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焦点:原酒不足に悩むサントリー、新ブレンドウイスキーの勝算


Ritsuko Ando and Martinne Geller

[東京/ロンドン 16日 ロイター] - ウイスキーの原酒不足に悩まされているサントリーホールディングスは、世界から集めた原酒をブレンドした製品をプレミアムウイスキーとして売り出した。愛好家の人気が熟成を重ねたシングルモルトに集中する中、若いブレンドウイスキーの評価も高めようという狙いがある。

サントリーは16日、「5大ウイスキー」と呼ばれるスコットランド、米国、アイルランド、日本、カナダ産の原酒をすべてブレンドした異例の新製品「碧Ao」を、熟成年数の表記がないノンエイジ(NAS)の「ワールドウイスキー」として発売した。

価格は1本5000円。ウイスキーメーカーが5大ウイスキーをブレンドした製品を作った例はほとんどない。2014年に約1兆6400億円で米蒸留酒大手ビームを買収し、世界に製造拠点を構えることになったサントリーならではのブレンドといえる。

世界のウイスキーメーカー、その中でも特に日本メーカーは近年、ウイスキー需要の高まりで在庫がひっ迫し、一部の長期熟成ウイスキーの販売停止を余儀なくされている。

サントリーは昨年、人気の「響17年」の販売を休止した。東京を舞台にした2003年の映画「ロスト・イン・トランスレーション」の中で、主人公のハリウッド俳優役のビル・マーレイがテレビコマーシャルで宣伝していたのがこの「響17年」だ。数年前は1万円程度で買うことができたが、現在ネットでは約4万円で取引されている。

碧の販売は国内に限定され、出荷量も今年は3万ケースとやや少なめだが、やはり高級原酒不足に悩まされている世界のライバルから大きな注目を集めることになるだろう。世界のウイスキー市場は60億ドル(約6700億円)規模とされる。

ウオッカやジンなど他のハードリカーと異なり、ウイスキーはたるで3年から50年かけて熟成させる必要があるため、メーカーは数十年後の需要を予測しながら生産しなければならない。そこで、原酒の量をより効率的にコントロールする手段として注目を集めているのが「年」表示のないノンエイジのウイスキーだ。

エドリントン社のザ・マッカランや、仏飲料大手ペルノ・リカール<PERP.PA>のザ・グレンリベット、そして酒造大手ディアジオ<DGE.L>のタリスカーなどの世界的酒造メーカーが近年、ノンエイジのウイスキーを次々と発売している。

ぺルノーによると、グレンリベットのノンエイジである「ファウンダーズリザーブ」は新しい世代のウイスキー愛好家の間で大きな人気を博し、発売から2年後の2017年には世界のシングルモルトのスコッチ市場で6位に入った。当時、「グレンリベット12年」が一時的に不足していた。

「それ以来、われわれはこの種のウイスキーが時代に左右されず、長期的に供給を確保できるよう全力をあげてきた」と、ぺルノーウイスキー事業部のモルツ担当マーケティングディレクターのミリアム・エソラザ氏は話す。その後、グレンリベット12年は英国など一部市場で販売が再開され、今後拡大する方針だという。

ほとんどのノンエイジウイスキーは、長期熟成のものに比べて低めの価格に設定されている。これは、熟成した古いウイスキーの方が良い、という考え方を浸透させた業界の成功の証しでもある。

「長期の熟成年数を表示したものに高い値段が付くことは不思議ではない。だがより若いノンエイジの価値を高め、利益率を上げるにはどうしたらいいのか」と、バーボン・カントリー・リーダー誌の発行者、チャック・カウダリー氏は問いかける。

「より大きな原酒の在庫から高価値の製品を作り、成功できたなら、それは一流のプロジェクト以上のものだ。それは間違いない」

<価格設定の問題>

一方で、ウイスキー専門家は、「ワールドウイスキー」が高級市場で成長できるか予見するのは難しいと話す。

碧の価格は、ノンエイジのシングルグレーンウイスキー「知多」や、「ラフロイグ10年」よりも高い。これらは両方ともサントリーが所有し、ネットで3400円程度で販売されている。

また、ライバルであるニッカが出している、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたノンエイジウイスキー「フロム・ザ・バレル」のほぼ倍の価格だ。

とはいえ、碧の価格は例えば6万3000円する「イチローズ・モルト・アンド・グレーン・マデュロ」と比べて驚くものではないと話す専門家もいる。「マデュロ」は、5大ウイスキーをブレンドした数少ない製品の1つだが、碧よりも熟成年数が長い原酒を使い、フレンチオークたるで熟成されている。

1899年にワインの製造・販売でスタートしたサントリーは、今回の碧の発売について、原酒不足が直接の動機ではなく、提供するウイスキーの幅を広げるのが狙いだとしている。同ホールディングスは非上場だが、傘下のサントリー食品インターナショナル<2587.T>は上場している。

響17年に加え、サントリーは昨年「白州12年」の販売も休止した。ライバルでアサヒグループホールディングス<2502.T>傘下のニッカも、熟成したシングルモルトウイスキーの一部販売を休止した。

サントリースピリッツの鳥井憲護ウイスキー事業部長は、増産体制は整いつつあるとしながらも、「今もお客様に供給の制約をお願いしており心苦しい」と話す。

<産地の問題>

碧の登場は、原産地問題への関心の高まりと時期が重なっている。日本の緩い規制では、輸入原酒を日本国内でブレンドしたりボトル詰めしたりすれば、国産として販売できるのだ。

サントリーは、碧を「ワールドウイスキー」として売ることにより、世界にまたがる自社拠点とブレンディング技術を誇示しつつ、透明性を高めることを狙っている。

チーフブレンダーの福與伸二氏は、世界5大ウイスキーをブレンドすることについて、当初は「どんなものになるか見当もつかなかった」という。それぞれの特徴を生かしつつ、調和したブレンドにたどり着くまで、試行錯誤を重ねたという。

カナダのアルバータ蒸留所産、次いでジムビームのクレアモント、ブッカー・ノー両蒸留所産が碧を構成する主な原酒だ。スコットランドのアードモア、グレンギリー両蒸留所、アイルランドのクーリー蒸留所、そして日本の山崎と白州両蒸留所からの原酒も使われている。

バーンスタインの欧州飲料アナリストのトレバー・スターリング氏は、品質の証しとして年数表示やシングルモルトを求めるウイスキー愛好家は必ずいるとした上で、ジョニーウォーカーの「ブルーラベル」や「グリーンラベル」、「ゴールドラベル」など高品質なブレンドは評価されるべきだと言う。

「シングルモルトでなければ飲まないなどと言うスノッブな愛好家もいる。ブレンドウイスキーは、不当に見下されていると思う」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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