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水樹奈々インタビュー 「ライブ会場でみんなとすべてを共有したい」

日本武道館、西武ドームと大規模な会場での公演を重ね、遂に2011年12月、東京ドーム2days公演を実現した水樹奈々。
声優・アーティストとしてトップを走りつづけられるのは、この規模の会場で4時間近くも力強いパフォーマンスができる彼女だからだろう。
彼女のライブへの想いと姿勢からその魅力に迫る。
両日で8万人以上を動員した東京ドーム公演。会場の規模もさることながら、水樹奈々にとっては敬愛する美空ひばりが立った憧れのステージだった。10年以上ライブ活動を続けてきて、ようやくそこに到達したことに、長年応援し続けたファンも喜びをかみしめる。そうした中、大観衆の前に立った彼女は、意外にもリラックスして臨めたと振り返る。

「最高に幸せな時間でした。もっと気構えるかもしれないと思っていたのですが、あんなに自分らしくステージに立てたことはとても不思議でした。最初の下見のときはドームの存在感に圧倒されましたが、一緒に舞台を作るスタッフさんや、家族のように長年一緒にステージを踏んできたバンドメンバーのみんなにパワーをもらい、おもいっきり飛び込んでいけました。ステージに立った瞬間、会場に来てくださった皆さんの声と姿を見た時に、〝自分と同じ気持ちでこの瞬間を待っていてくれたんだ〟と感じてとても嬉しかった。このままどこまでも歌って走っていけると思って完全燃焼した、忘れられない2日間でした」

彼女のステージを知らない人に話すと驚かれるのが、そのボリューム感だ。たった1人で4時間あまりかけて30曲近く歌うのである。歌に対する強い思いと体力がないとできない。「ステージでやりたいことを実現するには、まず自分が成長しないといけないと思いました。激しい振り付けの曲もあるのですが、ダンサーチームの締まった体を見て、筋力トレーニングを始めました。初めてのツアー以降ずっと続けているんですが、私は凝り性なのでやりすぎて筋肉がムキムキになったこともあります(笑)」

トレーニングは体調や自分の体つきを見ながら、その時にあった方法をとり入れ、食生活にも細心の注意を払う。ライブ当日をピークで迎えられるために、アスリート並みの体調管理を行っている。また彼女の最大の魅力である、抜群の歌唱力も日々の努力により作られているという。「リハーサルでダメだったところは、家に持ち帰って何度も聴き直して練習します。

DVDを見直して細かいところまで動きを確認することもあります。とにかくベストなカタチに持っていけるまでコツコツと練習を積み重ねて、〝あとは当日ライブの空間を楽しむだけ〟という状態に整えます。その過程は自分との戦いでもあります」

そんな強いプロ意識の下、ステージに立って発せられる彼女の歌は力強く美しい。ときには激情を露わに激しくホールに響き渡る。その姿に魅せられ、ライブでさらに彼女に強く惹かれるようになったファンは多いようだ。

「頭で意識するというより曲に身を委ねて、その曲の中に込められた思いをまっすぐみんなに伝えたい。その一心から体当たりで歌っています。怪我や事故を避けるために、ライブ中でも冷静さは必要ですが、感情を伝えるのに頭であれこれ考えるより自然にあふれてくるものを大事にしたくて。ライブは直接ファンのみなさんと触れ合える場所。歌っている時は全員とアイコンタクトを取って、歌に込めた自分の思いを伝えたい。それができるのがライブの良さだと思います。1秒たりとも無駄にしたくない、すべて共有したいという思いでステージに立っています」

そんな姿勢に打たれたのはファンだけではない。経験豊かなバンドメンバーも同様だ。彼女の熱意に応えるよう、素晴らしい演奏でライブのクオリティーをさらに高いものにしている。「バンドメンバーも10年間ほぼ変わっていないので、皆さんにも人物像やキャラクターが定着していて。メンバーもファンの皆さんからの声をとても楽しみにしていて、みんなの反応から次のパフォーマンスアイデアを練ってくださったりしています。ステージをみんなと一緒に作ることが楽しくて、最高のチームワークで本番に臨めていると思います。ライブをするたびに、本当にこのメンバーと出会えてよかった!と実感しています」

バンドメンバーの実力は意外なところでもライブに反映されている。「ライブのセットリスト(曲目)を決めるときは、ライブタイトルのテーマに合わせて、皆さんからのリクエストも反映させながらプロデューサーさんと一緒に決めます。毎回歌いたい曲が50~60曲にもなってしまうので、会場ごとに少しずつ変化させていったり。ツアーの時は前日のライブの反応を受けて、曲を変えることもあります。でもそれに対応できるのはこのメンバーだからこそ。本当に感謝しています。差し替えた曲のタイトルを言った瞬間、みんながワァーッと盛り上がってくれると、トライして良かった!と思います」

アニメソングのライブでは定番のサイリューム(蛍光色に光る小さな照明器具。手元で振って応援する)。曲調に合わせて色を変えてみんなで振ることで、会場が一体となって盛り上がる。彼女のステージはスピード感とボリューム感にあふれており、観客からしてみれば、ついていくだけでも大変だ。しかしファンが懸命に〝ついて行こうとする〟生き生きとした姿・反応は、ステージ上のアーティストをさらに高揚させる。

「ライブは生ものなので、当日のその瞬間にならないとわからないことだらけです。だからこそ面白いし緊張もするんですが、そこに身を委ねる勇気が必要だと感じています。最初のころは歌以外の動きやMCも探りさぐりでした。先輩方に話を聞いたり、舞台監督やダンスの先生から細かいアドバイスをもらったりして模索する日々。それが経験を重ねていくうちに少しずつ見えてきて……。頭で考えなくても自然に体が動く瞬間がステージ上で増えてきました。

5年くらい前に、無我夢中で歌っていて、突然泣いてしまったんです。そのときの記憶はあまりないんですけど、無意識のうちに深く歌に入りこむことができたということだと思うんですね。それは、新たな一歩だと思いました」彼女はその模索を続けた。「自分が気持ちごと歌の世界に入り込みながら、一方でミスなくできるような精神状態のバランスをつかむまでに何年もかかりました。それに、会場の皆さんとのキャッチボールは狙ってできることではなく、熱気の中で自然とでき上がっていくものなので、まずはどうやったら自分自身を一番いい状態に持っていけるかを常に考えています」

彼女は歌手として充実した活動をする現在も、声優として演じることを決してやめようとはしない。そこにはどんな理由があるのだろうか?

「私は声優であることが核になっていると思うんです。役柄やお芝居を通じてたくさんの刺激を受け、歌にも大きな影響があります。どちらも大事にしていきたい。平日はアフレコやラジオなどの収録のお仕事があるので、ライブは土日がほとんど。1年で行ける場所は限られてしまうのですが、以前からの夢である全国47都道府県制覇へ向け、精力的に頑張っていきたいと思います。単発公演とツアー、そしてアリーナ会場とホールとでは全然見せ方が違うんです。たとえば客席に降りていって、みんなとふれあいながら歌ったりできるのはホールだからこそ。私はそれぞれが好きで、すべて大事にしていきたいんです。会場がどこであるかよりも、まずみんなと一緒に楽しい空間を作ることに集中しています。これからも声にまつわるさまざまなことを積極的にやっていきたい。まだまだ夢はたくさんあるので、みなさんに楽しんでいただけるものを生みだしていけたらと思っています!」

そして今年の夏のツアーは6月から9月までと過去最長。しかも真夏に行うのは初めてという。被災した東北でも複数箇所で公演する。テーマは〝UNION〟に決めた。

「〝UNION〟は『連合体』や『絆』という意味。さらに結びつきを強くする言葉です。水樹奈々のライブは全員参加型。みんなで1つになれる一体感がライブの素晴らしさや魅力だと思います。それをさらに強化できるような演出や企画や曲構成を考えたいと思っています。真夏のロングツアーとなると体調管理が大事。スタミナを落とさないように今から基礎体力をアップしておかなければと思っています。スピード感のある曲も多くなりそうですし、初めて参加する方にも思い切り飛び込んできてもらえるようなステージにしたいと思っています」

彼女の魅力は 一期一会のライブに 全力で向かう姿

キングレコード 三嶋章夫プロデューサー


プロデューサーから見て水樹さんのライブの魅力とは?
様々なアーティストのステージを経験している彼女のバックバンドのメンバーともよく話すのですが、4時間近いステージであれほどの歌唱を聴かせ、ダンスや衣装替えなど演出面までもやり遂げられる人はめったにいません。そして本当に計算がない人物で、ときに憑依したかのように歌に集中すると歌詞の1番を2回歌うことも(笑)。筋書きのない微笑ましいMCもファンの方々にとっては歌との良いギャップに映るようです。

ライブでのプロデューサーのお仕事は?
毎回コンセプトを決め、他では見られない象徴的なステージを作ります。ストイックに歌に向かう彼女とファンの間に立って和ませて楽しませる演出や仕掛けを考えます。ツアー中だとその時々でのアイデアを持ち越さずに全部注ぎ込んで、皆さんに楽しんでもらうよう心掛けています。

音楽業界全体を見渡すと地方公演の難しさが聞こえる中、水樹さんの公演はどの地方でも大変盛況です。その理由とは?
彼女はリクエストされた曲を1曲でも多く歌おうと、ツアーの最中でもセットリストを入れ替えるので、結果その場所でしか見られない公演になり、色々な会場で見たいお客様が増えたように思います。また大規模なステージを行うようになると、逆に地方のホールの身近な距離感で見たい意識もファンの方々に生まれ、現在はむしろ地方公演のほうがチケット入手が難しいほどです。ライブと共にその土地での観光も楽しんでいらっしゃるという報告も聞きます。

今年はどんな目標を?
ファンの方々全員が入れる場所を用意できればと思いますが、彼女の到達した東京ドームという場所を維持するだけでも大変な努力が必要です。会場の拡大よりも続けられることを目標に置いています。

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