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D&Iをめぐる国際女子トーク

米国人、中国人女性と女子会をした。彼女たちは日系企業を含む複数企業で、人事やダイバーシティに取り組んできたベテランである。おばんざいを囲んでトークも弾んだが、やはり話題の中心はダイバーシティであった。最近では、ダイバーシティではなく、D&I(Diversity & Inclusion)と言われることが多くなったそうだ。

1. D&Iとは

D&Iの定義は色々あるが、GEWELという団体の説明がわかりやすい。Diversityとは多様性、つまり人と人との違いをさす。そして、その違いは、人種や男女のような見える違いの他、学歴や文化などの見えない違い、そしてライフスタイルや職業観などの心理的傾向の違いもさす。Inclusionとは「一人ひとり異なる存在として受け入れられ全体を構成する大切な一人としてその違いが活かされること」であり、先の違いを受け入れ尊重することをさす。そうであるならば、D&Iがめざすのは、一人ひとりの自由が担保される社会ということだ。

2. D&Iからみた日本人男性の行動

彼女たちの話を聞いていて興味深かったのは、日本人男性の日常的な行動を細かく観察し、それもD&Iの課題として捉えている点だった。「なぜ、会議の時、日本人ミドルの男性は目をつぶっている? 眠っているの? それとも聞いているの?」「何だか失礼な感じ」と、随分、気になっていたらしい。私も、初めてみた時に不思議に思ったが、いつの間にか慣れてしまっていた。しかし、改めて言われてみると、彼女たちの言うとおりだ。

次に彼女たちが話題にしたのが、外国人スタッフの前で、日本人同士が日本語で話しているということだった。外国人スタッフにとっては、自らが排除されたと感じることが多いようだ。確かに、自分の前で、外国人ボスが知らない言語でペラペラ話し、何も共有されなかったら、疎外感を感じるだろう。

3. D&IをめぐるKPIの落とし穴

D&Iを促進するために、いくつかの制度的な試みが行われているそうだ。そのうちのひとつが、目標管理で、その一環としてKPIが設定されるという。だが、KPIについては注意が必要な気がする。例えば、「外国人スタッフの前では英語を使用する(日本語は話さない)」というKPIを設定したとしたらどうか。

日本人同士の会話であれば、日本語のようがより正確でスムーズであることは自明だ。急いでいる時ならなおさらだろう。それを禁止条項にするというのもおかしな話だ。このKPIが適当でないのは、先の疎外感の問題の本質からずれている点だ。その本質は、外国人スタッフに対して気遣いがなされているかという点にある。日本語で会話した後、その結果を外国人スタッフに共有したり、会話の途中で how about you?と尋ねるような気づかいをすることで、疎外感はかなり解消されるのではないだろうか。逆にこうした配慮がないのなら、いくら英語で会話しても問題は解消されないだろう。

先のようなKPIの問題は、問題の本質からずれていることに留まらない。一部の人から、使用言語の自由を奪っているという事実を見逃してはならない。D&Iは、今後もますます重視されるだろう。だが、表層的に表れていることと本質を見誤れば、D&Iがめざすのとは真逆の、窮屈で排他的な社会環境を生んでしまうように思う。

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