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世代格差の最大の被害者は若年層でも高齢層でもなく、「これから生まれてくる人たちです」- 「賢人論。」第87回亀井善太郎氏(前編)

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2006年から衆議院議員を1期務めた亀井善太郎氏は、祖父が参議院議員、父が衆議院議員で元運輸・農水大臣という、政治家一家のサラブレッドとして育つ。しかし本人は「永田町は水が合わない」と早々に下野し、政策立案を専門に研究するシンクタンクの主席研究員に。政治の表舞台から裏舞台へと移った今、選挙のたびに取り沙汰される「世代間格差」や「シルバー民主主義」の問題をどう見ているのか、率直に語っていただいた。

取材・文/盛田栄一 撮影/公家勇人

今の政治で行われているのは、高齢者優遇というより全世代に向けてのバラマキである

みんなの介護 亀井さんは2019年1月19日に掲載された日本経済新聞のインタビューで、ご自身の衆議院議員時代を振り返りつつ、シルバー民主主義と世代間格差について語っておられます。

その中で、「高齢者が自らの世代だけのために投票するという思い込みは、高齢者を馬鹿にしている」と、「シルバー民主主義」という概念そのものを批判していますね。今、巷間を賑わせている「世代間格差」という問題については、どのようにお考えですか。

亀井 「世代間格差」というと、年金受給で高齢者が得をしている一方、若い世代が損をしている、という風に捉えがちです。しかし、世代間格差で最も損害を被っているのは、実は明日以降に生まれる人たち。つまり、これから生まれてくる人たちです。

なぜなら、わが国の社会保障の大半は国の借金でまかなわれ、これを改める制度改革は、先送りが続いているからです。現在の政治で行われているのは、単なる高齢者優遇ではありません。すべての世代へのバラマキです。こんなことをしていては、未来世代へのツケは大きくなるばかりです。

みんなの介護 亀井さんが衆議院議員時代、超党派で年金制度改革に尽力されたのも、将来世代にツケを回したくなかったからだと伺っています。

亀井 そのとおりです。団塊の世代の人たちが年金受給資格を得る2010年代になる前に、何とか年金制度の抜本改革を実現したかった。年金を一度でも受け取ってしまうと、それは「既得権益」になり、手放すのが難しくなる。だから受給が始まる前に何とか手を打ちたかったのですが、残念ながら力が及びませんでした。

今、平成の時代を振り返ってみると、わが国の政治は結局、難しいことには向き合わずに、重大な決断をするタイミングを逸した30年でした。

政治家には、高齢者がひとつの塊に見えているだけ。シルバー民主主義は政治が作り出した幻影に過ぎない

みんなの介護 亀井さんは別の場所で、「シルバー民主主義は政治が自らつくった幻影である」とも発言されていますね。これはどういう意味なのでしょうか。

亀井 「シルバー世代を優遇すれば得票率が増える」なんて、あくまでも政治家サイドの思い込みだ、という意味です。

政治家から見れば、高齢者は確かにひとつの塊(かたまり)として、まとまって見えるんですよね。選挙区を回っても、実際に接触できる人の多くが高齢者だし、後援会の名簿に名前を記入するときも、若い人たちのようにためらいがない。高齢者は地元の集会にも足を運んでくれます。

だから、この「目に見える」人たちの利害さえ優先すれば、自分に投票してくれるはずだと、つい考えてしまうんですね。

しかし、実際に高齢者の人たちと話してみると、「自分たちの世代さえ良ければいい」なんて考えている人はいません。次世代の負担を増やしてはいけない。問題を先送りしてはならない。そう話せば、わかってくれる高齢者ばかりでした。

みんなの介護 政治家はなぜ、「シルバー世代を優遇すれば票になる」と考えてしまうのでしょうか。

亀井 企業のマーケティングと同じで、目に見えている人たちのほうが扱いやすいんですね。それに比べて、若い人たちは会社や地域などのコミュニティに対する忠誠心が薄いし、名簿にも名前を書きたがらない。価値観も多元で多様です。「マス」として見えにくいバラバラの存在ですから、若い世代は政治家にとって扱いにくい存在なのです。

みんなの介護 とはいえ、安倍政権は子育て世代を対象に、2019年10月から幼児保育・教育の無償化を実施し、高等教育無償化についても検討を始めています。若い世代にも、それなりに手厚く対策しているように見えますが。

亀井 先ほど申し上げたように、問題を先送りしたうえでの、全世代に向けてのバラマキですよね。そうやって、これから生まれてくる人、すなわち意思決定に参加できない人たちに、勝手に借金を負わせ続けているのです。

経済学者の中には、「財政破綻しなければ、特に問題はないんじゃないか」なんて言っている人もいますが、とんでもない話ですね。将来世代は、自分たちが使うお金の何割かを、勝手に借金返済に充てられてしまうのですから。お金の使い方の選択肢は確実に狭まります。

『シルバー民主主義の政治経済学』を書かれた島澤諭先生をはじめ複数の学者さんが、こうした社会保障問題の先送りを「財政的児童虐待」と痛烈に批判していますが、それももっともだと思います。

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