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「わたし、定時で帰ります。」吉高由里子が直面する働き方改革の壁 誰が変わらなければならないのか - 田部康喜 (コラムニスト)

(scyther5/iStock/Getty Images Plus)

「働き方改革」に関するさまざまな法律が4月1日から、まず大企業に適用を開始した。残業は月45時間、年360時間を原則として、臨時の特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間を超えてはならない。有給休暇については、使用者は年間10日以上の年次有給休暇を与えている労働者に、5日は時季を指定して与えなければならない。

TBS「わたし、定時に帰ります。」は、こうした「働き方改革」を背景として、WEB制作会社で部下を抱えるディレクターとして働いている、東山結衣(吉高由里子)が奮闘するドラマである。タイトルを社内で正々堂々と主張して、仕事を続ける結衣の前にさまざまな壁が立ちはだかる。いったい誰が変わらなければならないのだろうか。

湊かなえ作品のTBSドラマ化のヒット作「リバース」(2017年)、「夜行観覧車」(2013年)をてがけた、脚本・奥寺佐渡子と清水友佳子のコンビは、軽妙なタッチで、現代の社会問題に迫っている。

「就職氷河期」世代に「売り手市場」世代、「会社人間」世代のマネジメント層も

第1話(4月16日)が織りなすエピソードによって、結衣(吉高)の過去が明らかになる。「就職氷河期」の就職戦線を勝ち抜いて大手旅行代理店に入った結衣は、先輩からの指導もないままに「急げ、急げ」と、働かされ残業も月100時間超えが当たり前で、有休をとる暇もなかった。

「病気やけがをすれば、休めるなぁ」と思っていたのが現実となり、入社半年後に階段から転げ落ちて、頭を打って意識不明の重体になった。

意識が戻ったときに、両親から「危篤だった」と聞いて、「もう無理はしない」と決めたのだった。その後、面接を受けた100社目で合格したのがいまのWEB制作会社だった。「会社のために自分があるのではない。自分のために会社があるのだ」という社是を抱える社長に、面接で「わたし、残業はしません」といって笑われた。

「就職氷河期」は、若者たちの心に大きな傷を残した。その世代はいま、職場で「売り手市場」の新人たちと向き合っている。

結衣(吉高)と同じディレクター職の三谷佳菜子(シシド・カフカ)も「就職氷河期」に、現在の会社が吸収合併したWEB会社に就職した。定時に帰る結衣のチームとは対照的に三谷のチームは、終電間近まで残業を強い、自分も会社に泊まり込む。

小学校以来、休んだことがないという三谷も、体調を崩して風邪の咳が止まらない。新人の小泉咲(ついひじ杏奈)にも厳しく指導にあたって、咲は辞めてしまう。彼女は、三谷が信頼して明かしていたPCのパスワードを使って、新しいパスワードを設定してPCが使えないようにした。

「働き方」は、世代論でおおざっぱにくくるのは、ちょっと乱暴である。しかし、「就職氷河期」のなかで就職戦線を戦った若者たちは、会社に必死に自分の場所を求めて働いてきたのも事実だろう。「売り手市場」の最近の若者たちとは、溝がある。さらに、マネジメント層には、いまだに残業をいとわない「会社人間」世代がいる。

三谷と結衣が働く部の新任の部長・プロデューサーである、福永清次(ユースケ・サンタマリア)もそうしたひとりである。PCを使えなくなった三谷に、新人の咲を探し出して、土下座をして謝って、パスワードを聞き出すように指示する。システム部門に依頼して、新しいパスワードを解除してPCを使えるようにすることは拒否する。情報管理に甘い上司というらく印を押されるのを避けるためだ。

「死んで花実が咲くものか」

ドラマは多彩な登場人物によって、働き方改革にさまざまな視点から光を当てているようにみえる。結衣(吉高)が終業時刻もそこそこに、ビールが半額になる「ハッピーアワー」目当てにかけつける、上海飯店の面々もそうである。店主の王丹(江口のりこ)と常連客で文具メーカーの窓際社員・戸塚学(梶原善)、不動産屋で息子に経営を譲って引退状態の篠原友之(酒井敏也)である。

店の常連だった、会社員が好物の回鍋肉を食べたあと、いつものように会社に戻って亡くなった話となる。

篠原 「あの日も会社に帰ったんだよな。前から胸が苦しくなることがあるというので、病院に行くようにいったんだが」

戸塚 「死んで花実が咲くものか。労災が出ればいいんだがなぁ。サラリーマンは替わりはいくらでもいるからな」

王  「替わりはいないよ。みんなうちの大事なお客さんだよ」

脇役としていまや、ドラマに欠くことができない三人の俳優の掛け合いシーンも、ドラマの魅力である。

吉高、向井、中丸がからむ恋模様の行方も

プロジェクトを抱えていた三谷は、追い詰められて無断欠勤する。自宅を見舞った結衣は、三谷にこういう。

「休んでも自分の居所はなくなりませんよ。死んで花実が咲くものか、ですよ」

結衣の職場に副部長として、「元カレ」の種田晃太郎(向井理)が異動してくる。現在のパートナーである、諏訪巧(中丸雄一)と三人がからむ恋模様の行方も、ドラマを進めていく大きな要素だろう。

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