.9%、約7人に1人が相対的貧困家庭に育っていると言われています。一見豊かな日本で、なぜ子どもの貧困がこれほど深刻なのでしょうか。

本山:最も大きな要因として、ひとり親家庭の置かれている状況が大変厳しいことが挙げられます。ひとり親家庭に限ると相対的貧困率は50.8%。2人に1人の子どもが貧困状態にあるのです。なぜひとり親家庭の貧困率が高いかというと、離婚後に取り決められた養育費がしっかりと支払われないケースが多いことや、正規で働けずに給料が上がらないことなど、女性の働く環境が全般的に厳しいといった理由があります。

日本財団 子どもの貧困対策チームリーダーの本山勝寛さん 撮影:弘田充

——ひとり親家庭への行政からの支援もされていると思いますが、それだけでは足りないということでしょうか。

李:区などからのひとり親手当ては決して十分とは言えません。就学援助金についても、そもそもそういった制度があることを親御さんが知らなかったり、知っていたとしても窓口に行く時間がない、書類が苦手で手続きができないといった理由で申請さえしていないという場合もあります。

本山:またひとり親家庭でなくとも、大黒柱だった親御さんが一度失業してしまうと、それ以降なかなか仕事に就けず、貧困から抜け出せなくなってしまうという状況もあります。

そうすると、生活保護に頼ることになるのですが、申請をしようと思っても、地域によっては「車を手放さなければ受給できない」といった条件がある場合もあるのです。地方など車がないと生活が出来ない地域では、これは死活問題です。こうした事情から、必要な人であるにもかかわらず、生活保護を申請できないという問題もあります。

貧困は子どもの成長にどう影響するのか?

——経済的な貧困は、子どもの成長にどんな影響があるのでしょうか?

李:多くの人は、食べるもの、着るものが買えない、住む場所がないといった物質的な困難をイメージすると思いますが、実際はこれに加えて人的資本(ヒューマン・キャピタル)、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の欠如という深刻な問題が起きるんです。

NPO法人Learning for All代表 李炯植さん 撮影:弘田充

——人的資本、社会関係資本とは?

李:周囲から家族を支えてくれる人や情報など、社会との繋がりのことです。一般的に、シングルマザーの子育ては「孤育」と呼ばれる状態に陥りやすいといわれています。お母さんが育児と仕事で日々忙しいので、子育てのことを相談できる相手がいなかったり、必要な情報を得られなかったりする。

一般的な家庭では、子どもを習い事に通わせたり、親がPTA活動に参加したりすることで孤立を避けることができますが、ひとり親家庭ではそういった機会を得ることが難しいのです。また、都市部のひとり親家庭では、祖父母などのいる親の実家も遠方にある場合が多く、地域で支えられないという問題もあります。

本山:子どもの貧困は学力にも影響します。親の経済格差が教育格差に繋がるということは、最近でこそ広く知られるようになってきました。貧困により塾に行けなかったり、勉強しようという意欲を持てなかったりすることで、子どもの学力が十分に育めず学歴の差に繋がり、就職の差にも繋がる。こうして、貧困の連鎖に陥ってしまうのです。

「経済格差が教育格差に繋がる」Learning for Allの取り組み

——そのような貧困の連鎖を起こさないために、どういった取り組みが有効なのでしょうか?

李:経済的な事情で塾に通えない子どもたちも、十分な学習機会が得られるようになることが必要だと思います。私たちの団体Learning for All(以下LFA)では2010年から、放課後の学校や地域の公民館といった場所を利用して、貧困世帯の子どもたちを対象に学習支援を行ってきました。ただ勉強を教えるだけではなく、その子の能力や個性に合わせたキャリアプランを一緒に考えたりもします。

——そういった取り組みを通じて、子どもたちにはどんな変化があるのでしょうか。

李:たとえば、私がかつて出会った当時中学1年生の女の子、当初は学力もかなり低く、そのことで自信も失っていました。また家庭では生活保護を受給していたため、塾にも通えませんでした。でも、彼女と話をする中で、実は英語が大好きだということが分かったので、英語に堪能な大学生に彼女を担当してもらいました。すると彼女の英語力はどんどんのびていって、あるとき「将来、英語を使った仕事をしたい」といい出したんです。

——将来の夢ができたんですね。

李:ええ。そこで一緒に調べたところ、希望の仕事に就くためには大学に行かなければいけないと分かりました。ところが、その子の住む区内の公立高校からは、ほとんど大学進学する生徒がいなかったんです。そこで一緒に考えて、区外の、英語特進コースのある公立校を受験することに決めました。彼女はますます必死に勉強し、希望の高校にも見事合格しました。その後、高校1年生のときに海外留学を経験して、帰国すると「また留学したい!」とコンビニのバイトを始め、お金を貯めて2度目の留学を実現しました。今は奨学金を自分で借りて、短期留学の出来る大学に入学したところです。

彼女のように、経済的に苦しい家庭に生まれた子どもたちも、大人と一緒に勉強に取り組み、少しでも自信をつけることで、将来のビジョンを具体的に描けるようになるんです。

写真AC

日本財団「第三の居場所」事業

いかに貧困の連鎖を断ち切るか。この大きな課題に取り組むべく、2015年から日本財団が中心となって取り組んでいるのが家や学校に次ぐ「第三の居場所事業」(以下、「第三の居場所」)です。

行政や地域、民間団体の協働で運営されているこの事業は、ひとり親家庭や生活困窮世帯など、生活において何らかの困難を抱えた家庭の子どもたち(主に小学校低学年)に、放課後の居場所を提供するというもの。現在は全国に15拠点を構え、約140人の子どもたちが利用しています。

——「第三の居場所」では、具体的にどういったことを行うんですか?

本山:基本的には学校から帰ってきた子どもたちを迎え入れて、宿題をやったり、ご飯を食べたり、歯磨きをしたり、生活そのものを行います。というのも、親御さんが忙しいために、子どもにきちんとした生活習慣が身についていない場合があるのです。そういったものを「第三の居場所」で時間をかけて補った上で、勉強をしたい、という気持ちを育み、子どもたちの自立を支援していきます。

各拠点の定員を20名としているのも、スタッフがなるべく1対1に近い形で子どもたちと接することができるようにという狙いからです。また、子どもにだけのアプローチでなく、親御さんとの信頼関係作りにも力を入れています。

——それはどうしてですか?

本山:子どもの貧困問題は多くの場合、親子関係の問題を同時に抱えているんです。経済的に余裕がない、仕事が忙しいといった理由から親御さんが気持ちの面でも余裕がなくなると、親子関係もうまくいかなくなってしまうという負のループに陥りがちです。そんな中で、「第三の居場所」として子どもに生活の支援を行いつつ、親御さんには、安心して育児の悩みを相談できる、人との繋がりを作ってもらう。そうすると、親御さんにも子どもにも少しずつ余裕ができるようになります。中にはそれによって、パートタイムから正規雇用に就けたという親御さんもいるんですよ。いい循環が生まれているなと感じます。

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