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  • S-MAX
  • 2019年04月21日 11:25

NTTドコモの新プラン、高いと見るか?安いと見るか?ギガホ・ギガライトの発表に伴う報道のあり方と通信料金が持つ価値について考える【コラム】

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■果たして現在のMNOは高いのか

次に少々視点を変えて、根本的な問題である「移動体通信事業者(MNO)サービスは料金が高い」という認識について考えてみたいと思います。何を当たり前なことを、と思われるかもしれませんが、その認識は本当に正しいのでしょうか。

NTTドコモも完全分離プランを発表し、いよいよMNO 3社が横並びに近い価格へと落ち着きました。この動きを批判する流れもありますが、数年前までのように高止まりした料金体系の中であるならともかく、現在およびこれからの料金体系で同じように批判し続けるのは少々的外れかもしれません。

MNO各社は、月額3,000円程度(各種割引込みで月額2,000円程度)から始まる従量制プランと、月額7,000~8,000円程度(各種割引込みで月額5,000~6,000円程度)となる定額制プランを用意していますが、これらの料金は果たして本当に高いのでしょうか。

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その料金を「高い」と感じる理由は……?

例えばNTTドコモのギガライトの場合、割引なしで長期契約の場合は月額2,980円(税別)から利用できます。一方、低価格な通信回線と言えば、仮想移動体通信事業者(MVNO)のサービスが真っ先に挙げられますが、MVNOの低容量プランは各種割引無しで月額1,500円前後が標準的です(音声通話付きプランの場合)。

さらにMVNOでは1,500円前後で3GB程度利用できるのに対し、同容量程度のギガライトプランでは月額3,980円となります。なんだ、やっぱり2倍以上も高いじゃないか、と思われるかもしれませんが、回線品質は段違いです。

MNOの場合、通勤ラッシュタイムやお昼時、夜のゴールデンタイムなどでも通信速度を気にすることは皆無ですが、MVNOではそうはいきません。混雑時に下り速度が1Mbpsを下回るのは当たり前であり、時には0.5Mbps(500kbps)以下になることもしばしばあります。

しかもその0.5MbpsとはMVNO側で意図的に制限をかけているのではなく、通信トラフィックの逼迫による速度低下であるため、示された数字以上に通信環境は劣悪です。

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平日12時台のJR品川駅前。この速度で快適なブラウジングや地図検索が行えるはずもない

MVNOを利用し、混雑時の速度低下を経験したことがある人であれば理解できる話ではありますが、その通信状況は本当に厳しいものです。Twitterを開いても画像はなかなか表示されず、Googleマップを開いても現在地の表示すら数分待たされるほどです。アプリによっては通信途絶によるタイムアウトで通信状況がリセットされ、全く使えないということすら当たり前のようにあります。

この状況にどれだけの人が耐えられるのか、その心配や苛立ちを全く気にせず使える環境に+1,500円~2,500円の価値があるのか、ということです。

お昼時に誰かと待ち合わせたり初めて訪問する企業へ向かう時、GoogleマップやSNSが使えなかったらどうでしょうか。その場で支払えるものなら1,000円を支払ってでも安定した通信環境が欲しいと感じるかもしれません。

現状のMVNOが抱えている最大の問題は、「人々の利用の不便にならない最低ラインの速度をかなり下回る時間帯が日々頻繁にある」という点です。通信環境はどんなに安価であっても不便なく利用できることが第一条件であるべきなのに、不便を我慢(もしくは許容、妥協)することで安価であることに納得する、という本末転倒な状態へ陥っているのです。

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MVNOは、混雑時間帯を避けて利用できる人であれば、間違いなく安くて便利な回線なのだが……

しかも、これらのMVNOを運営する多くの企業が事業単体では赤字です。各社が事業としての採算性を度外視してでも低価格でMVNOを提供している理由は、自社サービスや提携企業のコンテンツへの顧客の導入口としてMVNOを利用したり、自社経済圏への囲い込み策としてMVNOを活用しているからです。

事業単体としては赤字でも良い、というスタンスであるなら、どんな商売であろうと低価格にはできるでしょう。しかし通信設備を維持・管理し、常に最新設備へと更新していかなければいけないMNOは、そのようなスタンスは取れません。少なくとも赤字経営の中で最先端技術を日々研究し、世界トップクラスのインフラを構築・維持し続けることは不可能でしょう。

ましてや現在の通信業界は、次世代通信規格「5G」の導入準備の真っ只中です。世界を見ればすでに米国や韓国で5Gサービスがスタートしており、日本は後発となります。技術的先進性を失ったり追わなくなった時点でテクノロジー企業が凋落の一途を辿ることになるのは、日本の電子機器メーカーの衰退ぶりを見れば一目瞭然ではないでしょうか。

そう考えた時、果たしてMNOの従量制プランで割引込み月額2,000円からという価格や、30GBなどの超大容量で月額5,000円前後という価格は本当に高いのか、ということです。

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通信設備の故障対応や災害対策などを行う拠点であるNTTドコモのネットワークオペレーションセンター。通信設備の保守・管理には毎年数十億~100億円近い経費がかけられているが、それでも「ギリギリの必要最小限」だと関係者は語る

これらに加え、サポート体制の問題もあります。

当然ながらMVNOはサービス体制やサポート体制を必要最小限とすることで低価格を実現していますが、MNOが同等の低価格での提供を行った場合、サポート店舗の削減やサポート体制の縮小は免れません。その時本当に困るのは一般消費者自身です。

現在でさえ街のキャリアショップには人々が殺到し、長蛇の列を作ってスタッフのサポートを待っている状態だと言うのに、これ以上のコストカットが店舗の混雑解消に何かの解決や打開策を生み出すとは到底考えられません。

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MNOユーザーであれば、キャリアショップの混雑は誰でも経験したことがあるだろう

■通信会社を「積極的に選ぶ」時代へ

まだ日本でMVNOが浸透しておらず、MNO 3社が頑なにデータ通信量の上限を7GBに抑えていた時代を思い出してください。当時の皆さんの通信料金は果たしていくらだったでしょうか。それほど古い話ではありません。わずか数年前、現在と同じ4G世代のお話です。

2016年頃からMVNOが流行しはじめ、認知度の向上によってシェアが拡がるにつれ、MNO各社は対抗として「料金は下げずに最大通信容量を増やす」策を打ちました。

しかしそれでも顧客の流出は止まらず、むしろMVNOの価格に慣れ始めた消費者から低価格プランへの要求が強まったことで、様々な割引を駆使すれば低料金で運用できる料金体系を苦肉の策として打ち出してきたのです。

そして今回の総務省による完全分離プランの提言および指導です。もはやまどろっこしい忖度や裏技は一切なし、一部の儲からない顧客を切り捨て、収益を減らしてでも中心顧客を囲い込む、という本気の現れこそが、今回のNTTドコモの新料金プランであったように思われます。同社の言う「総額4,000億円分の還元(減収)」とは、一言でまとめられるほど簡単な数字ではないのです。

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新料金プランは家族契約を主体としたプランであり、個人契約や特殊な契約形態を切り捨てた「決意のプラン」とも考えられる

最後に筆者からの提言として、MNOの料金が高いのか安いのかを判断する前に、ぜひともMVNOやサブブランドキャリアの通信品質を体験していただきたいというのがあります。例えばmineoでは「mineoプチ体験」として、最大2週間無料でmineoの回線を利用できる「mineo無料レンタル」や、買い切り200円のプリペイドSIMを販売しています。

こういったMVNO各社のキャンペーンやサービスを利用し、自分の生活時間の中でMVNOの品質は十分なのか、それとも不満を感じるのかを調べてみることを強くお勧めします。もはや通信会社にこだわる時代ではないのです。少なくとも、通信料金に不満があるのであれば通信会社にこだわっている場合ではないのです。

ワイモバイルのようにMNOでありながらMVNO並みの低価格を実現している通信会社もあります。またUQモバイルのようにMVNOでありながら比較的安定した通信品質を保っている通信会社もあります。現在の日本には、いくらでも料金プランと通信品質の選択肢が揃っています。

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自分の使い方に合っているのか、まずは試してみよう

逆に言えば、消費者が動かないからこそMNOはかつて高い料金と少ない通信容量で胡座をかいてきたのですし、消費者が動き始めたからこそ低価格プランの導入にも踏み切ったのです。

「料金が高い!」と文句を言いつつも毎月しっかりと支払ってくれる顧客に対し、わざわざ利益を削ってまで自発的に価格を下げる企業がどれだけあるでしょうか。仮に自分が商売をしていたとして、そのような経営をするでしょうか。

結局は、消費者が自ら動く以外にないのです。価格メリットを重視するのであれば、まずは動きましょう。契約形態上すぐにMNPなどで移行できずとも、MVNOであれば月額数百円のプランや上記のようなプリペイドSIMを新規で契約することはできます。消費者にできることはたくさんあります。

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動くためには知識も必要だ。情報通信リテラシーを身につける勉強も大切だろう

ちなみに筆者は、今回のプラン発表を受けて数年ぶりにNTTドコモを契約してみようかと検討中です。「みんなでドコモ割」の適用状況次第(家族との相談次第)では月額2,000円程度での運用も可能になるため、通信品質に対して十分に安いとの判断からです。

何事も試してみることが重要です。本当にその価格は妥当なのか、そのサービスは品質として問題がないのか。モバイル系フリーランスライターである以前に、一消費者として体験してみたいと思います。

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時代は変わる。通信料金も変わる。あなたは変われているか



記事執筆:秋吉 健

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