- 2019年04月23日 09:15
「朝6時に挨拶儀礼」私立教員の劣悪待遇
2/2■農民一揆の手法「傘連判状」を提出
ストライキの結果、私学教員ユニオンは、団体交渉で次の成果を獲得した。
・早朝の理事長への挨拶儀式の廃止
・非正規教員の来年度の雇用延長
・非正規教員の無期雇用への転換制度の創設
・非正規教員の私学共済への加入
・正規教員の減額されていた賞与の過去二年間分の支払い、今後の賞与の全額支払い
・正規・非正規ともに、不払い残業代の過去二年分の支払い、今後の残業代の全額支払い
これらは、組合結成とストライキ決行から1カ月間で勝ち取った内容としては、非常に大きな成果だといえるだろう。
取り組みの過程で、ネット上で注目を集めたのが、教師たちが提出した「傘連判状(からかされんぱんじょう)」だ。傘連判状とは、江戸時代の農民一揆において用いられた手法であり、誰が首謀者かを分からないように円形で名前を連ねた陳情書のことだ。歴史の教科書で見たことがある人も多いだろう。
この手法を用いて、学校側の報復により特定の個人が攻撃されるのを回避しようとしたのだ。この傘連判状には、職場の3分の2以上の一般教員があつまって署名したという。正規・非正規の「垣根」を超えてこのような取り組みが進められたところにもまた、大きな意義があるといえよう。傘連判状は、正規・非正規の連帯を象徴するものでもあった。
■良好な教育環境の提供は「社会全体」の課題
以上のように、私立学校でストライキが相次いだ背景には、教員の過重労働と非正規化による「教育の質」の低下、そして、それをなんとか改善したいという教師たちの想いがあった。このような想いが伝わり、教師たちの行動には、多くの同業者からの共感の声や世論による後押しが寄せられた。
子供たちに良好な教育環境を提供することは、すべての人に関係する、社会全体の課題だ。それゆえ、先生たちが問題を告発すれば、社会もそれに反応し、支援してくれるのだ。
そして、ひとたび教員のストライキが社会的に注目されるようになると、それに勇気づけられた同様の動きが次々と出てくるだろう。というのも、ここまで述べてきた、教員の労働条件の悪化に伴う「教育の質」に低下は、一部の学校ではなく、多くの学校に広がっている問題だからだ。だからこそ、個別の学校の問題に終わらせず、業界全体の改善を目指すことが求められる。
■安田学園中学校・高等学校にも団体交渉の申し入れ
実際、私学教員ユニオンは、3月8日に、新たに安田学園中学校・高等学校に団体交渉の申し入れを行ったという。ここでも、非正規教員への不当な雇い止めの問題が中心となっている。同学校の問題と団交の経緯については同ユニオンのウェブサイトに詳しい。
同じような問題を抱えている先生はきっとたくさんいるのだろう。
上に紹介した正則学園高校の事例のように、労働組合(ユニオン)では、働き手の想いや要望に基づいて、職場内のさまざまな問題について使用者と交渉することができる。以下に、今回紹介した私学教員ユニオンをはじめ、労働相談窓口を記しておいた。ぜひ、不当な環境に泣き寝入りをするのではなく、一度相談をしてみてほしい。
<無料労働相談窓口>私学教員ユニオン
*私立学校で働く教員で作っている労働組合です。多数の学校に組合員がいます。正規・非正規にかかわらず、一人からの相談にも対応します。
NPO法人POSSE
*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。
総合サポートユニオン
*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。
仙台けやきユニオン
*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。
ブラック企業被害対策弁護団
*「労働側」の専門的弁護士の団体です。
ブラック企業対策仙台弁護団
*仙台圏で活動する「労働側」の専門的弁護士の団体です。
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今野晴貴(こんの・はるき)NPO法人POSSE代表/雇用・労働政策研究者
1983年生まれ。仙台市出身。2006年、若者からの労働相談を受け付けるNPO法人「POSSE」を設立し、以来代表を務める。年間約3000件の労働・生活相談に関わる。また、相談事例から日本の労働問題について調査・研究、政策提言を行っている。著書に『ブラック企業』(文春新書)、『生活保護』(ちくま新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)など多数。発信媒体に雑誌『POSSE』、Yahoo!ニュース 個人オーサ―、共同通信社連載・「現論」など。博士(社会学)。
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(NPO法人POSSE代表 今野 晴貴 画像提供=今野晴貴)
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