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早期退職しない限り面接が続き…「45歳以上クビ切り」横行中

3000人の「クビ切り」を掲げたNEC

 人手不足が叫ばれるなか、大手企業がいま、「早期希望退職」という名のリストラで、45歳以上の人員整理に走っている。

「『あなたは残っても仕事がない』と言われた。それなりに貢献してきたと思っていたので、ショックで食事が喉を通らなかった」

 NEC社員のAさん(48歳、SE)が胸中を打ち明ける。傷つけられたプライド、将来への不安……。上司の言葉はあまりにも残酷だった。会社人生半ばで突然、退職を迫られるサラリーマンの声が悲痛になるのは、無理もない。

 希望退職とは名ばかりの、退職強要まがいの「面談」が精神的に追い討ちをかける。

「面談者の部長から、『今の部署に残りたいというのであれば、どのように貢献できるのか、示せ』と言われた。面談のたびに貢献策を提案したが、部長からは毎回駄目出しを食らった。結局、何を提案しても無駄な抵抗と感じた」(54歳、NEC経理)

「6回めの面談時に、『面談をやめてください』と何回もお願いしたが、部長は『答え(早期退職の選択)が出ない限り終わらないのよ~』と冷たく言い放った。いつまで面談が続くのかと、絶望感に襲われた」(54歳、NEC技術)

 それにしても、なぜ「45歳」なのか。

「年功序列型賃金で、45歳前後は給料が高い。団塊ジュニア世代でもあり、数が多い。この世代を切れば、コスト削減の効果が大きいのです。

 また、40代以上は『変化に対応しにくい』と考えられている。ミドルを切って、若い社員への新陳代謝を図りたいのです」(人事ジャーナリスト・溝上憲文氏、以下同)

 かつて「社員にやさしい会社」といわれてきた富士通は、今回5000人のリストラを打ち出した。

「まず5000人を配置転換しようとしたんですが、最初からうまくいかないと思っていました。エンジニアや経理などの間接部門が、営業をやってもうまくいきませんよ。2850人が早期退職に応募しましたが、今後、『第二弾』が始まるでしょう」

 意外だったのはカシオ計算機だという。

「典型的な年功序列、終身雇用の会社で、部下のいない中高年社員に『副課長』『課長代理』といった肩書を与えてやるような会社だったんですが、すっかり変わってしまいました。リストラは会社のイメージも損なうんです」

 3000人を募ったNECは、これまで何度もリストラを繰り返してきた。2012年には、1万人の人員削減を実施している。

「リストラは、一時的に出血を止める『対症療法』で、根本的な解決にならない。それよりも、新しい付加価値を生むビジネスを作り出すのが経営者の仕事なのに、延々とリストラをやっている。まず経営者が責任を取るべきです」

 安易なリストラに走る、経営陣への不信の声は、社員からも聞こえてくる。富士通の50代社員は、こう言った。

「リストラ以外に方法はないのか、よく検討するべきだ。結局、人を減らして人件費を削減するだけなら、リストラを繰り返すことになるだろう」

 NECの場合、45~50歳で、月収の34カ月分の「割増退職金」が、通常の退職金に上積みされる。割増退職金をもらえるならと、退職に応じる人も多い。そして後悔する人も。

「今となっては、頑として『退職しない』と言い張ればよかった、と後悔している。なにも悪いことをしていないのにクビ切りというのは、本当に酷い仕打ちだと思う」(40代、元富士通社員)

 この社員の声を経営者たちはどう聞くのだろうか。次のページでは、「45歳以上のリストラ」を実施している大企業8社の状況をリストアップする。

2019年3月末までに2850人が早期退職した富士通

【「45歳以上のリストラ」を実施している8企業】※カッコ内の日付は発表日

●NEC(2018/6/29)/目標:2019年春までに3000人
 希望退職者を募集。対象は、グループ会社で「間接部門」や「ハードウエア領域の特定部門」に在籍している、「45歳以上かつ勤続5年以上」の従業員。
 2018年10月29日から11月9日にかけて募集し、12月28日付で2170人が応募した。続けて2019年3月まで、400人の希望退職を募集していた。これまでにも、2012年に1万人のリストラを実施している。

●エーザイ(2018/10/25)/目標:2019年3月までに100人、2020年、2021年に追加予定
「45歳以上で勤続5年以上の従業員」を対象とする、早期退職を募集。100人程度の応募を見込んでいたが、2018年12月までに約300人の応募があった。
 募集期間は、2018年12月11日~21日で、2019年3月までに退職。今後さらに2020年3月末、2021年3月末に退職する追加の早期退職を想定している。同社は、「新卒採用を2倍に増やし、組織の若返りを目指す」と説明している。

●日本ハム(2018/10/31)/目標:2019年10月15日までに200人
「45歳以上」の社員を対象に、子会社への出向を含む全社員の、約1割にあたる200人を上限に、早期退職者を募集。通常の退職金に加算金を上乗せする、既存の「選択定年制度」を、時限的に拡充する形で実施した。
 募集期間は2019年5月~6月で、退職日は2019年10月15日の予定。40~50代の比率が高い、人員構成の適正化を進めて、収益力を高めるのが目的という。

●アルペン(2019/1/9)/応募:2019年3月20日までに355人
「アルペン」「スポーツデボ」「ゴルフ5」などの、スポーツ用品店を運営。収益性の改善に向けて、希望退職者を募集すると発表。同社としては初。
 対象は、退職日の2019年3月20日時点で、アルペンと子会社・ジャパーナに在籍している「45歳以上64歳未満」の社員。募集数は、連結従業員数約4000人の9%に相当する300人だったが、想定を2割上回る、355人が応募した。

●カシオ計算機(2019/1/31)/応募:2019年3月までに156人
 創業以来初の、早期退職者の募集を発表。カメラ事業からの撤退など、構造改革を進めており、「人材パフォーマンス最大化施策の一環として」募集すると説明している。
 対象は、「国内営業部門」「スタッフ部門」に在籍する「勤続10年以上」の社員のうち、「45歳以上の一般社員」と「50歳以上の管理職」で合計700人。うち200人程度の応募を想定していたが、3月時点で156人が応募した。

●協和発酵キリン(2019/2/5)/応募:2019年3月までに296人
 希望退職者の対象となるのは、「生産本部」に所属する社員を除く、「2019年4月1日時点で45歳以上かつ勤続5年以上」の社員。対象人員は全従業員の4割にあたる約1600人。同社が希望退職者を募集するのは初めてという。
 3月11日から28日まで募集し、296人が応募した。6月30日までの退職を予定している。

●コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(2019/2/14)/目標:2019年4月中までに約700人
「45歳以上の社員」を対象に、希望退職者・約700人を募集する。人手不足による物流費の上昇で、利益の確保が難しいことが理由で、希望退職募集で人件費を約50億円削減できる見込み。
 3月11日~28日に受け付け、退職日は4月30日となる。特別退職加算金を支給するほか、再就職支援サービスを提供する。

●富士通(2019/2/19)/応募:2019年1月末までに2850人
 2018年10月に、2020年度内を目途にグループ全体で、5000人規模の配置転換を実施する方針を打ち出した。2018年12月から、「45歳以上の正社員」と「定年後再雇用従業員」を対象に、希望退職と、グループ内の配置転換を募集。
 配置転換は、人事や総務、経理などの間接部門から、成長分野のITサービス事業に振り向ける。早期希望退職には、2019年1月末までに2850人が応募し、3月末までに会社を去った。

(週刊FLASH 2019年4月30日号)

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