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役者の不祥事で映画の公開中止 憲法違反ではないか?

公開中止は法律的にどうなのか

 芸能人が不祥事を起こしたことによって、撮影済みの映画の公開が中止になったり、作品が回収されるケースが相次いでいる。こういった処置は法律的に適切なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】

 芸能人の不祥事が続いています。解せないのは、罪を犯した芸能人が出演した映画などが公開中止に追いこまれること。このような連帯責任は不合理ですし、やり過ぎだと思います。とくに映画は大勢の人間が製作に関わっているので、彼らの表現の自由を奪う重大な憲法違反になるのではないでしょうか。

【回答】

 映画は著作物の一つで、著作権法の適用があります。著作権法では、映画の「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」を映画の著作者として定めていることから、監督などが著作者となります。

 しかし、映画の著作権は、その著作者が映画製作者に対し、当該映画の著作物の製作に参加することを約束している場合、当該映画製作者に帰属するとされています。この映画製作者とは、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者ですから、多くは資金を出して映画を作らせる映画会社です。

 監督などの著作者は、著作者人格権を有しており、その一つに未公表の著作物を公表する権利があるのですが、映画の製作者に公表を同意したものと推定されます。そして、肝心の映画を上映したり、上映させるために映画の複製物を配給する権利は著作権なので、映画製作者が専有しています。

 結局、公開するかしないかは映画会社が判断でき、社会的影響を考慮して不祥事俳優が出演している映画を上映しないこともあります。その場合でも、監督や出演者などには報酬が支払われ、彼らには経済的な損失は発生しません。

 映画は思想や意見を表現する有力な方法です。それなのに不合理な非公開は表現の自由の観点から好ましくないですが、多くの映画は営利目的で、経営上の判断が優先されます。ただ、映画の興行収入の一部を著作者に分配する約定があれば、合理的根拠がない非公開は違約になる可能性があります。

 また、監督などの著作者が映画の公開を望むときは、自らが映画製作者となり、著作権を取得するか、映画会社との間で監督業務の委託契約を締結する際に、公開を義務付ける特約を付加する必要があります。

【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年5月3・10日号

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