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横浜、名古屋、京都も 統一地方選「無投票選挙」は過疎地特有の現象ではなかった 自治会、PTAのなり手が減少しているのと同根? - 葉上 太郎

 政令指定都市の議員選挙で無投票の選挙区が続出した。しかも横浜、名古屋、京都、広島、福岡といった大都市の中心部で無投票だったのだ。今回の統一地方選の驚くべき結果である。立候補者が少なく無投票となる選挙は、人口の少ない過疎地特有の現象のように言われてきたが、間違っていたのではないか。

【表】無投票だった選挙区リスト

 政令指定都市とは、人口50万人以上の自治体のうち、政令で指定された都市のことだ。日本で「大都市」と言われる市は軒並みこれに当たり、人口約374万人の横浜市から、70万人弱の静岡市まで全国に20ある。

 統一地方選では、このうち19市で道府県議選、17市で市議選があった。ところが、なんと道府県議選は14市40選挙区、市議選は6市7選挙区で無投票になったのだ。

©iStock.com

 ちなみに政令指定都市の市議選は、道府県議選と同じくおおむね行政区単位に設けられた選挙区ごとに行われる。

広島市では20人が無投票で当選

 無投票選挙区のラッシュとなった道府県議選で、最も深刻だったのは広島市だ。全8選挙区のうち6選挙区(中、南、西、安佐南、安芸、佐伯)で無投票だった。定数26のうち、20人が無投票で当選する異常事態だ。

 続いて無投票が多かったのは、5選挙区の京都市(上京、左京、中京、下京、南)だ。

 4選挙区は3市で、横浜市(西、中、金沢、都筑)、浜松市(東、西、浜北、天竜)、名古屋市(千種、南、中村、中川)。

 3選挙区も3市で、札幌市(豊平、南、清田)、さいたま市(南4区=北、南11区=緑、南12区=岩槻)、福岡市(東、博多、西)。

 以下、2選挙区が2市、1選挙区が4市だった。

道府県議選で全選挙区投票が行われたのはたった5市だけ

 逆に道府県議選で全選挙区投票が行われたのは、川崎市、静岡市、堺市、神戸市、北九州市の5市だけだった。

 4年前の前回2015年に無投票だったのは道府県議選で10市24選挙区、市議選は2市2区だ。双方とも激増していたことになる。

 しかも、道府県議選では6市11選挙区が前回から連続して無投票だった。市議選で2回連続はなかった。

 なぜ大都市がこのような状況に陥ったのか。「政令指定都市は道府県並みに権限が委譲されているだけでなく、市の方が身近な課題を取り扱うので、道府県議より市議を希望する人が増えている」と理由づけするメディアや学者は多い。だが、これでは市議選も無投票が増えている現状を説明できない。

 では、無投票選挙区が多かった県の知事はどう見ているのか。

政治対立するような課題が減った

 上田清司・埼玉県知事は「下水道や道路が整備されればされるほど、そのエリアでは投票率が低くなる傾向が統計的に明らかになっています。生活に密着した課題があるところでは、異議申し立てみたいな部分で政治参加率が上がります。また、生活に密着していなくても、開発か環境かという二者択一的な問題が起こると、当然対立候補者が出ます。ややそういうものが少なくなっている時代なのかなと思わざるを得ません」と記者会見で話した。

 湯崎英彦・広島県知事も「論争の起きるようなものが増えれば緊張関係は高まります。しかし、県としては多くの県民から理解・賛同していただけるよう、政策を作るプロセスで意見をうかがっています」などと会見で述べた。

 つまり、インフラ整備が進み、政治対立するような課題が減り、政策は住民の意見を聞きながら進めているから立候補者が減ったというのだ。少し宣伝臭いが、一理はある。

野党が対立候補を立てなくなっている

 だが、無投票区を分析すると別の側面が見えてくる。

 今回無投票になった道府県議選の選挙区も、前回は投票が行われたところが多く、そうした選挙区で計40人が落選した。政党別では無所属が14人、維新が12人、共産党が7人――などだった。これらの候補者が今回も立候補していたら、無投票ではなかったはずだ。

 維新は前回の統一選の直後に「大阪都構想」の是非を問う住民投票で敗退して党勢を失い、今や全国で候補を立てられるような状態にない。

 共産は落選した7人のうち1人が再挑戦して当選を果たしたが、他の6人の選挙区には候補を立てなかった。かつては「無投票を避け、選択肢を示すため」と多くの選挙区に候補を擁立していた共産も、近年は候補を立てる選挙区を絞る傾向がある。この戦術変更が無投票選挙区の増加に影響を及ぼしている。

自治会、PTAのなり手が減少しているのと同根?

 さらに、自治会やPTAで役員のなり手が減少しているのと同根ではないかと、私は思う。個人生活の充実は求めても、地域活動などへの参加は望まない人が増えた。そもそも、都市部の会社員は忙しすぎ、疲れ果てているのも実情だろう。

 結局、新党ブームがなく、共産の支えもなければ、誰かがやってくれるはずだという「お任せ民主主義」の進行が顔をのぞかせる。

 無投票は過疎地特有の現象であるかのように宣伝されてきたが、私達はそう信じ込むことで不都合な現実から目を背けていたのかもしれない。

 過疎地も大都市もなく、全国で進む「無投票」。今回の統一地方選は、私達の内部で進む危機を鏡のように映し出してくれた。

 その意味では、極めて大きな教訓があった。

(編集部注:広島県・湯崎英彦知事の「崎」の字は「大」が「立」です)

(葉上 太郎)

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